金利・為替・関税が変えた海外M&Aトレンド|欧州進出戦略の最前線 | アタックス税理士法人 国際部

金利・為替・関税が変えた海外M&Aトレンド|欧州進出戦略の最前線

2026年3月12日

2026年に入り、金利・為替・関税を巡る情勢は大きく変動しつつあります。特に関税については、米最高裁の違憲判決と現政権の即時報復(15%関税表明)と、未曾有の激動フェーズを迎えました。

欧州進出を検討する企業にとって、混沌とした政治状況は依然として続いています。しかしながら、米国の法的混乱が鮮明になったことで、相対的に「予見可能な欧州」へ拠点を移す意義は強まっています。

海外M&Aはもはや成長を追求する手段にとどまらず、中長期的な事業基盤を確保する「生存戦略」へと昇華されました。今回のコラムでは、最新の国際情勢を踏まえた欧州M&A戦略の本質を解説します。

※2026年2月末現在、米国の新関税15%表明(通商法122条)。さらに米GDP下振れとイラン情勢の緊迫化。さまざまな情勢を織り込み、迅速な投資判断が求められる局面です。

2026年海外M&Aの均衡点|不透明感の先を見据えた戦略

2026年に入り、金利・為替・関税をめぐる環境は転換点を迎えています。日米当局の姿勢が明確になるにつれリスクを前提にしたシナリオ設計が可能になり、関税政策も方向性が見え始めました。

米国では1月の雇用統計が市場予想を上回り、FRBの早期利下げ観測は後退して、金利の高止まりと円安傾向の長期化が見込まれています。※

このような環境においては、為替水準や金利の回復を待つのではなく、現在の条件を「新たな均衡点」と捉えた選別型の投資判断が望ましいでしょう。

※国内においても円高懸念は「消費税減税議論」に伴う財政・金融政策のハト派化期待によって打ち消されつつあります。

海外M&Aの選択肢としての欧州

2026年2月24日、米国の一般教書演説は「過去の実績」に終始し、新たな成長策を欠くといった報道が大多数でした。不確実要素が多く、米国への投資判断が厳しくなるなか、フランスのCAC40指数が史上最高値を更新しています。

この事実は、米国の恣意的な関税操作を嫌気した多くの資本が、ルールに基づいた欧州市場へ流入し始めている兆候とみて良いでしょう。

関税・規制時代のインサイダライゼーション(現地化) 

関税障壁や環境規制が強まるなか、外部から参入するリスクは高まり続けると予想されます。輸出モデルの依存による関税負担や認証手続きの遅延は、もはや「市場からの脱落」を意味します。

このような環境下で有効な打開策となるのが、現地企業として事業を行うインサイダー的視点です。

欧州企業を傘下に収める海外M&Aは、関税や規制の内側で事業を展開する立場から事業設計できる手段となり得ます。コストや時間のロスを抑え、中長期的な事業最適化を実現しやすい環境づくりにつながるでしょう。

労働力・市場を買うM&Aから競争力を買うM&Aへ

これまでの海外M&Aは労働力や販売市場の確保が主な目的でした。生産拠点の確保や販路拡大など規模を積み上げる発想です。しかし、金利や為替の高止まりが常態化する環境において、単なる拡大戦略では投資効率の確保が難しい局面です。

今求められているのは高い技術力やブランド力、研究開発基盤など、企業の競争力そのものを獲得するM&Aです。高付加価値産業が集積する欧州企業を対象にした海外M&Aは、企業価値を高める戦略として存在感が増しています。

欧州進出に向けた海外M&Aの実例

近年行われた欧州進出に向けた海外M&Aの実例を紹介します。

企業名年月地域買収概要・目的
三井物産2025年4月ベルギーITC Rubis社を完全子会社化。化学品物流・タンクターミナル事業の基盤を強化。
ダイキン工業2024年4月デンマークBKF社を完全子会社化。欧州内での事業基盤強化と低炭素ソリューションを推進。
ニデック2023年2月イタリアPAMA社を完全子会社化。欧州拠点における販路拡大、工作機械技術を獲得。
日本ペイントHD2021年10月中・東欧JUB社を孫会社化。流通網やブランド力を活用して同地域の市場基盤を強化。
アサヒグループHD※2019年1月イギリスFuller’s社のプレミアムビール・サイダー事業および関連資産を取得。プレミアムブランドの強化と米国業務用市場の基盤を確保。

※アサヒグループHDは、傘下のアサヒグループ食品などにおいても、海外M&Aを旺盛に実施している。(2025年3月5日付 ビール酵母関連製品製造販売のドイツLeiber社を買収)

海外M&Aの成否を分ける財務シミュレーション

欧州進出を目的とした海外M&Aでは、為替・金利・税制・規制を前提とした財務シミュレーションが不可欠です。表面的な買収価格だけで判断すると、想定外のリスクが顕在化しかねません。

専門的な財務・税務の視点から複数のシナリオを検討し、最適解を求める姿勢こそが海外M&Aの成否を左右します。複雑化する国際税務や関税リスクを見据え、早期から税務のプロとの伴奏体制を築きましょう。

編集者アタックス税理士法人 国際部 編集チーム

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