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コロナ禍の中での税務調査の動向

投稿日:2020年7月3日 更新日:

新型コロナウイルス感染症の影響で、個人の所得税等の確定申告期限が、本年3月16日から4月16日まで一律に延長されたことは、ご存知の方も多いと思います。

さらに、4月17日以降も延長の取扱い、となっています。(7月3日現在)

令和元年分の申告所得税、贈与税及び個人事業者の消費税の確定申告につきましては、昨今の新型コロナウイルス感染症の拡大状況に鑑み、感染拡大により外出を控えるなど期限内(令和2年4月16日(木)まで)に申告することが困難であった方については、期限を区切らずに、4月17日(金)以降であっても柔軟に確定申告書を受け付けることといたしました。申告書の作成又は来署することが可能になった時点で税務署へ申し出ていただければ、申告期限延長の取扱いをさせていただきます。
国税庁HPより

この申告期限の延長ですが、
これまでにも震災や災害などにより特定の地域で実施されたことはありますが、今回のように全国一律で実施されたのは、初めてのことだと思います。

ところで、申告期限が延長…ということは、その後の税務調査はどうなるのでしょうか?

そこで今回は、税務調査のコロナによる影響を考察してみたいと思います。


 

そもそも税務調査とは?

個人の申告所得税をはじめ、贈与税、相続税、会社においては、法人税や消費税など、納税すべき税金を納税者が「自ら計算して申告する税金」があります。

こういう税金の納め方を、専門用語では「申告納税制度」といいます。

この申告納税制度には、税務調査がつきものです。
なぜなら、納税者の計算が正しいかどうか、税務署が確認する必要があるからです。

ときどきマスコミで、脱税や〇〇税法違反で数億円が追徴されたなどと報道されますが、これらは税務調査により不正な計算が発覚したものです。

なお、巨額、悪質だとマスコミの注目を集めますが、実は、税務調査はどの納税者に対しても行われる可能性のあるものです。
にも関わらず、ほとんどの方になじみが薄いのは、税務調査が納税者全員に対して行われているわけではないからです。

税務署は、提出された申告書の内容を確認し、税務調査の対象とすべき先を選別します。
当然ですが、申告すべき人の申告書が提出されていない場合も税務調査の対象となります。

税務調査の目的は、適正公平な課税の確保です。
過少な申告の是正だけでなく、申告漏れも見逃されません。

 

コロナ禍のなか税務調査は実施されるのか?

さて、この税務調査、今回のコロナ禍で実施されているのでしょうか。
時系列で状況を振り返ってみたいと思います。

まず、従来どうだったかというと、個人の所得税等の確定申告時期は、税理士が税務調査に対応するのが困難なことから、原則、この時期に新規の税務調査は行われていませんでした。

3月上旬
従来の流れから、個人の申告期限が延長されたことに伴い、報道によれば、国税庁は、原則、同期間内は新規の税務調査に着手しない方針を固めていたようです。

5月中旬
地域によって緊急事態宣言が解除される方向になった頃、
基本的には対応は大きく変わらないというものの、「納税者の個々の事情等を十分に考慮した上で」対応するように、と税務調査について国税庁は全国の国税局に連絡したそうです。

ここでいう考慮とは、例えば、納税者から口頭等で明確に同意が得られれば税務調査を実施するということでした。

これは、所得税だけでなく、法人税、消費税、相続税等における税務調査でも同様の対応がとられるとのことでした。

6月初旬
新型コロナウイルス感染症の第二波、第三波を想定し、在宅勤務や時差出勤等を採用し継続されている中、新たな具体的な対応例が明らかになりました。

そもそも税務調査の日程については、一時的な入院、親族の葬儀、業務上やむを得ない事情が生じた場合等には、事前に申し出ることで、その調整が可能となっていました。
今回、在宅勤務を導入している場合も調査日程の調整が認められるとのこと

当然と言えば当然ですが、当面の間は、調査対応のためだけに従業員が出社を求められることは想定されておらず、次回の出社予定を念頭に調整することになるということです。

という具合に、社会の状況の変化に対応した動きとなってきました。
これをまとめると以下のとおりです。

来事務年度(令和2年7月~令和3年6月)における当面の調査方針

  • 納税者の個々の事情等を十分に考慮。
  • 納税者の明確な同意があれば調査を実施。
  • 企業がテレワークを実施している場合、必要に応じて調査官と相談し、担当者の出社日等に合わせてスケジュール調整。調査対応のためだけの出社は求めず。
  • 所得税、法人税、消費税、相続税等で同じ対応

(出典)税務通信3610号 2020年6月22日

 

今後の動向はどう予測されるか?

それでは、今後の動向をどう予測しうるか考えてみます。

国税庁の事務年度は7月から切り替わります。
調査官は転属になる場合には、7/10(金)から新しい部署に配属されます。
この部署で向こう一年、税務調査を担当することになります。

ということは、週明けの7/13(月)から上記の調査方針が実際に運用され始めるということになろうかと思います。
早ければ、その週あたりから、税務調査の事前通知の連絡がくる可能性があるということです

事前通知の連絡は、電話でなされます。
また、税務調査の日程調整にかかるやり取りも電話で行います。

さらに、上記方針では、詳細は不明ですが、日程だけでなく調査場所の環境(ソーシャルディスタンスの確保)なども相談する必要があろうかと思います。

これまでの調査と異なり、調査官も手探りで対応するものと思われます。
 

さいごに…

新型コロナウイルス感染症の拡大により、私たちの生活も大きな影響を受けました。

今回は、多くの方にはなじみの薄い税務調査という行政の活動にスポットライトを当てましたが、税務調査でさえコロナの影響を受け、その対応を優先するものとなっているということです。

単なるうわさや誤った情報に惑わされることなく、いろいろな場面での変わりゆく社会への適切な対応がこれまで以上に求められているように感じます。
 

おまけ☆

ちなみに、マスコミで取り上げられた国の「持続化給付金」や東京都の「感染拡大防止協力金」の申請に必要な書類のひとつに、令和元年分の確定申告書があります。

こちらも、現在の状況を踏まえて、申告が済んでいない場合には、その前の年分(平成30年分)の確定申告書でも構わない、という柔軟な対応がなされています。

※申請の要件や必要書類については、それぞれのHPをご確認ください。
 中小企業庁「持続化給付金HP」
 東京都「感染拡大防止協力金のご案内」

 

本記事の執筆者:
アタックス税理士法人 社員 税理士 入駒 慶吾
1992年法政大学、94年横浜市立大学大学院卒。専門学校講師、税理士事務所勤務を経て、アタックスに参画。税務顧問、税務コンサルティング(再生・再建スキーム、株主対策スキーム、事業承継対策スキーム等)、組織再編実行支援等に従事。

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