国税庁が9月22日、「非居住者に係る暗号資産等取引情報の自動的交換のための報告制度(FAQ)」を公表しました。
「非居住者に係る暗号資産等取引情報の自動的交換のための報告制度(FAQ)」
ちょっと長い名前ですが、簡単に言うと、「海外に住んでいる方(非居住者)の暗号資産取引情報を、国税庁が自動的にキャッチできるようになる制度」について、よくある質問とその答えをまとめたものです。
この新制度は、「暗号資産もグローバル」という時代の流れを受けて、いよいよ本格的に動き出します。
いつから始まるの?具体的なスケジュールを確認!
この制度は、令和6年度の税制改正で整備され、以下のスケジュールで進められます。
2026年(令和8年)から:
暗号資産交換業者(取引所など)が、海外居住者(非居住者)の対象となる取引を特定し始めます。
2027年(令和9年)から:
交換業者から国税庁へ情報が報告され、さらに各国の税務当局間で情報が自動的に交換され始めます。
今回公表されたFAQには、この制度に関するQ&Aが26問も掲載されており、「どんな契約が対象?」「どの国が対象?」といった皆さんの疑問に答えています。
なぜこんな制度が必要なの?背景は「脱税防止」
なぜ、このような制度が作られたのでしょうか?
実は、暗号資産は国境を越えて取引されるため、「脱税のリスクが高い」と国際的に問題視されていました。
そこで、OECD(経済協力開発機構)が中心となり、各国の税務当局が非居住者の暗号資産取引情報を自動的に交換し合うための国際ルール「暗号資産等報告枠組み」を策定しました。
日本もこの国際ルールに則り、自動的な情報交換を実現するために、今回の新制度を導入したのです。まさに「暗号資産もグローバル」だからこそ、税務もグローバルな視点が必要になった、ということですね。
これからの影響は?「隠し通せない時代」へ
この制度が導入されると、これまで以上に「暗号資産取引の透明化」が進みます。
日本に住んでいない方(非居住者)であっても、日本国内の暗号資産取引所の利用状況が、母国の税務当局に把握されるようになります。
逆に、海外に住んでいる日本の税務上の居住者が、海外の取引所を利用している場合も、その情報が日本の国税庁に届く可能性が高まります。
つまり、「日本での申告漏れ」が指摘されるリスクが格段に上がると言えるでしょう。
まとめ
暗号資産は、その匿名性や国境を越える特性から、これまで税務上の課題が指摘されてきました。しかし、今回の制度導入により、その「グローバル」な特性が、「グローバルな税務情報交換」へとつながり、より厳格な税務管理体制が構築されることになります。
今後の国税庁の動きにも、引き続き注目していきましょう。
執筆者:アタックス税理士法人 社員 国際部副長 税理士 永持 祐司
税務顧問から個人資産家や法人オーナーの資産税業務を含めた財産コンサルティングに従事。組織再編を活用した事業承継、財産承継コンサルティングの業務を中心にオールラウンダーなプロジェクトマネージャーとして活躍中。

