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所得控除の基本(1)~基礎控除、配偶者控除、扶養控除とは?

投稿日:2019年9月12日 更新日:

今回は、知らないと損する「所得控除」のお話をしたいと思います。

会社勤めで年末調整をする方も、確定申告をする方にも関係する大事なお話です。

既に知っているものも多いと思いますが、一つでも知らずに漏れていては「もったいない!」ということで、もう一度、ここで一緒に確認していきましょう。
 


 

所得控除とは?

個人の収入に課される税金である「所得税」は、所得(収入-経費=利益)に税率を乗じて計算されます。
所得控除とは、この所得から控除できる金額のことをいいます。

<所得税の計算式>

(所得-所得控除)× 税率 = 税金

 

所得控除の種類

それでは、具体的に所得控除の種類を見ていきましょう。
所得控除には以下の種類があります。

 

今回は、このうち 1.基礎控除、2.配偶者控除、3.扶養控除について説明します。
次回以降で説明する他の控除にも関わる大事なお話です。

特に、次の2つの概念はポイントになりますので、よく理解していただければと思います。

POINT!
★「配偶者控除」の要件(2)の「生計を一」の概念
★「扶養控除」の要件(1)~(4)を満たす「扶養親族」の概念

 

1.基礎控除

最も基本的な控除として多くの人に適用されるものであり、 合計所得金額に応じて次の控除を受けることができます。

個人の合計所得金額 控除額
2,400万円以下 48万円
2,400万円超2,450万円以下 32万円
2,450万円超2,500万円以下 16万円
2,500万円超 0円

なお、令和元年分以前の控除額は、合計所得金額にかかわらず一律38万円でした。
 

2.配偶者控除

利用されている方がかなり多い控除で、認知度も高い控除と思います。
最近、細かな改正が入っていますので、再度一緒に確認してみましょう。

要件

配偶者控除は、その年の12月31日現況で、次の4要件のすべてを満たす配偶者がいる場合に控除ができます。

(要件1) 配偶者であること

内縁関係の人は該当しません。
 

(要件2) 納税者と生計を一にしていること

お財布が一緒というイメージで、同居していれば生計一です。

別居していても、以下のような場合には生計一です。

  • 勤務、修学、療養等の都合上で別居していても、お盆やお正月等のお休みには一緒に生活している場合
  • 常に生活費、学資金、療養費等の仕送りがされている場合

 

(要件3) 配偶者の年間の合計所得金額が48万円以下であること
(令和元年分以前は38万円以下であること)

パートで働くときによく「103万円の壁」と言われているのに「なぜ48万円?」と思われた方もいらっしゃるでしょう。

これは、サラリーマンには給与所得控除(55万円/令和元年分以前65万円)があるからです。
(給与収入103万-55万=48万円 ←これが所得)
ちなみに、年金収入には公的年金等控除というものがあります。

そこで、要件3がいくらの収入に該当するのかまとめてみました。

(注) 給与所得控除や公的年金等控除は、ここで解説する「所得控除」とは別の概念のため、冒頭の「所得控除の種類」には含まれていません。

「年間の合計所得金額が48万円以下である」とは? ※令和元年分以前も同じ
給与収入のみの方は、右記の収入で該当します 103万円以下
年金収入のみの方は、右記の収入で該当します 65歳未満の人 108万円以下
65歳以上の人 158万円以下
株式等の譲渡がある場合等では、合計所得金額の見方が少し難しいためご留意ください。
※合計所得とは?
国税庁HP No.1170 寡婦控除 2(2)の(注)参照

 

(要件4) 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと、又は、白色申告者の事業専従者でないこと

事業所得等がある場合で、配偶者にお給料を支払い、経費としている人は対象となりません。
 
 

「配偶者控除」の控除金額

さて、上記4要件のすべてを満たす配偶者がいる場合、控除金額は以下となります。

納税者の合計所得金額 控除額
一般の控除対象配偶者 老人控除対象配偶者
900万円以下 38万円 48万円
900万円超950万円以下 26万円 32万円
950万円超1,000万円以下 13万円 16万円

*老人控除対象配偶者とは、上記4要件を満たす控除対象配偶者のうち、70歳以上の人を言います。
*納税者の合計所得が1,000万円超の場合には、配偶者控除は受けられません。
 

配偶者特別控除

配偶者控除が受けられない場合でも、「配偶者特別控除」が受けられる可能性があります。
具体的には以下のとおりです。

配偶者の年間合計所得が48万円超(令和元年分以前は38万円超)で配偶者控除を受けられない場合(上記の要件(3)の所得要件のみ満たせない場合)に、

配偶者の年間合計所得が133万円以下(令和元年分以前は123万円以下、平成29年分以前は76万円未満)であり、かつ、納税者の年間合計所得が1,000万円以下であれば、「配偶者特別控除」が受けられます

こちらも、所得と収入は違いますので、収入だといくらに該当するかを記載しておきます。
 

「配偶者の年間合計所得が133万円以下」とは? ※平成30年分・令和元年分も同じ
給与収入のみの方は、右記の収入で該当します 103万円超~約201万円以下
年金収入のみの方は、右記の収入で該当します 65歳未満の人 108万円超~214万円以下
65歳以上の人 158万円超~243万円以下

 

「納税者の年間合計所得が1,000万円以下」とは?
給与収入のみの方は、右記の収入で該当します 1,195万円以下
(※平成30年分・令和元年分は1,220万円以下)

 

配偶者特別控除の控除金額は1万円~38万円と、配偶者と納税者 それぞれの合計所得金額により異なります
金額の詳細は、国税庁HP「配偶者特別控除」をご確認ください。
 


 
 

3.扶養控除

この控除も利用されている方が多いのではないでしょうか。
扶養親族がアルバイト等で収入を得始めた時や、別居の親族がいる場合には迷うケースも多いと思います。

該当する方が漏れていないか一緒に確認していきましょう。

要件

扶養控除は、その年の12月31日現況で、次の5要件のすべてを満たす扶養親族がいる場合に控除ができます。

(要件1) 以下のいずれかであること

  • 配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内姻族)※
  • 都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)
  • 市町村長から養護を委託された老人

 
※「親族」の範囲は、国税庁HPのNo.1180 扶養控除 Q8を参照ください。
 

(要件2) 納税者と生計を一にしていること

お財布が一緒というイメージで、同居していれば生計一です。

別居していても、以下のような場合には生計一です。

  • 勤務、修学、療養等の都合上で別居していても、お盆やお正月等のお休みには一緒に生活している
  • 常に生活費、学資金、療養費等の仕送りがされている場合

 

(要件3) 年間の合計所得金額が48万円以下であること
(令和元年分以前は38万円以下であること)

「年間の合計所得金額が48万円以下である」とは? ※令和元年分以前も同じ
給与収入のみの方は、右記の収入で該当します 103万円以下
年金収入のみの方は、右記の収入で該当します 65歳未満の人 108万円以下
65歳以上の人 158万円以下
株式等の譲渡がある場合等では、合計所得金額の見方が少し難しいためご留意ください。
※合計所得とは?
国税庁HP No.1170 寡婦控除 2(2)の(注)参照

 

(要件4) 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと、又は、白色申告者の事業専従者でないこと

事業所得等がある場合で、配偶者にお給料を支払い、経費としている人は対象となりません。
 

(要件5) 16歳以上の人

少し前の税制改正で追加されたもので、この要件の認識がまだ一般の方には普及していないように思います。
 
 

「扶養控除」の控除金額

扶養親族の年齢や同居の有無により控除額が異なります

区分 控除額
一般の控除対象扶養親族(16歳以上) 38万円
特定扶養親族(19歳以上23歳未満) 63万円
老人扶養親族(70歳以上) 同居老親等以外の者 48万円
同居老親等 58万円

*同居老親等とは、納税者又は納税者の配偶者の直系尊属(父母・祖父母等)で、納税者又は納税者の配偶者と普段同居している人をいいます。
*同居については、病気の治療のため入院していることにより別居している場合も含むものとして判断して問題ありません。ただし、老人ホーム等に入所している場合には、同居していないものとして判断します。
 
 
今回はここまで。
所得控除はボリュームがありますので、5回に分けてお話しています。下記もどうぞ。
1回目(このページ):所得控除の基本(1)~基礎控除、配偶者控除、扶養控除とは?
2回目:所得控除の基本(2)~勤労学生控除、ひとり親控除・寡婦控除、障害者控除とは?
3回目:所得控除の基本(3)~医療費控除とは?
4回目:所得控除の基本(4)~寄付金控除、雑損控除とは?
5回目:所得控除の基本(5)~社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除、小規模企業共済等掛金控除とは?
 
 
※本稿は基本的な内容を記載していますので、
 例外的な対応など気になることがある場合は、最寄りの税務署にお問い合わせください。
 

本記事の執筆者:
アタックス税理士法人 コンサルタント 宮田 香菜子
2003年 茨城大学卒。中小企業から上場企業まで幅広い法人の税務顧問業務を担当。また、組織再編や資産税などの特殊税務業務にも携わる。

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