ビジネスモデル(商売の仕組み)の検証~自社は何屋か?

私には、会社のビジネスモデルを分析する際、常に心がけていることがあります。
それは、「自社は何屋か?」と、自社を一言で定義づけした場合どうなるかを考えることです。

自社は何屋か?

例えば、「自社の強み・弱みの分析方法~SWOT分析と環境分析」で紹介したX社の場合で考えてみます。

この会社をそのまま「小学生の学習成長を可能とさせるコンテンツ提供会社」と定義づけてみます。
すると、会社の強み・弱みはどのような教育コンテンツをどんな方法で売っていくか、という限定された範囲で、強み・弱みを分析していく傾向が強くなります。

ところが、この会社を「母親の相談相手業」と再定義したらどうなるでしょう?
毎月定期的に各家庭を訪問し、母親といろいろな会話を交わすことで、両者の信頼関係は構築されていると考えます。

つまり、X社の強みを「コンテンツとか販売力・営業力」ではなく、「母親との信頼関係」とするのです。

X社の営業マンは、毎月、当たり前のごとく、お客の家の敷居をまたぐことができます。
私はある訪問販売の社長からこんな話を聞いたことがあります。
「訪問販売で難しいのは、家の中に入ることです。家の中に入れてもらえれば、それなりに商品を買ってもらえるのですが」と。
X社にとって、母親との信頼関係が、実は非常に重要な経営資源だったのです。
 

「○○業」と再定義することで見えてくるもの

「母親の相談相手業」と再定義することにより、事業範囲の可能性は非常に広がります。母親が商売の対象になるわけですから、販売する商品も教育コンテンツ以外でも可能になります。

このX社は、最終的にはリフォーム会社を買収し、リフォーム事業に参入していきました。 X社の社長は気づいたのです。
自社の持っている重要な経営資源は、「母親との信頼関係」であり、これをうまく活用できるビジネスモデルを考えるべきだと。

リフォームは、今後の成長性が見込めるマーケットであり、さらにリフォームの重要な意思決定者は母親で、自分たちにはこの母親たちとの信頼関係がある。
結果として、新規事業としてリフォーム事業への参入を決めたのでした。

もちろん、いきなりリフォーム会社を買収したのではなく、事業提携などの段階を踏んで、いろいろ準備をした上で参入を実現しました。

この話で重要なのは、X社が自社の経営戦略を決定するに当たって、内部環境的な自社の最も重要な経営資源(自社が競争優位を持っている経営資源)は「母親との信頼関係」であることを突き止め、さらに、それを十分に活用して、外部環境的に成長力が見込まれるリフォーム市場に参入した、という「論理展開」なのです。
 

ビジネスモデル=商売の仕組みの検証

徳島県上勝町にある(株)いろどり(https://www.irodori.co.jp/)をご存知でしょうか?
過疎の村で「葉っぱのビジネス」で成功した会社といえば、ご存じの方も多いでしょう。

このいろどりのビジネスモデルは、お膳の料理を彩るもみじの葉や山ぶどうの葉などの、いわゆる「つま」を採ってきて、それを主に東京や大阪など全国の高級料亭に卸す事業です。

この会社の特徴的なところは、山からつまを採ってくるのが、おじいさんやおばあさんだということです。
比較的軽作業なので高齢者でも十分対応が可能なのです。
さらにそんな高齢者に効率よく働いてもらうために、町の防災無線や電話等を活用して受発注業務を行ったり、高齢者が利用しやすいパソコンのボードを工夫するなどして、今のビジネスモデルを完成させています。

このビジネスモデルでは、売上利益率が100%近くになっているはずです。
なぜかといえば、山からつまを採ってくるだけなので、基本的には仕入原価がかかっていないからです。

このいろどりの横石知二社長から直接お話をうかがう機会がありました。
教えていただいたのはビジネスモデルの検証方法です。

すなわち、自社の商売のやり方が本当に自社の経営資源を活用し、最も効果的なマーケットで事業展開をしているかどうかをチェックする方法です。
非常に興味深い話でしたので、ここで紹介したいと思います。
 

ビジネスモデルを検証する4つの視点

ビジネスモデルを検証するためには、「場面」「価値」「仕組み」「情報」の4つの視点が必要です。

自社の商品(サービス)が顧客に受け入れられるというのは、その商品(サービス)の提供される「場面」と、その提供される時点での「価値」のバランスがとれていなければなりません。

このいろどりのケースでは、一膳数万円もする高級料亭だからこそ色鮮やかなもみじの葉に価値を見出し、お金を払ってくれるわけです。
これを一般庶民である私に、もみじの葉を買いませんかといわれても、そこに価値を見出してお金を払う気には、とうていなれないでしょう。
商売をするためには「場面=価値」の等式が成り立つことが必要条件です。

さらに事業は継続していくことが前提です。
そのためにはどうしてもマーケティング業務や受発注業務などの「仕組み」が必要になります。
いろどりでいえば、防災無線の活用や簡単なパソコンボードの開発などの工夫です。
さらに、これらはすべて「情報」でつながっています。

このように、優れたビジネスモデルでは、場面・価値・仕組み・情報がつながって効果的に事業展開されていることが分かります。
 

中堅・中小企業が戦略を描くには

業績の良い会社は、上記の4つの中の全部、または一部に他社と比較して競争優位を持った自社の経営資源があるはずです。

強み・弱みの分析で重要なのは、自社の競争優位を持っている経営資源は何かをとことん突き詰めることです。
それを行うことによって、自分たちの方向性が見えてきます。

「あるべき姿」を明確にしてから戦略等を考えましょう、という話もよく聞きます。
しかし、中堅・中小企業の場合には、最初に他社に比較して競争優位を持っている自社の経営資源は何かを徹底的に考えることが重要だと私は考えます。

それを踏まえ、自らの夢である「あるべき姿」を検討すべきだと思います。
その方が、大企業に比べ経営資源の乏しい中堅・中小企業の地に足がついた中期経営計画策定の第一歩としては効果的と考えます。

次回は、自社の強み・弱みを客観的に検証するために、数字を使って自社を分析する方法を説明いたします。



次の記事:決算書の見方の基本~中期経営計画には不可欠な知識
前の記事:自社の強み・弱みの分析方法~SWOT分析と環境分析
「経営講座:中期経営計画」の目次はこちら

筆者紹介

アタックスグループ 代表パートナー
株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 代表取締役会長
公認会計士・税理士 林 公一
1987年 横浜市立大学卒。KPMG NewYork、KPMG Corporate Finance株式会社を経て、アタックスに参画。KPMG勤務時代には、年間20社程度の日系米国子会社の監査を担当、また、数多くの事業評価、株式公開業務、M&A業務に携わる。現在は、過去の経験を活かしながら、中堅中小企業のよき相談相手として、事業承継や後継者・幹部社員育成のサポートに注力。
林公一の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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