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子どもの保育料と税金の関係!~トクする方法徹底解説~

投稿日:2021年6月21日 更新日:

先日、男性の育休取得率の向上を目的として改正育児休業法が成立しました。
今後ますます夫婦共働きという世帯が増えてくるのではないでしょうか。

子持ちの共働き世帯の場合、無くてはならないのが保育園です。
子どもの面倒を朝から夕方まで見てくれ、季節ごとの行事を通して様々な経験をさせてくれる、とても頼りになる存在です。

筆者も今年の4月から息子がお世話になっており、毎日とても助けられています。
ただ、それと同時に毎月の保育料が地味に家計に響いております。

そこで今回は、保育料と税金の関係と、保育料を少しでも抑える方法を解説します。


 

 

1.子どもの保育料の決定方法

保育料は2019年の法改正により、3歳以上は無償化されましたが、現在、0~2歳までは従来通りです。

保育料が世帯収入に応じて変動することはご存じの方も多いと思いますが、厳密にいうと、住民税(※1)のうちの、区市町村民税所得割(※2)の世帯合計額で決定されます

※1 住民税=課税所得金額×10%
※2 区市町村民税所得割:住民税のうち60%分(残り40%は県民(都民)税)

また、保育料の算定表は、住んでいる自治体ごとに異なります。
では、実際の数値を用いて計算してみましょう。
 

2.保育料のシミュレーション

東京23区の中で一番人口の多い世田谷区の世帯を例にとって計算してみます。

(例)
夫:年収500万、社会保険料70万(給与収入のみ)
妻:年収450万、社会保険料63万(同上)
子:1人(1歳)

住民税

前述のとおり、住民税は「課税所得金額×10%」で計算され、区民税所得割はその住民税のうち60%分です。

ここでは、課税所得金額の計算方法などの説明は省きますが、この夫婦の場合、区民税所得割の額は次のようになります。

区民税所得割額
144,300円
124,700円
合計 269,000円

世田谷区保育料

世田谷区の保育料の算定表は次のようになっています。
今回の条件の場合、保育料は月額42,800円となります。

階層 区民税所得割額 保育料(月額)
D9 220,000円~234,999円 35,700円
D10 235,000円~249,999円 38,300円
D11 250,000円~264,999円 40,800円
D12 265,000円~279,999円 42,800円
D13 280,000円~294,999円 45,500円

 

3.保育料を引き下げるには?

上記までの説明において重要なポイントは、

  • 保育料は、住民税のうちの区民税所得割の金額によって決定され
  • また住民税は、課税所得金額の10%で計算される

ということです。
つまり、この「課税所得金額」を少しでも抑えることが出来れば、保育料を引き下げることができる可能性があるということです。

そこで、課税所得金額を引き下げるために利用できる代表的な「所得控除」の制度を3つご説明します。

① ideco(個人型確定拠出年金)
② 生命保険料控除
③ 医療費控除

 

① ideco(個人型確定拠出年金)

毎月、任意の金融商品の積立てを行う制度です。
会社員であれば、最大月額23,000円まで拠出することができます。(年額276,000円)

idecoで拠出した掛金は、全額その年の課税所得金額から差し引くことができます

なお、idecoは積立てた金融商品の運用益は非課税であったり、一度開始したら60歳まで資金を引き出せなかったりと、活用するにあたってのメリット・デメリットもあるため、併せて確認が必要です。

② 生命保険料控除

生命保険料を支払うことでも、課税所得金額を減らすことができます。

生命保険には、一般・介護・個人年金という3つの区分があり、それぞれの区分ごとに所得控除の枠が設けられています

払込金額に対する所得控除額は以下の通りです。

区分 払込保険料 所得控除額
一般・介護・個人年金 12,000円以下 払込保険料全額
12,001円~32,000円以下 (払込保険料×1/2)+6,000円
32,001円~56,000円 (払込保険料×1/4)+14,000円
56,001円以上 一律28,000円

③ 医療費控除

その年(1/1~12/31)にかかった医療費が10万円を超えた場合、その超えた金額分だけ所得控除を受けることができます
 

(参考)

ちなみに、会社員の代表的な節税策でもある、住宅ローン控除、ふるさと納税については、保育料計算上は加味されないため、留意が必要です。

また、住民税は所得税の年末調整・確定申告を行うことで自治体が計算をしてくれるため、特別な手続きは必要ありません。
 

4.所得控除後の保育料シミュレーション

それでは、当初の計算に上記の2つの所得控除を加味して、再度シミュレーションしてみましょう。

(例)
夫:年収500万、社会保険料70万、ideco27.6万生命保険料支払8万
妻:年収450万、社会保険料63万、ideco27.6万生命保険料支払8万
子:1人(1歳)

住民税

区民税所得割額
126,000円
106,200円
合計 232,200円

世田谷区保育料

階層 区民税所得割額 保育料(月額)
D9 220,000円~234,999円 35,700円
D10 235,000円~249,999円 38,300円
D11 250,000円~264,999円 40,800円
D12 265,000円~279,999円 42,800円
D13 280,000円~294,999円 45,500円

これにより、減少する保育料の金額は以下の通りです。

当初(D12) 引下げ後(D9) 差額
月額 42,800円 35,700円 7,100円
年額 513,600円 428,400 85,200円

上記の通り、当初のシミュレーションと比べて階層が3段階下がり、年額で85,200円減少することになります。

このように制度をうまく活用することで、副次的に上記のような恩恵が受けられる場合があります。

なお、自治体によって階層設定が異なるため、必要に応じて、お住まいの自治体のホームぺージをご覧になられるとよろしいかもしれません。
 

5.可処分所得のシミュレーション

それでは最後に、上記の条件において、所得税・住民税も含めた可処分所得の増減を計算してみましょう。

保育料引き下げ

No. 項目 合計
1 年収 5,000,000円 4,500,000円 9,500,000円
2 社会保険料 700,000円 630,000円 1,330,000円
3 所得税 143,400円 109,700円 253,100円
4 住民税 245,500円 212,500円 458,000円
5 保育料 256,800円 256,800円 513,600円
6 可処分所得(1-(2~5)) 3,654,300円 3,291,000円 6,945,300円

保育料引き下げ

No. 項目 合計
1 年収 5,000,000円 4,500,000円 9,500,000円
2 社会保険料 700,000円 630,000円 1,330,000円
3 ideco掛金 276,000円 276,000円 552,000円
4 生命保険料 80,000円 80,000円 160,000円
5 所得税 111,100円 88,500円 199,600円
6 住民税 215,000円 182,000円 397,000円
7 保育料 214,200円 214,200円 428,400円
8 可処分所得(1-(2~7)) 3,403,700円 3,029,300円 6,433,000円

上記計算の通り、ideco・生命保険料の支払いで支出は712,000円(552,000円+160,000円)増加していますが、所得税・住民税・保育料の減少によって可処分所得は、6,945,300円と6,433,000円を比較して、512,300円の減少にとどまっています。

ideco・生命保険(貯蓄型)については将来的に積立額の受取りが期待できるため、将来の備えをしながら、制度の優遇を享受することができ、トータルでおトクと言えます。
使える制度は賢く活用していきたいものですね。
 

本記事の執筆者
執筆:アタックス税理士法人 税理士 永井 良輔 
監修:アタックス税理士法人 税理士 入駒 慶吾

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