「営業は現場で覚えるもの」
「研修に出しても売上は変わらない」
経営者や営業責任者からよく聞く声です。
しかし人員不足が常態化した今、営業担当者一人ひとりの力を高めることは、業績を守るための最も確実な投資の一つです。
本記事では、営業教育が必要な理由と、研修が成果につながらない原因を整理し、成果を生む研修のあり方と設計のポイントを考えます。
なぜ今、人材育成が必要なのか
最大の理由は労働人口の減少です。
採用の難易度とコストは年々高まり、「優秀な営業パーソンを外から採る」ことは、特に中小企業にとって容易ではありません。
これからの企業成長は、今いる社員を戦力化し、一人あたりの生産性を高められるかにかかっています。
こうした背景から、人的資本経営の情報開示義務化を機に、人材は「費用」ではなく「投資すべき資本」と捉えられるようになりました。
実際に、企業の教育投資も拡大しています。
厚生労働省「令和7年度 能力開発基本調査」によれば、OFF-JT(職場外研修)に支出した労働者一人あたりの費用は2.0万円と、前回調査の1.5万円から増えています。
今後3年間で正社員の研修費用を「増加させる予定」の企業(34.3%)も、「減少させる予定」の企業(1.7%)を大きく上回っています。
2022年11月に対話型の生成AIが公開されて以降、AIは爆発的に普及しています。
情報収集や資料作成の多くをAIが担えるようになる中、営業部門では、人にしかできない力を育てる必要性が特に高まっています。
顧客の課題を捉えて解決策を示す「提案型の営業」が求められる一方、トップセールスのノウハウが個人の経験や勘にとどまり、担当者ごとの成績のばらつきが大きいままの企業は少なくありません。
ベテランの退職や担当替えのたびにノウハウが失われるリスクを考えれば、営業力を「個人の力」から「組織の力」へ変える営業教育は、経営課題そのものです。
人材育成・教育に取り組む企業が成果を出せていない実態
同調査(令和7年度 能力開発基本調査)によれば、令和6年度にOFF-JTを実施した事業所は72.6%に上ります。
ところが、能力開発や人材育成に何らかの問題があるとする事業所は80.1%で、ここ数年8割前後の高い水準が続いています。
研修は広く行われているのに、多くの企業が手応えを得られていないのです。
調査からは、次の4つの実態が浮かび上がります。第一に、「育てる人と時間がない」ことです。
主な問題点は「指導する人材が不足している」(59.5%)、「人材を育成しても辞めてしまう」(51.6%)、「人材育成を行う時間がない」(45.5%)でした。
研修での学びを現場で実践させ、定着させる担い手がいないのです。
営業現場では、管理職がプレイングマネジャーとして自分の数字を追い、部下の指導に手が回らないのが典型です。
企業が今後実施したい研修のトップが「マネジメント(管理・監督能力を高める内容)」(35.5%)であることも、育成の担い手不足の裏返しといえるでしょう。
第二に、「研修が単発で、量も少ない」ことです。
OFF-JT受講者の年間の延べ受講時間は、10時間未満が約半数を占めます。
企業規模による差も大きく、従業員30〜49人の企業では、正社員へのOFF-JT実施率が53.0%、計画的なOJTの実施率が44.4%にとどまります。
1,000人以上の企業では、それぞれ85.4%、78.4%で、その差は歴然です。
第三に、「育成の計画がない」ことです。
事業内職業能力開発計画を作成していない企業は79.8%、卸売業・小売業では86.3%に上ります。
どんな人材を、いつまでに、どう育てるのかという設計がないまま、研修だけが実施されているのです。
第四に、「満足度は高くても、成果につながりにくい」ことです。
受講したOFF-JTが「役に立った」と答えた労働者は96.0%に達します。
しかし具体的な内容を見ると、「仕事の幅が広がった」は50.1%と半数に上る一方、「現在の仕事の課題が解決できた」は32.9%、「社内での評価が高まった」はわずか3.7%です。
受講者が会社に求めることの上位は、「職務の遂行に必要なスキル・知識等に関する情報提供」(64.3%)、「身に付けることができるスキル・知識等の提示」(42.6%)でした。
受講者自身も、研修と実務とのつながりを求めているのです。
企業側に目を向けると、産業能率大学の調査では、研修効果の測定方法として最も多いのが「受講後アンケート」(65.3%)で、現場の行動や業績の変化まで検証できていないケースが目立ちます。
つまり問題は「研修をしていないこと」ではなく、「研修のやり方と、研修後の仕組み」にあります。
インプット型の研修からアウトプット型の研修にすべき理由
これらの課題を解消する鍵は、「聞いて学ぶ」インプット型の研修から、学んだ内容を「自社に置き換えて考え、その考えを言語化する」アウトプット型の研修へ転換することです。
アウトプット型の研修を推奨する理由は3つあります。
一つ目は、理解のスピードには個人差があるからです。
さまざまな企業で研修や指導を担当してきましたが、一度聞いただけで理解できる人とそうでない人は確実にいます。
インプット型の研修では、講師がカリキュラムに沿って講義を進めるため、同じ時間に同じ内容を受講しても、受講者によって理解度にばらつきが生じてしまいます。
だからこそ、知識のインプットは事前学習として各自のペースで済ませておき、研修当日はアウトプットに時間を充てることが有効です。
受講者が理解度をそろえたうえで研修に臨むことで、学びが深まります。
二つ目は、アウトプットすることで認識の「違い」が分かるからです。
営業研修で大切にしていただきたいのは、組織として「共通認識」を持つことです。「個人の力」を「組織の力」に転換していくには、共通認識が欠かせません。
そして共通認識をつくるには、言語化が欠かせません。
仕事の目的、営業の役割、顧客への働きかけ方など、言語化できないことは、教えることも伝えることもできないからです。
研修中にアウトプットの機会を設ければ、受講者同士で認識や表現の違いを共有でき、その気づきを現場での改善に活かすことができます。
三つ目は、学びを「残せる」からです。
私自身も外部研修をよく受講しますが、グループワークでは、自分の考えを共有し、同じチームのメンバーや講師からフィードバックをもらうというスタイルが多いように感じます。
グループワークやフィードバックから得られる気づきは多いものの、本当に大切なのは、後から振り返ることです。
人は記憶だけに頼っていては、いずれ忘れてしまいます。
ノートに書く、WordやExcel、チャットに入力するなど、学びを「残す」ことで、初めて振り返りができるようになります。
研修での学びや気づき、質問への回答、研修後の行動宣言など、当日の内容を言語化して残しておけば、研修がその場限りで終わらず、実践に活かせるようになります。
研修設計で押さえるべき2つのキーポイント

人事部門や企画部門が実施する研修であれ、営業部門が主導する研修であれ、経営トップの号令で行う研修であれ、研修を実施する企業が必ずすべきことがあります。
それは、研修の「目的」と「ゴール」を定め、受講者だけでなく関係する部署にも共有したうえで研修をスタートすることです。
研修を受けただけで、人や組織が劇的に変わることはありません。
成果を出すには、研修での学びや気づきを現場で実践し、継続することが不可欠です。そのために、次の二つを必ず実施してください。
①受講者が、研修の目的とゴールを理解すること
②上長を含む組織全体が研修の目的とゴールを理解し、現場での実践と指導の進め方を一緒に設計すること
これまでさまざまな業界・規模の企業で研修を担当してきましたが、この二つを確実に実施することで、研修は「活きた研修」となり、真の「人材への投資」になります。
アタックス・セールス・アソシエイツでは、営業現場で成果を出すための指導を行っているコンサルタントが、事前の設計から研修の実施までを一貫して担当します。
日々、企業の営業現場に入り込んでいるコンサルタントだからこそ、受講者の実案件に即した具体的なフィードバックができ、研修後に現場でどう実践・指導するかまで踏み込んで設計できます。
人材教育・営業教育のご相談は、こちらからお気軽にお問い合わせください。
弊社研修のご紹介
筆者紹介

- 株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ 主任コンサルタント 小嶋 武志
- 大手人材サービス会社を経て、アタックスに入社。入社当初、引継顧客がゼロの状態から1年目にして年間目標は160%越えを達成。経営者から営業管理職まで関係を構築し、予材管理を使った営業マネジメント手法の導入・運用支援を軸とし、業界問わず営業組織の変革を支援。また、年間150名以上の新入社員や年間500名以上の管理職・営業に対する階層別の研修も担当している。同社年間表彰にて史上初の三冠を達成。
