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固定資産税のギモン~なぜ必要?税額はどう決められている?

投稿日:2020年6月11日 更新日:

固定資産税はなぜ必要?

毎年4月になると固定資産税の納付書が届きますが、
「なぜ自分で買ったものなのに、税金がかかるのか?」と考えたことはないでしょうか。

調べたところ、ある市町村では、

土地や家などの固定資産は、道路を作るなどの行政サービスにより、利便性の向上、資産価値の向上などの恩恵を受けていると考えられます。そこで、その恩恵を受ける方(所有者)に、資産価値に応じた税負担をお願いしています。

という見解を公表していました。

人口減少が進む中で、社会インフラの維持費用が多額になり地方財政の悪化が懸念されています。SDGsなどが注目され「持続可能なまちづくり」という言葉もよく聞くようになりました。

固定資産税はそうした取り組みにおいてとても重要な役割を果たす税金なので、ぜひとも有効に使っていただきたいものですね。

固定資産税はどう決められている?

ところで、固定資産税は確定申告をして納税するものではなく、市町村(東京23区は都)から「あなたの固定資産税は〇〇円です」というように納付書が送られてきます。

(ちなみに、こうした課税は「賦課課税方式」と言われます。)

では、その固定資産税はどうやって計算されているのでしょう。
実際には、市町村が詳細に状況を確認して決定される複雑なものですが、ざっくりと説明すると以下の流れで計算されています。

  1. 土地は「売買実例価格」、建物は「再建築費」を基に「固定資産税評価額」を算出。
  2. 「固定資産税評価額」を基準に「課税標準額」を算出。
  3. 「課税標準額」に税率(標準税率は1.4%)を乗じて「固定資産税」を算出。
  • 売買実例価格とは
    実際に売買が行われた土地の取引価格を基準にして、その実際に取引があった土地と比べて評価対象土地の価値がいくらになるかを決定する方法です。
  • 再建築費とは
    その建物の資材費、労務費、設計管理費、一般管理費、利潤等をもとに、実際に今同じ建物を建てたらいくらになるか、を想定計算したものです。
  • 課税標準額とは
    建物の場合は通常、固定資産税評価額=課税標準額ですが、土地の場合はいくつかの特例があり、固定資産税評価額>課税標準額となることがあります。


 

なお、固定資産税の納付書の中に明細が入っていますが、そこに「固定資産税評価額」も記載されていて、自分で所有する土地や家屋の評価額が確認できるようになっています。
 
 

固定資産税は適切なの?

このように、固定資産税は評価額を自ら計算するものではなく、決定されるものです。
そのため、自分の固定資産税が適切に算定されているのか、なかなか分からないものです。

そこで、毎年一定期間に限って「縦覧帳簿の縦覧」をすることができるようになっています。

縦覧期間中は自分で所有していない土地や建物であっても、その評価額などを確認することができるため、自分の固定資産税が適切かどうかを比較してみることができます

なお、多くの市町村では毎年4月を縦覧期間としているところが多いと思いますが、実際に確認する際には市町村にその期間を確認してください。
 

家を建てると固定資産税が安くなる?

さて、課税標準額の説明でも少し触れましたが、固定資産税にも税金が軽減される特例があり、その一つに住宅用地に対する軽減措置があります。

これは、小規模住宅用地(住宅用地のうち200㎡までの部分)は課税標準額が1/6に、200㎡を超える部分(床面積の10倍まで)については課税標準額が1/3になる特例です。

ただし、住宅用地を対象にした軽減措置なので更地には適用されず、自宅などを建てて、土地が「住宅用地」となることで、その土地の固定資産税は安くなるのです
(東京23区については、非住宅用地でも減免される制度があります。)


 
 

「アパート建設で相続税対策」にも固定資産税評価額が関係

ここで、プラスαの知識として、相続税と固定資産税評価額の関係にも触れておきましょう。

相続税を抑えるため、よくアパート建設をするのをご存じでしょうか?
実は、これにも「固定資産税評価額」が関わっています。

相続税や贈与税は「相続税評価額」を基準に計算します。
勘違いしやすいのですが、「相続税評価額」と「固定資産税評価額」は同じではありません。

にもかかわらず、なぜ「固定資産税評価額」が関わってくるのでしょうか?
それは、建物の場合、「相続税評価額」は「固定資産税評価額」を計算の基準として使っているからです。

一般的に、

自宅: 相続税評価額=固定資産税評価額
アパートなどの賃貸建物: 相続税評価額=固定資産税評価額×70%

となります。

また、ここでは詳しくは説明しませんが、ほとんどのケースでは、

[アパートなどの賃貸建物]
固定資産税評価額 < アパート建築費
(なかには「固定資産税評価額」がアパート建築費の50%~60%になることも)

となるのが普通です。

仮に1億円でアパートを建築する場合の節税効果をみてみましょう。
なお、ここでは、固定資産税評価額は「アパート建築費1億円×60%」だったと仮定します。

相続税評価額=固定資産税評価額(1億円×60%)×70%=4200万円

1億円で建築したアパートの相続税評価額が4200万円です。
つまり、建物評価だけで見ても相続税評価額は建築費の半分以下となる場合もあるのです。

このように、アパート建設は、建物の「相続税評価額」が「固定資産税評価額」の30%減となるばかりでなく、そもそも「固定資産税評価額」自体が、アパート建築費よりも大幅に下がることによる節税効果が大きいのです。

相続税対策にアパート建設が有効だといわれる理由の一つには、「固定資産税評価額」が大きく影響しているのです。

 

本記事の執筆者:
アタックス税理士法人 社員 税理士 有賀 雄一
名古屋市立大学卒業後、金融機関、個人会計事務所勤務を経て、2013年アタックス税理士法人入社。主に中小企業から中堅企業までの税務顧問を担当、税務コンサルティング業務や組織再編実行支援業務等にも携わる。

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