中堅企業の新規開拓、スキルアップよりマネジメントを優先すべき3つの理由

営業

新規開拓は事業継続の必須条件

帝国データバンクは、「価格転嫁率(企業がコスト上昇分を販売価格にどの程度反映したかを示す率)」が9月時点で36.6%だったと発表しました。前回6月の調査から7.7ポイント低下しており、企業が負うコストがさらに重くなっています。

私の主な活動拠点である東海4県の企業においても34.5%と全国平均を大きく下回る厳しい結果となり、製造業にかかわる営業の現場でも、日々の商談の多くが足元の価格交渉に費やされる状況が続いています。

価格交渉が進まない最も大きな理由のひとつに、特定の会社との取引に依存していることが挙げられます。急場をしのぐことも重要ですが、この先を見据えた取引先の拡大、新規開拓は事業継続の必須要件と言えるでしょう。

とは言え、これまでも新規開拓の必要性は十分に組織で共有され、営業個々のスキルアップに力を入れてきた企業も多いはず。しかし、これらスキルアップの取り組みが十分期待する効果を上げられていない、という声をよく耳にします。特にこれまで安定して業績を上げてこられた中堅企業ほど、その傾向は強いようです。

営業スキルよりマネジメントを優先すべき3つの理由

今回は、中堅企業の新規開拓において、営業個々のスキルアップよりも組織のマネジメントを優先すべき3つの理由をご紹介します。

理由①:効果が限定的

新規開拓に求められる営業スキル、というと皆さんは何を想像されますか。
多くは、テレアポの取り方や商談の進め方などの対顧客戦術をイメージされると思います。

戦略と言われるものでもターゲットリストの作り方やUSP(ユニーク・セリング・プロポジション、自社の売りや強み)の見せ方など商談の「やり方」をアップデートする内容が主流です。

「やり方」を学ぶことは有意義です。
特に、一商談が大きな意味を持つような特定のPJや、わずかでも取引先が増えれば状況が変わるような状況においては、その時、そのシーンで有効な「やり方」に特化することはあり得ます。

しかし、中堅企業が販路拡大でこれまでの状況を打破する、という場面において、一商談の成否、一営業の成果で、営業個々の「やり方」が大きなインパクトを与えることは、ほぼありません

解決すべき課題に対し、営業個々のスキルアップの影響は、あまりに限定的です。

理由②:実践が営業次第

これらの「やり方」は、学ぶ段階では多くは標準化された素晴らしいメソッドです。

しかし多くの場合、その実践は営業個々に委ねられ、組織で管理されることはありません。

せっかく学んだスキルもその実践が営業個々、個人任せとなっており、企業として求める顧客の開拓に活用されていないことが少なくありません

「必要なことは与えた、後は営業の主体性に任せる」

研修企画担当が上記のような物言いになるのも、ある程度の規模となり、部門毎の役割が明確な中堅以上の企業でよく聞きます。

理由③:部門間連携が欠落

成果につなげるため、商談やテレアポなどの「やり方」だけに意識を向けることも危険です。

生産や調達など非営業部門への調整、段取りが必要とされるような場合、部門間連携の意識が欠落していると、新規顧客のみならず既存顧客の信頼も損なう事態に陥ることも少なくありません。(もちろん、生産や調達を考慮しなくてよいデジタル教材などの無形サービスや、大量在庫を捌くだけ、というような場合は除きます。)

新規開拓に求められる営業スキルの大半が、いかに成果、受注につなげるか、が主命題であるがゆえに、そこにいたる仕様や納期調整に言及されることが殆どありません。

規模はもちろんですが、製造や加工をともなうサービスを扱われるメーカーの皆さんは特に気を付けたいところです。

自社の組織マネジメントは機能しているか?

繰り返しになりますが、営業スキル、様々な「やり方」を学び、受注にいたる基本的な力をつけることは絶対に必要です。しかし、それだけでは期待する効果は生まれません。

  • どのような取引先をいつまでに、どれくらい、どのように開拓するのか。
  • そのために具体的にどのような行動が必要で、それを成すスキルを営業は持ち合わせているのか。

これらを実行、評価する仕組み組織内コミュニケーション、つまり組織マネジメントが確立されていなければ、せっかくの有益な「やり方」も十分に効果を発揮することはないでしょう

刻々と厳しくなる環境を切り抜けるための取引先の拡大。わかりやすく、とっつき易い営業のスキルアップから入りたくなるものです。
しかし、この先を見据えた新規開拓を本腰入れて行う前に、一度立ち止まって自社の組織マネジメントが機能しているのか、確認して取り組みの方向性を定めたいものです。

 
営業力・目標達成

筆者紹介

株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ 取締役副社長 桑原 賢一
1999年 同志社大学卒。大手化粧品メーカーにて、経営指導から現場販売員の指導育成に携わり、延べ100名以上のトップセールスの育成実績をもつ。アタックス参画後は、上場企業の営業戦略構築、小規模企業の営業組織に対しての直接指導、営業職の個別指導等にあたっている。コンサルティング支援における行動変革率は100%を誇る。
桑原賢一の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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