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「賃貸不動産」を相続した場合の注意点~「相続税」はかからないけど「所得税」はかかる?

投稿日:2023年8月29日 更新日:

近年、ワンルームマンション等の比較的少額な賃貸不動産に投資をしていた人が亡くなり、その相続人が相続税の相談に来られるケースが増えてきました。

いわゆる投資系のサラリーマン大家の相続は、地主系の大家の相続と異なり、相続税がかからないケースがあります。

今回は投資系のサラリーマン大家の「賃貸不動産」を相続した場合の「相続税」と「所得税」についての留意点をお伝えします。


 

1.「相続税」がかかる人・かからない人

両親や夫が亡くなり、その亡くなった人(被相続人)が所有していた財産を、妻や子が引き継ぐと、財産を引き継いだ人(相続人)は、その財産の評価額に応じて「相続税」が課税されます。

相続人が引き継いだ課税対象の財産の評価額を個々に算出し、その合計が相続税の「基礎控除額」を超える場合は「相続税」が課税されますので、相続税申告をする必要があります。

これに対して、「基礎控除額」以下である場合は、「相続税」が課税されず、相続税申告をする必要はありません。

【基礎控除額】
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の総数)
(例)法定相続人が妻と子供3人 ⇒ 3,000万円+600万円×4=5,400万円

 

2.「相続税」申告不要でも、「所得税」の申告・納税をする必要がある人

ただし、引き継いだ財産に「賃貸不動産」が含まれている場合、「相続税」が課税されなくても、「所得税」の申告・納税をする必要があります

① 被相続人の所得税の申告(準確定申告)

所得税は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得について計算し、その所得金額に対する税額を算出して翌年の 3月15日まで(注)に申告・納税する必要があります。

しかし、年の中途で死亡した人の場合は、相続人が、1月1日から死亡した日までに確定した所得金額および税額を計算して、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に申告・納税をする必要があります。これを準確定申告といいます

なお、相続人が2人以上の場合は、各相続人等が連署により準確定申告書を提出することになります。(ただし、他の相続人等の氏名を付記して各人が別々に提出することもできます。この場合、当該申告書を提出した相続人等は、他の相続人等に申告した内容を通知しなければなりません。)

(注)1月1日から3月15日までの間に死亡した場合は注意!
確定申告をしなければならない人が翌年の1月1日から確定申告期限(原則として翌年3月15日)までの間に確定申告書を提出しないで死亡した場合は注意が必要です。
この場合の準確定申告の期限は、前年分、本年分とも相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に申告・納税をすることになります。

 

② 相続人の所得税の確定申告(相続人が1人の場合)

つぎに、相続人の所得税申告について見ていきましょう。
繰り返しとなりますが、引き継いだ財産に「賃貸不動産」が含まれている場合、その家賃収入については所得税がかかります。

財産を引き継いだ相続人が1人の場合は、被相続人の亡くなった日の翌日から12月31日までの間に生じた所得について計算し、その所得金額に対する税額を算出して翌年の 3月15日までに確定申告・納税をする必要があります。
 

③ 相続人の所得税の確定申告(相続人が2人以上の場合)

相続人が1人の場合は、上記②のようにシンプルなものとなります。
しかし、相続人が2人以上いる場合は、誰がどの財産を引き継ぐのか決める必要があります。
 

(イ)遺言書がある場合

遺言書により財産を引き継いだ相続人が、被相続人の亡くなった日の翌日から12月31日までの間に生じた所得について計算し、その所得金額に対する税額を算出して翌年の 3月15日までに確定申告・納税をする必要があります。
 

(ロ)遺産分割協議書による場合(遺言書がない場合)

過去の最高裁判決の判例に従うと、未分割の期間中に生じた所得は、相続人全員が法定相続分に応じて被相続人の亡くなった日の翌日から遺産分割協議が成立した日の間に生じた所得について計算し、その所得金額に対する税額をそれぞれ算出して翌年の 3月15日までに確定申告・納税をする必要があります。

また、遺産分割協議により財産を引き継いだ相続人は、被相続人の亡くなった日の翌日から遺産分割協議が成立した日の間に生じた所得だけでなく、遺産分割協議が成立した日の翌日から12月31日までの間に生じた所得についても計算し、それら所得金額に対する税額を算出して翌年の 3月15日までに確定申告・納税をする必要があります。
 

3.おわりに

今回は「賃貸不動産」を相続した場合の「相続税」と「所得税」についてお話しました。

今回の事例のように、「〇〇税」はかからなくても「××税」はかかるというケースは、税金の世界では珍しいことではありません。一つの事象に対して、複数の税金がかかるということを理解いただき、皆さんが税金に興味を持ってくだされば幸いです。

本記事の執筆者
執筆:アタックス税理士法人 税理士 土屋 裕志
監修:アタックス税理士法人 税理士 武田 太一

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