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配当って申告が必要ですか?

投稿日:2022年1月12日 更新日:

株式に投資をすると、投資先の会社から配当をもらうことがありますが、この配当は確定申告が必要でしょうか?

また、非上場会社の従業員持ち株会に参加している人は、上場会社ではない非上場会社から配当を受け取ることもあると思いますが、上場株式と非上場株式で、もらった配当についての取り扱いは異なるのでしょうか?

そこで今回は、配当とその申告について解説します。


 

配当をもらう際に引かれる税金

配当をもらう場合、下記の株式の区分に応じて所得税等が源泉徴収されます。

源泉徴収された所得税等は、原則として、その年分の納付すべき所得税額等を計算する際に差し引きます

株式の区分 所得税及び復興所得税 地方税
①上場株式等(大口株主以外) 15.315% 5%
②非上場株式、大口株主 20.42%

①上場株式等の配当の場合

上場株式等(上場株式、公募投資信託、国債、地方債、公募公社債など)の配当については、15.315パーセント(他に地方税5パーセント)の税率により、所得税および復興特別所得税が源泉徴収されます。

(注1)大口株主等(発行済株式の総数等の3パーセント以上に相当する数または金額の株式等を有する個人)が支払を受ける上場株式等の配当等については、次の②により源泉徴収されます。
(注2)平成25年1月1日から令和19年12月31日までの間に支払を受ける配当等については、所得税とともに復興特別所得税が源泉徴収されます。

②非上場株式(上場株式等以外)の配当の場合

非上場株式の配当については、20.42パーセント(地方税なし)の税率により所得税および復興特別所得税が源泉徴収されます。
 

配当から経費は差し引ける?

ところで、税務では、収入から経費を引いた、いわゆる利益のことを「所得」と言います。
では、配当収入から経費は差し引けるでしょうか?
配当所得の金額は、次のように計算します。

収入金額(源泉徴収税額を差し引く前の金額)
-株式などを取得するための借入金の利子
= 配当所得の金額

式のとおり、配当収入については、株式を取得するための借入金の利子のみが経費として認められています。

ただし、この借入金の利子は、株式など配当所得が生じる元本のその年における保有期間に対応する部分に限られます。

なお、譲渡した株式に係るものや、確定申告をしないこと(後述)を選択した配当に係るものについては、収入金額から差し引くことができる借入金の利子には当たりません。


 

配当所得の申告の方法

「配当所得」は原則として「総合課税」の対象となる所得で、確定申告の対象とされますが、確定申告をしないこと(確定申告不要制度)を選択することができます

また、上場株式等の配当所得については、申告分離課税を選択することもできます。

ただし、申告分離課税の選択は、確定申告する上場株式等の配当所得の「全額」について適用しなければなりませんので、注意が必要です。
 

総合課税

総合課税とは、給与所得や年金からの所得など各種所得の金額を合計して所得税額を計算するというものです。

総合課税の対象とした配当所得については、一定の場合を除き、基本的には配当控除の適用を受けることができます

(参考)配当控除とは? 国税庁HP No.1250 配当所得があるとき(配当控除)
 

確定申告不要制度

配当所得のうち、一定のものについては納税者の判断により確定申告をしなくてもよいこととされています。これを「確定申告不要制度」といいます。

確定申告不要制度の対象となる配当は、主に下表のとおりとなっていますが、この制度を適用するかどうかは、1回に支払を受ける配当の額ごと(源泉徴収選択口座内の配当等については、口座ごと)に選択することができます

上場株式等の配当(大口株主等が受ける場合を除く) 支払を受ける配当の金額にかかわらず、確定申告不要制度の選択が可能
上場株式等以外の配当 一回に支払を受ける配当の金額が、次の式で計算した金額以下である場合には、確定申告不要制度の選択が可能。
 
10万円×配当計算期間の月数(注)÷12
 
(注)配当計算期間が1年を超える場合には、12月として計算します。また、配当計算期間に1月に満たない端数がある場合には、1月として計算します。
(注1)上記の確定申告不要制度には、特定株式投資信託、公募証券投資信託(公社債投資信託を除きます)および特定投資法人の投資口の配当等も含まれます。
(注2)私募公社債等運用投資信託および特定目的信託(私募のものに限ります)の社債的受益権(上場株式等に該当するものを除きます)の収益の分配については、15.315パーセント(他に地方税5パーセント)の税率による源泉徴収だけで納税が完結する源泉分離課税の対象とされています。

なお、確定申告不要制度を選択した配当所得に係る源泉徴収税額は、その年分の所得税額から差し引くことはできません。源泉徴収税額で配当に対する所得税の精算が終わっているためです。
 

上場株式の配当を申告するか否かのポイント

上場株式の場合、選択肢は3つありますので、ポイントをまとめておきます。

上場株式(大口株主以外)
申告不要制度 総合課税 申告分離課税
確定申告 不要 必要 必要
借入利子の控除 可能 可能
配当控除 可能
税金 源泉徴収で納税完結 所得税:所得金額に応じて
住民税:10%
所得税:15.315%
住民税:5%

3つの選択肢の特徴は以下のとおりです。

申告不要制度:源泉徴収で納税が完結しているため、申告の手間が省けます。

総合課税:借入利子の控除、配当控除が使えますが、所得税が所得金額に応じて課税される累進課税であるため、配当以外の所得が大きい場合は源泉徴収以上に課税される可能性があります。

申告分離課税:配当控除は使えませんが、上場株式の譲渡所得と合算して税額計算を行いますので、株式の譲渡損(過年度から繰り越してきた損失を含む)がある場合は、この課税方法が有利です。

上場株式の配当については、毎年、有利な方法を選択できますので、その年の配当以外の所得状況等に応じて、一番有利な方法を選択いただければと思います
 
 

本記事の執筆者:
アタックス税理士法人 税理士 稲木武雄
2000年 金沢大学卒。ベンチャー企業から上場会社まで幅広い会社の税務顧問業務を担当、また、組織再編成実行支援といった特殊税務や相続対策などの資産税についても幅広く対応、総合的な税務コンサルタントとして活躍するプロジェクトマネージャー。

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