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住民税の徴収額は毎年6月から変わることをご存じですか?

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皆さんは会社から受け取る給与明細をじっくりご覧になったことはありますか?
筆者もご多分に漏れず手取り額しか見ないのですが、6月だけは確認することにしています。
その理由は住民税にあります。

給与が上がれば累進課税により所得税が多くなることは知っていても、住民税についてはイマイチそのルールがわからない、という方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、住民税について次のような疑問にお答えします。

 

①そもそも住民税の計算方法は?

住民税のお話をする前に、まず所得税の徴収について簡単に説明します。

所得税の徴収

サラリーマンの方は、所得税については年末になると会社に年末調整に関する各種書類を提出されていますね。

会社は、年間給与から、基礎控除・扶養控除・配偶者控除などの「人的控除」や、健康保険・介護保険などの「各種保険控除」を差引いた金額(所得)に、累進税率を掛けて年間の所得税を計算し、毎月支払った所得税との差分を年末調整と称して過不足を調整します。

12月給与の手取り額が通常より多かったりしますが、あれは払いすぎた所得税が戻ってきているだけです。つまり所得税は「その年の税金はその年に」清算することになっています。

住民税の徴収

それに対して、住民税は、所得額に応じて課税される『所得割』と、所得金額に関係なく定額で課税される『均等割』がありますが、ともに「その年の住民税はその年には徴収されない」のです。

徴収される時期については、次項で説明しますので、
まず、以下の「所得割」「均等割」の計算方法を確認ください。

  • 所得割
    人的控除に若干の違いはありますが、基本的に所得税と計算方法は同様です。
    税率は全国ほぼ一定の10%(道府県民税4%、市町村民税6%)です。
  • 均等割
    おおよそ年間5,000円ですが、自治体よっては環境保全のための環境税として300円から1,200円程度上乗せする自治体もあります。

※出典:財務省ホームページ

②住民税はいつから徴収される?

住民税の最も誤解を招く原因は、この「徴収される時期」にあるかもしれません。

所得税は「その年の所得税はその年に清算(確定申告は除く)する」ということで理解しやすいのですが、住民税は「その年の住民税は翌年の6月から翌々年の5月に納税(徴収)する」ことになっています。

つまり、現在天引き(特別徴収といいます)されている住民税は、「前年の所得」にかかる住民税なのです。

例えば新入社員や、退職後で給与がない場合は…

例えば、その年の4月に入社した新入社員がもらう4月分の給与では住民税は0円です(つまり前年の所得がないからですね)。

新卒社員の住民税は「入社2年目の6月から」天引きが始まります。
したがって、2年目に給与が上がらないと手取り額が前年より減るなんてことも起こりえます。

また、退職し給与がなくなっても、前年分の住民税を納付(後述する普通徴収)しなければなりません。
 

③住民税はどこに払う?

住民税は、居住する自治体の運営費用を負担するものです。
その税金を基にその地域の公共サービスが提供されます。

ただ、住所が変わることもありますので、基準日が1月1日と定められていて、基準日にどこに住んでいたかで納税する自治体が決まります。

1月1日の住民票所在地の自治体に、「前年の所得」にかかる住民税を6月から納めるのです。

たとえば、所得年度(1月~12月)の途中に他の県市に引っ越し、翌年1月1日もそこに住んでいたとすると、その1月1日の住所地(引越し後の住所地)の自治体に住民税は納めることになります(図参照)。

④住民税はどうやって払う?

サラリーマンの場合は勤務先が天引きして各地方公共団体への納付を代行していますが、これを「特別徴収」と呼びます。

一方、事業者のように給与所得ではない場合は、6月末迄に一括で支払うかまたは6月、8月、10月、1月に分割して金融機関などで自ら納税することになります。これを「普通徴収」といいます。

なお「普通徴収」は、税務署に申告された確定申告などに基づき、自治体が納税額を決定し、個人宛に納税通知書と納付書を送付します。

前述の退職後無職の方も、前年の所得にかかる住民税は「普通徴収」されますので、納税通知書と納付書が送付されてきます。
 

⑤自治体によって住民税の高い安いがある?

基本的に住民税は全国一律税率なのですが、自治体の財政状態に応じ「所得割」の税率を0.1%から0.5%の増税または減税を実施しています。

均等割」については前述のとおり、環境保全対策や、東日本大震災を教訓として各自治体が防災施策にかかる財源を確保するために平成26年度から令和5年度分までの間に年間1,000円を課税するなど、年間ベースで数千円の差ながら地域差があります。
 

まとめ

このようにサラリーマンの場合、給与明細の住民税の額が毎年6月に変わっていますので、皆さんも把握しておくとよいでしょう。
最後に本記事のまとめを記載しておきます。

  • 「所得割」及び「均等割」で税額が計算される。
  • 「所得割の税率」や「均等割の金額」はほぼ全国共通だが、自治体により若干(年間数千円)差がある。
  • 所得年度(1月~12月)が終了した翌日1月1日時点の住所地が納税自治体。
  • 給与天引きの「特別徴収」の場合、前年所得にかかる分を、翌年6月~翌々年5月に天引きで徴収。
  • 事業者などの「普通徴収」の場合、前年所得にかかる分を、納税通知書に基づき一括または分割して金融機関などで自ら納税。

※自治体の条例によって取り扱いが変わる場合がありますので、疑問がありましたらお住いの市町村にお尋ねください。

 

本記事の執筆者:
アタックス税理士法人 主席コンサルタント 岡田 昌樹
1985年 名古屋商科大卒。専門性の高い税務を噛み砕いて判りやすく指導する事に定評がある。幅広い顧客のサポート経験から最近では特に中小企業が抱える諸問題の相談に軸足をおいて活躍中。

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