税金

犯罪被害者に対して支払われる市からの「支援金」は税金がかかるのか?

投稿日:2023年11月16日 更新日:

令和5年9月に公表された国税局の文書回答で気になる記事がありました。

それは、宮城県名取市が犯罪被害者等に対する総合的な支援を推進し、犯罪被害者等が受けた被害の早期軽減を図ること等を目的として「名取市犯罪被害者等支援条例」を制定し支援金を支払うことを決めたというものです。

今回は、この支援金に対して税金がかかるかどうかを確認してみます。
(仙台国税局令和5年9月回答より)

 

1.事前照会の内容

宮城県名取市は、犯罪被害者等に対する総合的な支援を推進し、犯罪被害者等が受けた被害の早期軽減を図ること等を目的として、「名取市犯罪被害者等支援条例」(以下「本件条例」といいます。)を制定しました。

本件条例に基づき、犯罪被害者等に対して支払われる支援金には、3種類あり犯罪被害者等がそれぞれの支援金を受領した場合の課税関係について、非課税となるかを仙台国税局に照会したものです。
 

2.支払われた支援金と対象者はだれ

今回対象となった支援金は次の3種類です。

  1. 遺族一時支援金 30万円 犯罪行為により死亡した者の遺族である市民
  2. 傷病一時支援金 10万円 犯罪行為により傷病※の被害を受けた市民
  3. 死体検案費用支援金 上限10万円(死体検案書料を除く死体検案に要した費用)犯罪行為により死亡した者の遺族である市民

 

3.支援金の取り扱い

今回の支援金について所得税は非課税となり、課税されません。

理由としては、「見舞金」として社会通念上相当であると判断されました。

もちろん、課税対象とされる、事業所得等に係る収入金額に代わる性質を有するもの、役務の対価たる性質を有するものおよび必要経費に算入される金額を補填するためのものでないことは明らかです。
 

4.所得税法のへのあてはめ

所得税では、「心身又は資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金及びこれに類するものは、事業所得等に係る収入金額に代わる性質を有するもの、役務の対価たる性質を有するもの及び必要経費に算入される金額を補填するためのものを除き、所得税を課さないこと」(所得税法第9条第1項第18号、所得税法施行令第30条第3号)とされています。

あわせて、災害等の見舞金で、その金額がその受贈者の社会的地位、贈与者との関係等に照らし、社会通念上相当と認められるものについては、所得税法施行令第30条の規定に基づき、課税しないものと取り扱われています(所得税基本通達9-23)。

この点、今回の支援金は、いずれも、犯罪被害者等が受けた被害の早期軽減を図ることを目的として支給するものであり、「見舞金」としての性格を有しており、このような損害が生じたことに伴い地方公共団体がその市民に対して支払う見舞金として社会通念上相当であるということです。
 

まとめ

税務の基準にはしばし「社会通念上」という言葉がでてきます。

一般的に、「社会通念」とは、「社会一般に通用している常識または見解。法の解釈や裁判調停などにおいて、一つの判断基準として用いられる。」などと説明されることが多いようです(デジタル大辞泉)。

今回は、総合的に判断して、社会通念上となったようです。

今回の取り組みは、犯罪被害者等に対する総合的な支援を推進し、犯罪被害者等が受けた被害の早期軽減を図るとともに、市民が安全で安心して暮らすことができる地域社会の実現に寄与することを目的としているため素晴らしいことだと思います。

その反面、このような支援金が支給される犯罪が少しでもなくなる日々が、一日でもはやくくることを望みます。

本記事の執筆者
アタックス税理士法人 税理士 永持祐司

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