【国内法のみではなく、租税条約も併せて確認しましょう】 | アタックス税理士法人 国際部

【国内法のみではなく、租税条約も併せて確認しましょう】

2019年6月21日

顧問先から次のような質問がきた場合、どのような指導、回答をしますか。

「社内システムの構築に関する技術支援をインドに本店がある法人I社(日本には支店や営業所等の拠点なし)に委託する予定です。

I社は自社の従業員を使ってインド国内で技術支援を行います。

そして顧問先から「今月、I社に対する報酬の支払い100万円を行うのですが、請求通り支払えばよろしいですか?」と質問きました。

回答として、「I社はインドで役務提供を行い、日本国内で所得を生んでいないため、源泉徴収を行わず請求通り支払えば問題ない」と考えがちですが、

正しい回答ではありません。

実際には国内法及び租税条約の規定に従い、

「日本の国内法で判断すると源泉徴収の必要はありませんが、

日印租税条約では技術上の役務に対する料金は支払者の居住地国において生じたものとすると定めており、

10%の源泉徴収をしなければなりません。

また、10%は租税条約上の軽減税率ですので、報酬支払の前日までに「租税条約に関する届出書」を税務署へ提出しなければなりません。」

と回答するのが適正です。

つまり、海外との取引や支払が発生した場合には、

日本の国内法のみではなく租税条約の規定も確認しなければなりません。

それでは、海外との取引や支払について、顧問先から質問があった場合、どのように確認をすればよいのでしょうか。

確認する点は次の6点です。

①から③は取引に関する事実関係を確認するポイントです。

また④から⑥は取引に関する課税関係を確認するポイントになります。

 ①居住地国の確認

 ②恒久的施設の有無と設置国の確認

 ③所得源泉地国の確認

 ④所得源泉地国の適用税率の確認

 ⑤所得源泉地国の納税方法の確認

 ⑥居住地国における二重課税排除方法の確認

確認を行う手順については、

まずは日本における国内法に基づき6点のポイントを確認します。

次に租税条約に従い、国内法の取扱いと相違点がないかを確認します。

相違点がある点については、租税条約の規定が優先されます。

先ほどの事例でみてみると、次のようになります。

 ①居住地国の確認

  国内法:インド  租税条約:インド

 ②恒久的施設の有無と設置国の確認

  国内法;なし   租税条約:なし

 ③所得源泉地国の確認

  国内法:インド   租税条約:日本

 ④所得源泉地国の納税方法の確認

  国内法:源泉徴収(20.42%)  租税条約:源泉徴収(10%)

 ⑤居住地国における二重課税排除方法の確認

  国内法:課税なし  租税条約:源泉徴収+確定申告

ポイント③において、国内法では「使用地主義」が採用されていますが、租税条約では「債務者主義」が採用されています。

その結果、報酬を支払う側において源泉徴収を行わなければなりません。

また、源泉徴収税率も租税条約により軽減税率が採用されています。

 ※使用地主義・・・役務提供を受ける場所、資産の使用場所等により所得源泉国を判定

  債務者主義・・・使用料等を支払った者の居住地国により所得源泉国を判定

租税条約を確認する場合は、「議定書」や「交換公文」も確認しましょう。

それらにより、租税条約上の規定内容や用語の意義が保管されていたり、租税条約の改正が締結されていたりします。

また、「租税条約に関する届出書」「特典条項に関する付表」も漏れなく提出する指導も行ってください。

もし実際の顧問先の対応について、海外取引の疑問点など出てきましたらアタックス国際部までお気軽にご相談ください。

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