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青色申告の特典「青色申告特別控除」とは?

投稿日:2022年2月10日 更新日:

毎年2月16日から3月15日は確定申告の時期です。
前年1月1日から12月31日までの個人の所得を集計して、その税額を税務署に申告し、納税(還付)する作業が確定申告となります。

言葉では簡単ですが、確定申告をしなければならない人、しなくてもよい人の判断から始まり、その制度や仕組みは相当複雑なものになっています。

そこで今回は、ご自身で商売をされている方なら一度は聞いたことのある「青色申告」、「青色申告特別控除」について説明します。

以下の内容は、国税庁のパンフレット「はじめませんか?青色申告(令和3年5月)」(以下「パンフレット」という)に基づき進めていきます。


 

1.青色申告って?

確定申告は、前年1年間の取引を自分自身で集計して申告しなければなりません。

青色申告は、日々の取引を所定の帳簿に正確に記帳し、その記帳に基づいて正しい申告をすることによって税金の面で様々な特典を受けることができる制度となります。

つまり、「しっかりとした正しい記帳と申告を自分でおこないます!」と宣言、実行するかわりに税メリットが得られるというものです。

パンフレットにおいても国税庁自体が「節税効果のある青色申告を是非始めてみませんか?」と推奨しています。
 

2.青色申告を使える人は?

青色申告を使える人は、「事業所得」、「不動産所得」、「山林所得」のある人になります。

所得税には、①利子所得、②配当所得、③不動産所得、④事業所得、⑤給与所得、⑥退職所得、⑦山林所得、⑧譲渡所得、⑨一時所得、⑩雑所得の10種類の所得があります。

そのうち、青色申告の対象となる所得は、自分で小売業、サービス業などの商売(事業)をおこなう「事業所得」、土地やアパートなどの不動産等の貸付けをおこなう「不動産所得」、そして主に山林経営をしている方の「山林所得」の3つの所得に限られます。
 

3.青色申告をするには?

青色申告をするには「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出し、承認を受ける必要があります。

注意すべきことは、その提出期限です。
青色申告をしようとする年の3月15日(その年の1月16日以後、新たに事業を開始したり、不動産の貸付けをおこなった場合は、その事業開始等の日から2カ月以内)となっています。

例えば、今まで青色申告を申請せずに申告(白色申告)している不動産貸付け業の人が、確定申告と一緒に「所得税の青色申告承認申請書」を提出し、承認を受けた場合には、青色申告は次の確定申告から使えることになります。


 

4.税メリットは?

青色申告の主な税メリットには、「青色申告特別控除」、「青色事業専従者給与の必要経費算入」、「純損失の繰越しと繰り戻し」があります。

(1)青色申告特別控除

所得金額から最高65万円を差し引くことができます。

(2)青色事業専従者給与の必要経費算入

配偶者などに支払う給与を必要経費に算入することができます。

(3)純損失の繰越しと繰り戻し

赤字を前年や翌年の所得金額から差し引くことができます。
 

5.青色申告特別控除とは?

上記のうち、今回説明する「青色申告特別控除」は、わかりやすい税メリットになります。

(1)最高55万円の控除

青色申告の承認を受けた不動産所得や事業所得のある人が、
・複式簿記により帳簿を作成し、
・確定申告書に、帳簿に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書を添付し、
・その確定申告書を提出期限までに提出

した場合には、限度額に達するまで最高55万円を不動産所得、事業所得の順に差し引くことができます

(注)ただし、下記の人はこの控除を受けることはできませんのでご注意ください。
・現金主義によることを選択している人。
・事業的規模に至らない不動産貸付け業を営む人。

事業的規模とは、その業務が事業としての規模にあることをいいます。事業としての規模とは、原則として社会通念上事業と称するに至る程度のものかどうかによって実質的に判断します。
なお、建物の貸付けについては次のいずれかに該当すれば事業としておこなわれているものとされます。
(1)貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおおむね10室以上であること。
(2)家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。

(2)e-Taxなら最高65万円の控除

上記(1)の人のうち、e-Taxによる申告(電子申告)または電子帳簿保存をおこなっている人は、55万円に代えて、一定の要件の下で最高65万円を不動産所得、事業所得の順に差し引くことができます

(参考)国税庁HP パンフレット「e-Tax又は電子帳簿保存を行うと65万円の青色申告特別控除が受けられます(令和3年10月)」

(3)上記以外の人にも簡易な帳簿で…

青色申告の承認を受けている上記(1)及び(2)以外の人は、簡易な帳簿を備えることにより、一定の要件の下で最高10万円を不動産所得、事業所得、山林所得の順に差し引くことができます
 

6.青色申告特別控除が使えたらどうなる?

55万円、65万円、10万円の青色申告控除は、収入から経費を差し引いた所得からさらに直接控除することになります。

つまり、その所得の金額(利益)自体が下がることになります。

なお、ざっくり説明すれば、所得税は、この所得の金額をベースにして医療費控除など所得控除等を差し引いた金額に税率を乗じて税額を算定することになりますので、青色申告控除の金額分だけ税額が下がるというわけではありません。
 

7.まとめると

青色申告のポイントをまとめます。

  • 青色申告の承認を受け、一定の水準を満たせば、青色申告特別控除の適用により税額計算のベースとなる所得の金額を下げることができる。
  • 青色申告の承認を受け、簡易な帳簿を備えれば、青色申告特別控除10万円を受けることができる。

(参考文献)
国税庁のパンフレット「はじめませんか?青色申告(令和3年5月)」(2022年2月7日現在)
国税庁HP No.2072 青色申告特別控除

 

本記事の執筆者:
アタックス税理士法人 代表社員 税理士 青木 規朗
中小企業から上場企業まで幅広い法人税務顧問を担当する傍ら、個人資産家や企業オーナー等への資産税業務に従事。特に組織再編を含めた自社株承継対策や相続対策など財産コンサルティングを得意とする。

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