海外M&Aで欧州が再注目される理由|円安・中東リスク時代の新戦略 | アタックス税理士法人 国際部

海外M&Aで欧州が再注目される理由|円安・中東リスク時代の新戦略

2026年5月29日

政府・日銀による為替介入後も、円相場は160円に迫る円安水準が継続しています。中東情勢の急変は原油価格を押し上げ、企業収益への影響はすでに表面化しました。一方、最新の経済見通しでは、情勢が長期化しなければ原油高・円安は徐々に和らぐとの予測も示されています。当面は「沈静化」と「再燃」の両にらみが続く見通しです。

そうした中でも、M&A仲介各社はクロスボーダー案件の支援体制を強化しており、日本企業の海外進出意欲は堅調です。本コラムでは、海外M&Aの進出先として欧州が再評価される背景と、高コスト時代に求められる財務戦略を解説します。

欧州M&Aが再評価される背景|成長から安定性を取り込む戦略へ

日本企業は、海外M&Aに対して高成長市場への進出だけでなく、地政学リスクや通貨変動への耐性強化も求め始めています。

なかでも欧州は、制度・通貨・産業基盤の安定性を持つ地域として再評価されており、リスク分散を目的とした進出先としても注目を集めています。

新興国投資で顕在化した「外部環境リスク」

ASEANやインドは高い経済成長率を維持しています。一方で、これらの地域は原油高やドル高の影響を受けやすく、インフレと通貨安が同時に進行しやすい特徴があります。

さらに、中東情勢の悪化は、エネルギー価格の上昇を通じて企業収益を圧迫する可能性も否定できません。日本企業は「成長性」だけでなく、外部環境への耐性も重視した投資先を選ぶ必要性が高まっています。

欧州が持つ「利益拡大とリスク分散を両立する」環境

欧州は、エネルギー調達先の多角化に加え、域内の資本移動やクロスボーダー投資を促進する環境整備も進めています。そのため、通貨や経済の安定性を維持しやすい点が特徴です。

また、資本移動や税務ルールの透明性が比較的高く、日本企業は将来の財務リスクを予測しやすい環境での事業展開が可能です。

欧州M&Aは利益拡大のみならず、中長期的な経営安定性を確保する『利益を守る戦略』として重要性を高めています。 

欧州進出で「ルール対応力」を獲得する意味

欧州では、脱炭素やデータ保護などの分野で規制整備が世界的に先行しています。そのため、日本企業が欧州企業を買収し、現地事業を運営する経験は、将来の国際ルールへの対応力向上にもつながります。

また、データセンターや日本食関連市場など、日本企業の強みを生かしやすい領域も拡大しているところです。欧州進出は市場の獲得だけではなく、将来の競争力を高める手段としての意味も持ちます。

将来的な競争優位性の確保につながる点も、欧州M&Aが注目される理由の一つです。

高コスト時代の海外M&Aで問われる財務の質

円安や輸入インフレが続くなか、日本企業は国内市場だけに依存する経営に限界を感じ始めています。そのため、多くの企業ではM&Aを通じて海外市場や現地販路を内部化し、事業基盤の強化を進めていく必要性が出てきました。

一方で、海外M&Aでは多額の資金が必要となります。金利上昇が続くなか、借入に依存した資金調達は返済負担の増加を招き、財務悪化につながる可能性があります。 近年は、第三者割当増資や社債発行などの手法を組み合わせながら、資本効率と財務バランスを意識した資金調達を行う企業も増えています。

今後の海外M&Aでは、「いくら調達するか」だけでなく「どのように調達するか」も考えていく視点が重要です。

中堅・中小企業にも求められる海外M&Aの設計力

地域分散を目的とした海外M&Aは、大企業だけに適した戦略ではありません。中堅・中小企業にとっても、海外販路の獲得や事業基盤の強化を実現する有効な手段です。

ただし、為替・原油・金利の先行きが「沈静化」と「再燃」の間で揺れる現在、特定のシナリオだけを前提とした計画は危うさを伴います。買収後の収益性に加え、資金調達や税務リスク、利益還流までを複数のシナリオで見通す設計が欠かせません。

実行前の財務・税務デューデリジェンスを徹底し、国際税務や海外M&Aに精通した専門家との連携が必須です。自社に適した戦略を早期に検討していきましょう。

編集者アタックス税理士法人 国際部 編集チーム

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