近年の税務調査において、国際取引の中でも特に注目度が高まっているのが「グループ内貸付」の取扱いです。
一見シンプルな資金のやり取りですが、利率の設定次第で大きな課税問題に発展するケースが少なくありません。今回は、実務上の注意ポイントを整理します。
なぜグループ内貸付が問題になるのか
海外子会社などグループ会社間の貸付では、「身内だから低利の方がよい」と考えがちです。
しかし税務上は、あくまで「第三者間であればどうか」という視点(独立企業間価格)が求められます。この基準から外れると、税務当局は取引条件を修正して所得を再計算します。つまり、設定金利が低ければ追加で課税を受けるという事になります。
低利貸付は寄附金課税のリスク
代表的な論点が「低利貸付」です。
例えば、本来3%程度が妥当な金利水準であるにもかかわらず1%で貸し付けている場合、その差額は経済的利益の供与とみなされ、原則として「寄附金」として扱われます。この結果、損金算入が制限されるだけでなく、法人税の課税所得が増加することになります。重要なのは、実際に資金の移動がなくても課税される点であり、多くの企業にとって悩みどころとなっています。当然ですが、国によって金利は違っており、(現在低金利である)日本の金利とは、全然違います。必ず現地国の金利を確認するようにしてください。
課税所得への影響は想像以上に大きい
利率差が小さく見えても、貸付残高や期間によっては影響額が大きくなります。
例えば10億円の貸付で利率差が2%あれば、年間で2,000万円の所得増加要因となります。これが複数年にわたれば、累積的な税負担は無視できません。一般的な調査対象年度は、3期間という事から2,000万円×3期=6,000万円の課税所得増加に対して、追徴課税を受けます。調査対象年度が、5期分であれば1億円です。
また、海外側での取扱いとの不一致により、二重課税(相手国では金利差が認められない場合がある)が発生する可能性もあり、単なる国内問題にとどまらない点にも注意が必要です。
契約書の整備がリスク管理の出発点
こうしたリスクへの基本的な対策が「契約書の整備」です。税務調査では、契約書の有無や内容が重視されます。利率、返済条件、担保の有無などが明確に定められていない場合、恣意的な取引と評価されやすくなります。
さらに重要なのは、その利率がどのような根拠で設定されたのかを説明できることです。市場金利や信用スプレッドなどを参考にし、「なぜその利率なのか」を資料で裏付けておくことが求められます。
利率は定期的に見直す必要がある
一度決めた利率を放置しているケースも多く見られますが、これは近年特にリスクが高まっています。金利環境は大きく変化しており、過去の低金利前提のままでは、現在の市場水準と乖離する可能性が高いからです。
一般的な運転資金の貸付であれば、短期貸付となるので、定期的(例えば年1回)に利率の妥当性を検証し、必要に応じて契約変更を行う運用が望まれます。この見直しが妥当であることを示すためにも、プロセス自体を記録として残しておくことが、調査対応上有効となります。利率を上げる場合・下げる場合のどちらも変更時には、上記と同様の確認がされますので、要注意ポイントとなります。
最後に 実務上のチェックポイント
最後に、簡単な確認ポイントを挙げます。
・契約書は整備されているか
・利率の根拠資料は存在するか
・設定時から環境変化がないか
・長期間見直しをしていない貸付がないか
これらを定期的に確認するだけでも、多くのリスクは未然に防ぐことができます。
国際税務というと難解に思われがちですが、要は「第三者と同じ条件か」を意識することが基本です。グループ内だからこそ曖昧になりがちな部分を見直し、早めの対応を進めることが重要です。
執筆者:アタックス税理士法人 主任コンサルタント 角谷 伸司
主に中堅・上場企業の法人顧客を担当し、クライアントの会計・税務問題の解決に深く携わる。特に、税務調査の場面では、課題となる事案に関し見識を生かし、顧客の立場に寄り添った対応が高く評価される。

