関税リスク時代に勝つ戦略としての海外M&A|日本企業の現在地とは | アタックス税理士法人 国際部

関税リスク時代に勝つ戦略としての海外M&A|日本企業の現在地とは

2026年4月3日

日本企業を取り巻く環境は不確実性が増しています。米国の関税措置をめぐる司法判断や中東情勢の緊迫化に加え、足元で原料高や、日銀の追加利上げ観測など、新たな複合リスクが浮上しています。

こうした混乱は、企業の収益構造にも悪影響を与えると想定しなければなりません。折しも、2026年2月に出された日本企業の決算からは、関税ショックに対する各社の対応の差が浮き彫りになってきました。

今回は、最新の決算動向を手がかりに日本企業の現在地をみていきます。企業の明暗がどこで分かれるのかを注視しながら、海外M&Aを含む海外戦略の視点と自社の財務を守る方向性を確認しましょう。

関税ショックから1年|決算から見える企業対応と海外戦略

2025年春に起きた米国の関税ショックから約1年が経過しました。2026年2月の決算では、各社の対応の違いが徐々に数字として表れ始めています。

日本企業が関税リスクにどのように対応してきたのかをまとめ、輸出モデルと現地化モデルの差が与えた収益構造の影響について詳しく解説します。

輸出依存モデルに直面した企業の課題

輸出比率の高い自動車業界では、関税がコスト増として利益を圧迫する構造が浮き彫りとなりました。

トヨタのように価格戦略やコスト吸収で影響を抑えた企業がある一方、ホンダや日産などでは関税の影響が悪い結果として決算に反映されて赤字となりました。輸出前提のビジネスでは、国の通商政策が損益に直結するため、外部環境への依存がリスクとなりやすいのです。

関税は企業がコントロールできない外部要因であり、輸出モデルの限界が顕在化したともいえるでしょう。

なお、米最高裁は関税措置の適法性に疑義を示すものの還付判断を回避してします。そのため、還付を前提とした財務判断には慎重にならざるを得ません。

環境変化に適応した企業の特徴

米関税の影響を比較的抑えられた日本企業も存在します。共通するのは、現地で生産・販売を完結させる事業モデルである点です。

輸出に依存せずに現地で稼ぎ、また現地で再投資するサイクルを生み出すことで、関税や為替の影響を受けにくい体質を整えています。ここでは、ラウンドワンとニトリの事業戦略を紹介します。

ラウンドワン

アミューズメント施設やスポーツ施設を国内外に展開するラウンドワンは、2010年から米国での出店を加速させています。現地収益の拡大と多通貨での利益構造を確立しているのが特徴です。

2026年3月期の決算資料によると、米国の売り上げ比率が全体の40%程度を占める規模まで拡大しており、コロナ禍で落ち込んだ水準から大きく回復しています。

海外の店舗を現地で収益を生み出す拠点として機能させ、外貨建て売上を直接取り込むモデルの代表例といえます。

ニトリ

家具やインテリア用品の企画・生産・販売を行うニトリは、製造から販売までを一貫して手がけています。その一体運営を基盤に、生産拠点の分散や物流網の最適化を進めているのが特徴です。海外店舗数は2026年2月時点で1,000店舗を超えるほどに成長しています。

傘下の家具・ホームセンター事業を担う島忠では、プライベートブランド化の推進によって営業利益が前年同期比18.6%増となり、収益改善が進んでいます。

輸入コストの上昇局面においても影響を制限しやすい取り組みを行い、インフレや関税などの外部環境の変化に強い事業構造を構築しました。サプライチェーン全体を自社でコントロールすることで、外部要因に依存しない事業運営を実現しています。

輸出から市場内部へ|海外戦略と海外M&Aの役割

輸出中心のビジネスモデルが通商政策の影響を最小限に抑えるには、現地市場への内部化が重要です。有力な手段の一つとして海外M&Aが挙げられるでしょう。

現地企業の買収によってサプライチェーンや販売網を確保すれば、関税や為替に左右されづらい収益構造が構築可能です。製品を輸出するのではなく、市場の内側で稼ぎ、資産を最適配置することで、外部環境の変化を吸収する体制が整います。

関税や地政学リスクに加え、今後はインフレや利上げによる資金調達コスト増も懸念されます。このような環境下では、徹底したB/S管理で自社の財務を死守する事業構造の転換が急務です。

海外M&Aを含む戦略的な知見や、国際税務・財務の専門家を活用し、環境変化に強い企業体質を目指しましょう。

編集者アタックス税理士法人 国際部 編集チーム

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