外貨預金の為替差益課税に要注意!~外貨同士の交換でも課税対象に~ | アタックス税理士法人 国際部

外貨預金の為替差益課税に要注意!~外貨同士の交換でも課税対象に~

2026年10月15日

円安が続くなか、外貨預金などの外貨建て資産を保有する方が増えています。日本銀行の統計によると、2026年7月末時点で個人が国内銀行に預けている外貨預金の残高は約6.9兆円となり、前年同月より約7%増えました。

外貨預金の利息や利益に税金がかかる点は円建ての資産と同じです。ただし、課税の方法や申告の手続きが円預金とは異なる場合があります。特に為替差益は、ご自身で確定申告をしなければならないケースが多く、注意が必要です。 2026年6月には、外貨を別の外貨に交換した場合の為替差益にも所得税がかかるとする最高裁の判断が示されました。申告ミスや申告漏れを防ぐためにも、外貨預金の税金について確認しておきましょう。

外貨預金にかかる税金とは?

外貨預金にかかる主な税金は、「利息」に対する課税と「為替差益」に対する課税の2つです。まずは利息への課税について説明します。

国内の外貨預金口座で受け取る利息

  • 源泉分離課税の対象となり、税金は口座に入金される前に差し引かれます
  • 税率は利息の額にかかわらず一律20.315%です(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)
  • 原則として確定申告は不要です

海外の口座で受け取る利息

  • 日本の税金は源泉徴収されないため、原則としてご自身で確定申告をして納税します
  • 総合課税となり、給与など他の所得と合算して税額を計算します
  • 海外ですでに課税されている場合は、一定の要件を満たせば外国税額控除により二重課税を調整できます

為替差益への課税

外貨預金では、預けている間に円安が進むと為替差益が生まれます。この為替差益も課税の対象です。

計算例

  • 1ドル=100円のときに100万円をドルに交換すると、1万ドルになります(為替手数料は考慮しません)
  • この1万ドルを1ドル=160円のときに円に戻すと、160万円になります
  • 差額の60万円が為替差益となり、課税の対象です

課税方法

  • 為替差益は「雑所得」に区分され、総合課税の対象です
  • 利息と異なり源泉徴収されないため、原則としてご自身で確定申告が必要です
  • 給与など他の所得と合算され、所得税率は課税所得に応じて5%から45%までの7段階です

申告が不要となる場合

給与所得者で、給与以外の所得が為替差益のみで、その合計が年間20万円以下の場合などは、所得税の確定申告は不要です。ただし、住民税の申告は別途必要となる場合があります。

最高裁判断のポイント

2026年6月、最高裁は外貨を別の外貨に交換した場合でも、円換算で為替差益が生じていれば所得税を課すことは適法とする初めての判断を示しました。

判断の内容

  • 外貨を日本円に戻すときだけでなく、米ドルから英ポンドへの交換のように外貨同士を交換した時点でも、為替差益が確定します
  • 円に戻していなくても税金がかかることが明確になりました

ルールが変わったわけではありません

この取扱いは、国税庁が質疑応答事例などでこれまでも示してきた課税方針と同じです。今回の判断で新たな課税が始まったわけではなく、従来の取扱いが改めて確認されたものです。

これまで「円に戻さなければ課税されない」と考えて外貨同士の交換を行っていた方は、過去の申告内容を確認しておくことをお勧めします。

課税されるケース・されないケース

国税庁が為替差益を課税対象として取り扱うことを明らかにしているのは、主に次の4つのケースです。いずれも、外貨を「資産として残るもの」に交換した時点で為替差益が確定する点が共通しています。

ケース(為替予約なしの場合)為替差益への課税
外貨預金を円に両替する課税
同じ銀行で別の外貨に交換する課税
外貨で外国株式・外国債券などの有価証券を購入する課税
外貨で外貨建て不動産を購入する課税
同じ外貨のまま別の銀行の自分の口座に移す課税されない
海外旅行中にデビットカードで食事代などを支払う一般的に課税されない

海外での買い物は個別判断

保有する外貨を海外旅行中の食事や買い物に使うことは消費行動であり、一般的には為替差益の課税対象になりません。ただし、すべてが非課税になるわけではなく、国税庁は個別に判断するとしています。たとえば、転売目的でブランド品などを購入する場合は、課税対象となる可能性があります。

外貨建て有価証券・不動産の取引と為替差益

外貨建ての債券・株式などの有価証券や不動産を取引する場合、為替の影響は「購入時」「売却時」「売却代金を外貨預金に戻した後」の3つの場面で税金に関わります。

購入時

外貨預金から直接、外貨建ての有価証券や不動産を購入した場合、その時点で外貨預金の為替差益が確定します。円に戻していないため、申告が必要だと気づかずに見落とされやすいケースです。

売却時

外貨建て資産の売却損益は、取得時と売却時のそれぞれのレートで円に換算して計算します。そのため、保有期間中の為替の変動分は、為替差益として別に計算するのではなく、資産の売却損益に含めて課税されます。

  • 取得価額:外貨建ての購入価格 × 取得時のレート
  • 譲渡価額:外貨建ての売却価格 × 売却時のレート
  • 例:1万ドルの債券を1ドル=120円のときに購入(取得価額120万円)し、1ドル=150円のときに1万ドルで売却(譲渡価額150万円)した場合、外貨建てでは損益ゼロでも、円換算では30万円の譲渡益となります

売却損益は、有価証券であれば株式等の譲渡所得、不動産であれば不動産の譲渡所得として、それぞれの区分に応じて課税されます。

売却代金を外貨預金に戻した後

売却代金を円に替えずに外貨のまま外貨預金に入金した場合、売却時のレートがその外貨の新たな取得レートとなります。後日その外貨を円に両替したり、別の外貨や資産に交換したりする際は、この売却時のレートを基準に為替差益を計算します。そのため、売却時のレートは必ず記録しておく必要があります。

取得時・売却時レートの記録と保管

為替差益や売却損益を正しく計算するには、次のような情報が必要です。

  • 外貨預金に外貨を預け入れたときの為替レート
  • 外貨建て有価証券・不動産の取得時のレートと取得価額
  • 売却時のレートと、外貨預金に戻した外貨の金額

こうした情報はインターネットバンキングの取引履歴や取引明細書で確認できるのが一般的ですが、閲覧できる期間が限られている銀行もあります。

また、同じ通貨のまま他の金融機関に移すこと自体は課税されませんが、取得時のレートなどのデータは移管先に引き継がれないことが多くあります。確定申告の際に困らないよう、取引のたびにご自身で記録し、保管しておくことが重要です。

まとめ

外貨預金の利息は源泉徴収で課税が完結しますが、為替差益は原則としてご自身で確定申告が必要です。今回の最高裁判断により、円に戻さず外貨同士を交換した場合や、外貨で有価証券を購入した場合にも課税されることが改めて確認されました。また、外貨建て資産を売却した際は、為替の変動分も売却損益に含めて課税されます。

外貨建て資産の運用を始める際や、取引の方法を変える際は、事前に専門家へご相談いただき、適切な対応を行うようにしましょう。

思わぬ申告漏れを防ぐためにも、取得時の記録を日頃から残しておくことが大切です。

執筆者:アタックス税理士法人 代表社員 国際部部長 公認会計士・税理士 伊藤 彰夫
資本政策、事業承継、相続対策、M&Aの各ニーズに対応したコンサルティングに数多く従事。企業やオーナー富裕層のグローバル展開に伴い国際税務にも深く携わり、移転価格税制への対応、海外を活用したファイナンシャルプランニング、クロスボーダー対応などの実績をもつ。

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