海外M&Aは大きな追い風を受けています。その影響を受けてメガバンクや準大手バンクが資金調達・相手探しの両面におけるサポート体制を強化しているほか、仲介業者も増えてきました。
しかし、市場が拡大する一方で、仲介業者の質の低さによるリスクが顕著になり始めています。海外M&Aを成功に導くには、国際税務と実務経験を兼ね備えたプロの協力が欠かせません。
この記事では、海外M&Aにおけるメガバンクや仲介業者の現状を解説します。海外M&Aの勝敗を分けうる「見えないリスク」を避けるためのポイントをチェックしましょう。
銀行は「海外M&A」に本腰|資金調達に追い風
日本の銀行は、国内市場の低成長や人口減少を背景に、海外企業の買収やそれに対する出資を強化しています。アジア新興国や米欧でのM&A・投資を通じたグローバル展開をする企業のニーズに応えるために、銀行による拠点拡大と資金供給を活発化させています。
銀行がどのように海外M&A事業を強化しているのか、詳しく確認しましょう。
メガバンク・準大手による拠点拡充と資金供給が本格化
メガバンクおよび準大手バンクではM&A需要の拡大を見据えて、海外拠点の拡充と資金供給を本格化させています。みずほFGのインド投資銀行買収検討やりそな銀行・京都銀行の海外拠点拡充などがその一例で、海外M&Aを後押しできるよう銀行側の整備を進めているのが現状です。
資金供給によって企業の投資需要やM&Aを後押しする環境が整いつつあることから、企業にとっては積極的に海外M&Aの検討を進めるに値する局面だといえます。事業の競争力強化と持続的な成長を実現する大きなチャンスともいえるでしょう。
専門部隊の整備と高度化するファイナンス手法
海外M&A需要の拡大を背景に、金融機関では専門部隊の整備と高度な支援体制の構築が進められています。
実際に、三菱UFJ銀行ではM&Aファイナンス専門職を積極的に採用しており、人材確保に向けた動きが活発です。従来以上に複雑かつ大型な案件に対応できる体制を整えたい狙いがあるといえます。
また、LBO(レバレッジド・バイアウト)やブリッジローンなどの高度なファイナンス手法は、大企業に限られるものではありません。海外進出を目指す中小企業の活用が一般化しつつあり、銀行内での支援姿勢も強まっています。
急拡大のM&A仲介業者|成長裏で問われる質の確保
企業にとって資金調達を行いやすい環境が整備されている一方、仲介業者がいなければ海外M&Aの相手探しは難航します。仲介業者は5年で2.6倍に増加しており、自社にふさわしいパートナーかどうかの見極めも簡単ではありません。
ここでは、急拡大しているM&A仲介業者の現状について解説します。
海外拠点の増加とマッチングの高速化
海外拠点の整備が進むなか、M&Aにおけるマッチングもスピード化しています。それに伴い、日本の大手M&A仲介業者がASEANや米国における拠点展開を進めています。
海外に拠点を構えることで、日本から相手を探すときと比べて機動的な対応が可能です。クロスボーダー案件の増加や成長企業のグローバル展開ニーズの高まりが、こうした動きを後押ししているとみられます。
急成長ゆえの「質」のバラツキが課題
M&A仲介業者は需要拡大を背景に急成長していますが、人材や専門性の整備が追いついていない側面もあります。
業者ごとに専門性や実務経験に差が生じている点には、特に注意が必要です。仲介業者やアドバイザーには、現時点で必須の資格はありません。大手仲介業者では、アドバイザーには「日商簿記2級」の取得を必須条件とする動きが主流です。ただし、実務における専門知識の深さにバラツキがあると推測されます。
知識や経験がそれほど多くない業者に依頼する場合、M&Aの相手を探して商談を進めることに支障はなくとも、税務・会計リスクを見落とす可能性を否定できません。こうしたトラブルを防ぐために、中小企業庁がM&Aアドバイザーにおける資格制度を創設する動きも出ているほどです。
海外M&Aは国際税務に精通したパートナー選びが肝要
銀行による資金調達と仲介業者によるマッチングが実現したとしても、税務・実務が抜け落ちると海外M&Aのリスクは高まります。海外M&Aの失敗は想定外の損失につながりかねません。
中小企業庁が公開しているM&Aガイドラインにおいても、会計・税務を含む幅広いスキルを持つ人材の必要性が明記されています。仲介業者から紹介される提携先ではなく、税務・会計・法務・クロスボーダー取引に精通した税理士法人に依頼することが海外M&A成功の鍵です。
海外M&Aを検討する際には国際税務の専門家と連携し、企業価値を最大化させましょう。
編集者:アタックス税理士法人 国際部 編集チーム

