海外子会社を撤退させる場面では、解散や清算にかかる費用に関心が向きがちです。しかし、外国子会社合算税制(CFC税制)によって、撤退そのものが思わぬ税負担につながることがあります。
対象になるかどうかは、企業規模では決まりません。海外子会社を持つ中堅・中小企業も、この課税の対象から外れるわけではないのです。令和8年度税制改正では、まさに解散・清算時のこの課税を見直す内容でした。
改正の説明に入る前に、今回のコラムでは、撤退時に合算課税が生じる仕組みを整理・解説します。
撤退課税を理解するためのCFC税制の基礎
CFC税制(外国子会社合算税制)は、タックスヘイブン対策税制とも呼ばれます。海外子会社の所得を軽課税国に置いておくだけで、日本での納税を免れることを防ぐための仕組みです。その所得を日本の親会社の所得とみなし、合算して課税します。
判定で問われるのは規模ではなく実態です。子会社が現地で実際に事業活動を行っているかどうかが焦点です。グローバルミニマム課税のような企業規模の下限は設けられていません。
このため、規模の小さい海外子会社を持つ企業も、この制度と無縁ではいられません。撤退・清算を検討する局面では、なおさらこの課税リスクを視野に入れておく必要があります。
解散・清算で合算課税が発生するのはどんなときか
実体を持たないペーパーカンパニー等(特定外国関係会社)では27%が分かれ目です。それ以外の外国関係会社は20%が分かれ目となります。このうち経済活動基準を満たさなければ「対象外国関係会社」、満たせば「部分対象外国関係会社」に区分されます。
事業を続けている間は問題にならなかった海外子会社でも、解散・清算に入ると区分や割合が変わることがあります。その結果、合算課税の対象に入ってしまうこともあります。
撤退・清算時に合算課税が生じる経路は、大きく二つに分かれます。会社としての実体を失うケースと、租税負担割合そのものが下がるケースです。
解散・清算で「実体」が失われた場合
事業活動を終えて事務所や従業員を手放した海外子会社は、実体を失ったとみなされます。その結果、ペーパーカンパニー等(特定外国関係会社)に区分が変わるケースがあります。
特定外国関係会社に該当すると、会社単位の合算を免除する基準が動きます。免除の基準となる租税負担割合は、20%から27%へ引き上げられます。そのため、これまで問題なかった水準の会社でも、免除を受けられなくなる可能性があります。
したがって、解散・清算を進める際は、実体の喪失でCFC税制上の区分が変わっていないか、事前に確認する必要があります。
租税負担割合が低下して合算対象となる場合
撤退を進める海外子会社では、CFC税制上の租税負担割合が低下し、合算課税の対象となる場合があります。原因は、現地の税務上の欠損金控除で納付税額が抑えられても、CFC税制上の所得計算にはその軽減効果が及びにくいためです。
典型的な例が、累積赤字を抱える海外子会社が、撤退時に親会社などから債務免除を受けるケースです。発生した債務免除益は現地の繰越欠損金と相殺され、現地の納付税額はほとんど生じません。一方、CFC税制上の租税負担割合は、この債務免除益をそのまま所得に含めて計算されるため、割合が大きく低下します。
結果として、海外子会社の所得が親会社に合算され、撤退時には想定していなかった税負担が生じることも考えられます。
仕組みを知ることが改正と備えの理解につながる
海外子会社の解散・清算では、手続きの進め方や撤退費用だけでなく、CFC税制による課税リスクも視野に入れる必要があります。
合算課税が生じる経路は、実体の喪失によるものと、租税負担割合の低下によるものの二つに大別できます。いずれの判断にも専門的な見極めが伴います。仕組みをあらかじめ理解しておくことが、撤退にともなう税負担の見落としを防ぎます。そのうえで、国際税務の専門家と連携しながら対応を検討することが土台になります。
次回は、この論点に手当てを行った令和8年度・7年度の税制改正の内容と、経営者に求められる備えについて詳しく解説します。
編集者:アタックス税理士法人 国際部 編集チーム

