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個人の所得税を少しでも抑える対策とは?~損益通算を活用してみよう編~

投稿日:2019年2月22日 更新日:

所得税の対策は可能なのか?

企業においては、保険加入や決算賞与・退職金の拠出等々、節税のための対策といったようなことがよくいわれます。

そのような対策が可能な理由は、法人はすべての費用・収益を合算し課税所得を計算することができるためです。

一方、個人では、損益通算(一定期間内の利益と損失を合算すること)できる所得の種類に制限があり、また翌年以降に繰り越せる損失も限られます。

所得は10種類に区分され「損益通算」できる所得は限られている(国税庁HP)

しかも累進課税として所得が高いほど税率が高く、高所得者にとって、所得税対策は極めて重要な課題と考えてよいでしょう。

ところが、近年の所得税に対する税制改正の動きを見ていくと、根本的な所得税対策は、そもそも出来なくなってきているのが現実です。
 

まずは所得構造を理解しましょう!

そこで、難しい所得税のことを少しでも理解して、対策を検討してみましょう。

今回は「損益通算を活用した対策」を検討してみます。
損益通算を活用した対策としては、

  • 総合課税を活用する形での損益通算(各所得を超えた損益通算)
  • 各所得内での損益通算

この2パターンが考えられます。

※「総合課税」とは、各種の所得を合計して所得税を計算する課税方式です。所得により、「総合課税」で計算されるものと、他の所得とは分離して課税する「分離課税」といわれる方式で計算されるものが法律で決まっています。
 

総合課税(各所得を超えた損益通算)で期待できる効果

「所得」の中でも、不動産所得、事業所得、譲渡所得(但し、総合課税の対象となるもののみ)、山林所得に限って、その赤字分を他の所得から差し引いても良い事になっています。

つまり、「総合課税について対策を検討する」とは、

給与所得や配当所得で「源泉徴収された所得税」を、(1) 不動産所得・事業所得、(2) 譲渡所得(総合課税の対象となるもの) による赤字(マイナス)で「税金を返してもらう」ことが可能か、ということになります。
 

1.不動産所得・事業所得がマイナスとなる可能性

不動産所得・事業所得がマイナスとなるケースを考えてみましょう。

収益目的の不動産を金融機関等から借入を行い取得する場合は、返済のため安定的に収益を生む必要があり、当初から不動産所得がマイナスになることは少ないと考えられます。

ただし、先行投資などにより、早めに費用が計上されることもあります。
そのような費用がないか、積極的に請求書等を収集し、損益通算の可能性を探ることが可能です。

ちなみに海外の不動産では、土地より建物比率が高く、中古市場が安定している等の理由で、減価償却により費用を先行させる損益通算を目的とした物件もあるようです(今後の税制改正にはご注意ください)。

減価償却の視点では、事業用の中古車両の減価償却により、先行的に費用計上させる方法もあります。もちろん、事業用か家事用かの区別が必要で、事業用である必要があります。


 

なお、不動産所得・事業所得に関する交際費がどこまで認められるのかですが、実務的な視点に立ちますと、個人には法人のような上限金額の枠はなく、全額損金処理をすることが可能ですが、その場合には税務調査での対応が前提になります。
つまり、「いつ」、「誰を」、「何の目的」で接待したのか立証できるように、根拠資料を残しておく必要があります。

さらに、一定水準の記帳をしている方には、所得金額の計算などについて有利な取扱いが受けられる青色申告の制度があります。

事業所得などに損失(赤字)がある場合で、損益通算の規定を適用してもなお控除しきれない部分の金額(純損失の金額)が生じたときには、その損失額を翌年以後3年間にわたって繰り越して、各年分の所得金額から控除することができます。

青色申告には他にも青色申告特別控除などの特典がありますので、積極的に活用すべきです。


 

2.(総合課税対象の)譲渡所得がマイナスとなる可能性

平成26年3月31日より以前は、ゴルフ会員権の譲渡損を他の所得と損益通算できましたが、現在はできなくなりました。

現状、譲渡所得のマイナスで損益通算できそうな代表例は、事業用として使用している車両等が譲渡損失となった場合になります。

株式の売却あるいは土地や建物の譲渡による赤字の金額は他の所得との損益通算ができないので(分離課税)、各所得内での損益通算を検討するしかありません。


 

なお、長期譲渡所得(譲渡するまでの保有期間が5年超あった場合の譲渡所得)に該当する場合で居住用財産を譲渡したときには、生じた譲渡損失の金額について、一定の要件を満たす場合に限り

譲渡をした年の事業所得や給与所得など他の所得との損益通算をすることができ、これらの通算を行ってもなお控除しきれない損失の金額については、その譲渡をした年の翌年以後3年間にわたり繰り越して控除することができます。
 

各所得内での損益通算で期待できる効果

一時所得・雑所得

一時所得の金額は50万円を控除し、かつ2分の1にして総合課税に合算しますので、所得計算上有利といえます。

とはいえ、保険の満期、解約など臨時で一時所得が発生すれば大きな税金負担になることはあり得ます。
大きな一時所得が見込まれる場合には、マイナスの一時所得を同年中に当てられないか検討するとよいでしょう。

また、サラリーマンでサイドビジネスを行っている場合は、通常、雑所得になりますが、雑所得がマイナスになることがあれば、雑所得内での損益通算を検討しましょう。
 

譲渡所得

宝石・貴金属・書画骨董などを売却し1個当たりの単価が30万円を超える場合で、譲渡損が生じるようなものがあれば、同時に同種類のものを売却することで同じ譲渡所得内での通算が可能となります。

次に、株式を売却する場合ですが、上場株式は3年間譲渡損を繰り越すことができます。
また、上場株式の配当との通算も可能です。


 

特定口座を活用し、いったん納税が完了している場合でも、特定口座でマイナスが生じていれば、他のプラスの特定口座と合算申告し、損と益の通算を行いましょう。

忘れやすいですが、非上場株式の譲渡損は年を超えて繰り越すことができません。
非上場株式を売却し、多額の利益発生がわかっているのであれば、含み損となっている非上場株式がないか確認し、年内で売却できないか確認しても良いと思います。

なお、不動産の売却も同様で、年内に譲渡益が出るのであれば、含み損のある物件がないか確認し、損失を当てられないか検討しても良いですね。
 

所得税は「暦年」で課税されます!対策は計画的に!

上記のように、利益が出ている場合、年を越してしまえば、手を打てる手段は、ほぼ無いに等しい事になってしまいます。

所得が発生することが年内に見込まれているのであれば、前もって各所得の「損失」をぶつけられないか検討しておく必要があります。

特に損失が切り捨てになることが多い所得税の対策には、損益通算のしくみを理解しておき、ちょっとした気づきで所得税を抑えられる可能性もあることから、注意しておきたいところです。
 
 

本記事の執筆者:
アタックス税理士法人 税理士・CFP 松岡 聡
1998年 三重大学卒。中小企業から上場企業まで幅広い法人顧客を担当。顧客のあらゆる経営課題に対応すべく、資産税や組織再編などの特殊税務に関する支援にも携わる。

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