海外子会社から撤退する際は、解散・清算にともなう事業実態の喪失や租税負担割合の低下によって、CFC税制による合算課税が発生する場合があります。
令和8年度税制改正では、このうち事業実態の喪失に対応する特例が新設されました。一定の要件を満たせば、解散後も一定期間は解散前の会社区分とみなされ、会社単位での合算課税を避けられる可能性があります。
今回のコラムでは、特例の対象となる要件や改正のポイントをまとめ、撤退・清算を見据えて企業が準備しておきたい事項を分かりやすく整理します。
海外子会社の撤退にともなう解散時のCFC課税を緩和する特例が創設
令和8年度の改正では解散した外国関係会社に係る特例が創設されました。海外子会社から撤退する際に法人を解散し、事業実態を失ったと判定されると、会社単位の合算課税が生じる可能性があります。
今回の特例では、一定の要件を満たす場合、解散後も原則3年間は解散前の会社区分とみなされCFC税制が適用されます。これにより、会社全体の所得ではなく、部分合算課税の対象となる所得を合算する扱いが可能となりました。
ポイント:この特例は撤退一般に適用されるものではなく、解散した外国関係会社が対象です。適用は、外国関係会社の令和8年4月1日以後に開始する事業年度からとなります。
部分対象外国関係会社は「解散前2年以内」がポイント
部分対象外国関係会社については、解散の日を含む事業年度開始の日の前2年以内に開始した各事業年度において、部分対象外国関係会社に該当していたことなどが要件です。
要件を満たせば、解散後も原則3年間は部分対象外国関係会社として扱われます。ここでの判定は解散直前の事業年度だけで決まるのではなく、対象となる期間の各事業年度について該当状況を確認する仕組みです。そのため、過去の事業年度で区分が変わっている場合は、特例の適用可否にも影響する可能性があります。
外国金融子会社等は「解散前1年以内」がポイント
外国金融子会社等については、解散の日を含む事業年度開始の日の前1年以内に開始した各事業年度において、外国金融子会社等に該当していたことなどが要件です。
部分対象外国関係会社とは判定期間が異なるため、特例の適用を検討する際は、対象となる事業年度を取り違えないよう注意が必要です。
また、1年以内の期間要件を満たすだけで特例が適用されるわけではありません。解散前からほかの要件も含めて、適用できるか確認しておきましょう。
合算課税への対応期間が2ヶ月から4ヶ月に延長
令和7年度改正では、外国関係会社に係る課税対象金額等の合算時期が見直されました。
従来は、外国関係会社の事業年度終了日の翌日から「2ヶ月を経過する日」を含む内国法人の事業年度に合算していました。改正後は、この基準が「4ヶ月を経過する日」に変更されています。
これにより、外国関係会社の決算内容を確認し、合算対象となる所得や税額を計算するための時間的猶予が拡張されました。ただし、見直されたのは合算時期の基準であり、合算される税額そのものが軽減されるわけではありません。
特例を活用するには解散前からの準備が欠かせない
特例を活用するには、撤退を決めてからではなく、平時からCFC税制上の取り扱いを確認しておくことが重要です。解散直前になって慌てて確認するのではなく、撤退の検討段階から必要な資料を整理しておきましょう。
また、国税当局から資料の提出を求められたときに期限までに提出できなければ、特例が適用されない可能性があります。撤退を検討する段階で関係部署と情報を共有しておけば、税務上の確認や資料の準備も進めやすくなるでしょう。
ポイント:解散前2年(外国金融子会社等は1年)の各事業年度について、事業実態を示す資料を保存しておくことが大切です。 撤退・清算の税務判断は国際税務の専門家との連携が鍵
令和8年度税制改正では、要件を満たす外国関係会社が解散した場合、解散前の会社区分を一定期間維持する特例が設けられました。
また、令和7年度改正では、CFC税制の合算時期が見直されています。これらの改正を撤退の場面で適切に活用するためには、自社が要件を満たすかどうかを確認し、必要な書類をあらかじめそろえておくことが大切です。
海外子会社の撤退を検討する段階から国際税務の専門家と連携し、税務上の影響を踏まえて解散時期を検討しながら、必要な手続きを進めていきましょう。
編集者:アタックス税理士法人 国際部 編集チーム

