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所得控除の基本(4)~寄付金控除、雑損控除とは?

投稿日:2019年12月18日 更新日:

所得控除の基本(3)に続き、
以下の所得控除のうち、

今回は、ふるさと納税で一気に皆さんに普及した「8.寄付金控除」と、近年、増えてきたと感じる災害により損害を受けた場合の「9.雑損控除」のお話です。
それでは、さっそく見ていきましょう。
 

8.寄付金控除

納税者が国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対し寄付をした場合には、基本的には、寄付した金額が2千円を超えた部分から「寄付金控除」を受けることができます

なお、政治活動に関する寄付金、認定NPO法人等に対する寄付金、公益法人等に対する寄付金については、「所得控除(寄付金控除)」に代えて、「税額控除」という方法も選択することができます。

※参考:税額控除とは?
所得税は「(所得-所得控除)×税率=所得税」で計算され、数式のとおり「所得控除」は、税率をかける前の所得から差し引くものですが、「税額控除」は、税率をかけた後に算出される所得税額から差し引くものです。
税額控除の代表的なものとしては住宅ローン控除(正式名:住宅借入金等特別控除)などがあります。

 

寄付金控除の対象となる寄付金とは

さて、寄付金控除(所得控除)でポイントとなるのは、控除の対象となる寄付金の支払い先です。

国や地方公共団体の他、公益法人、独立行政法人、学校法人、社会福祉法人、日本赤十字社、一定の政治活動に関する寄付金等が「寄付金控除」に該当します。

「ふるさと納税」は地方公共団体への寄付金のひとつです。

なお、学校の入学に関して行うものや、寄付をした人に特別の利益が及ぶと認められるもの、政治資金規正法に違反するもの等は除かれます。

寄付金控除に該当する寄付金か否かは、寄付先から発行される証明書に記載されていることが多く、寄付先に確認すれば簡単に教えてもらえます。

詳細は、以下の国税庁のHPをご確認いただければと思います。
それでもわからない場合には、国税庁に電話をして確認しましょう。

(参考)控除が受けられる寄付金の支払い先
国税庁HP No.1150 寄付金控除「2 特定寄附金の範囲」
 

「ふるさと納税」の仕組み


 

寄付金控除のなかで一番利用されているのは、地方公共団体の「ふるさと納税」ではないでしょうか。
豪華すぎる返礼品が一時期ニュースをにぎわせていました。

よくご質問をいただくのが、「ふるさと納税」の仕組みについてです。
返礼品を豪華にしていって自治体はやっていけるのか?どうやって収入を確保しているのか?不思議に思う方が多かったようです。

「ふるさと納税」が始まる前は、皆さんは自分の住んでいる自治体(市区町村)に住民税を納付していました。
この住民税が自治体の収入となっていたわけです。
 

住民税を収める先が変わるだけ

では、「ふるさと納税」をするとどうなるのか?
確定申告等で寄付金控除を申請するとあなたの住民税は減額され、住んでいる自治体の収入は減ります。
つまり、あなたが納付すべき住民税の一部を別の自治体に納付しているのと同じことになるのです。

「ふるさと納税」とは、支払う住民税(厳密には国税の一部も含みます。)の支払い先を自分の自治体以外から選ぶことができるというものです。
時折、誤解されている方がいますが、基本的にトータルの税額は変わりません。

自分の自治体に納付しても返礼品はもらえませんが、他の自治体に納付することで返礼品がもらえ、返礼品の価値分が得になるという仕組みです。

税額は変わらない
 

自治体は返礼品を出してもやっていけるワケ

さて、「ふるさと納税」先に選んでもらえた自治体は、あなたからの寄付金で収入が増えます。
増えた収入以下の返礼品であれば利益となりますね。

自治体から見れば、自分の自治体に、外からたくさんの人が「ふるさと納税」してくれれば収入が増えます。
逆に、自分の自治体の住民が他の自治体に「ふるさと納税」すれば、収入が減ります。

ということは、「自分の自治体の住民が他の自治体にふるさと納税する金額」と「他の自治体の住民からふるさと納税してもらえる金額」のバランスで、収支が変わってきます。

自治体の収支
 

一部の自治体への「ふるさと納税」には注意

そこで、収入をあげようと返礼品を豪華にしてでも、自分の自治体に寄付をしてくれる人を増やそうと競争が激化し、行き過ぎ、特定の自治体に収入が偏り、問題となってしまったわけです。

こうした経緯で、返礼品は寄付額の3割以内で、その地域の特産品等とする規制がかかってしまいました。
そのため、有名な大阪府和泉佐野市をはじめ、規制を守らず、令和元年6月以降の寄付について寄付金控除の対象外とされている自治体も出てきていますので、ご留意ください。
各自治体のHPや問い合わせで確認することができます。
 

9.雑損控除

あまり身近でなく、聞き慣れない控除だと思います。

近年増えてきている災害や盗難等によって資産に損害を受けた場合等に、一定金額の所得控除を受けることができるというものです。

万が一の時のために、概要だけでも知っておいていただければと思います。

災害による資産の損害
 

要件

(要件1) 以下のいずれかの者の資産が損害を受けたこと

  • 納税者
  • 納税者と生計一の配偶者や親族で、その年の総所得金額等が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)の者

(要件2) 生活に通常必要な住宅、家具、衣類などの資産であること

事業用の資産や別荘、書画、骨とう、貴金属などで、一個の金額が30万円を超えるものなどは当てはまりません。

(要件3) 損害の原因が以下のいずれかであること

  • 震災、風水害、冷害、雪害、落雷などの自然現象の異変による災害
  • 火災、火薬類の爆発などの人為による異常な災害
  • 害虫などの生物による異常な災害
  • 盗難
  • 横領

 ※詐欺や恐喝の場合には対象となりませんので注意が必要です。

(参考)雑損控除の控除額は?
国税庁HP No.1110 雑損控除「4 雑損控除の金額」
 
 
今回はここまで。
所得控除はボリュームがありますので、5回に分けてお話しています。下記もどうぞ。
1回目:所得控除の基本(1)~基礎控除、配偶者控除、扶養控除とは?
2回目:所得控除の基本(2)~勤労学生控除、寡婦控除、障害者控除とは?
3回目:所得控除の基本(3)~医療費控除とは?
4回目(このページ):所得控除の基本(4)~寄付金控除、雑損控除とは?
5回目:所得控除の基本(5)~社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除、小規模企業共済等掛金控除とは?
 
 
※本稿は基本的な内容を記載していますので、
 例外的な対応など気になることがある場合は、最寄りの税務署にお問い合わせください。
 

本記事の執筆者:
アタックス税理士法人 コンサルタント 宮田 香菜子
2003年 茨城大学卒。中小企業から上場企業まで幅広い法人の税務顧問業務を担当。また、組織再編や資産税などの特殊税務業務にも携わる。

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