日本企業が実施する海外M&Aは、新型コロナの収束に伴い増加傾向にあります。新規事業の立ち上げと比較して時間や手間を削減できるうえ、買収先企業の技術やブランド力を得やすいと注目を集めているためです。
しかし、海外M&Aのゴールは企業の買収ではありません。買収した企業との統合作業を行い、成果を上げていく必要があります。
今回の記事では、海外M&Aが注目される理由や有望国、買収後の課題について解説します。海外M&Aのイメージを膨らませ、企業の成長促進につなげてください。
海外M&Aが進む理由|市場の成長性と円安のリスク回避
現在、M&Aによって海外へ進出する日本企業が増えています。日本の市場は縮小傾向にあり、企業の成長のため海外展開を視野に入れる経営者が増加しているからです。
世界人口は2024年時点の82億人から、2080年代には103億人に達すると国連で推計されています。一方、日本の人口は2020年時点の1億2,615万人から2070年に8,700万人に減るとの予測が発表されました。
さらに、円安はまだまだ続く見込みです。商品や原材料を輸入している企業は、円安によるコスト上昇と収益減少が避けられません。しかし、海外展開を今進めれば、為替効果で企業全体の収益を伸ばせます。
海外M&Aで注目されている3つの有望国
東南アジアは日本から地理的に近く、進出先に選ばれやすいエリアです。日系企業の進出が続いており、新たな市場として開拓するやりがいを感じやすいでしょう。
ここでは、特に有望国として注目されているベトナム・タイ・マレーシアの特徴をそれぞれ紹介します。
ベトナム|人口ボーナス期の恩恵を受けやすい
ベトナムは、生産年齢人口15〜64歳の比率が高い人口ボーナス期を迎えています。労働力としての魅力があるうえに、将来的に大きな市場になると捉えられている国です。
識字率は95%以上で教育水準が高い傾向にあり、人材育成やイノベーションの促進に向いています。技術系人材の育成に力を入れている点から、エンジニアを獲得できる国としても注目されています。
タイ|ASEANの物流のハブ機能を持つ
タイは進出先としての人気が高く、日本企業の拠点数は中国に次いで6,083拠点です。
東南アジアの中央に位置するタイは、ASEANの物流の中心拠点となっています。実際、バンコクの空港からはアジア・中東・欧州・アフリカなど世界中への飛行機が飛んでいます。
タイには外資企業の進出を誘致する「投資奨励制度」があり、法人税や輸入関税の免税など税制面での優遇が受けられる点も魅力です。
マレーシア|多国籍企業に適している
マレーシアは、多国籍企業のシェアードサービスセンターが多く設立されている国です。
マレー系・華人系・インド系の3つの民族から成り立っているマレーシアでは、多言語に対応しています。さらに、多くの現地人が綺麗な英語を話すことから、コミュニケーションが取りやすいのも魅力です。
世界中の多国籍企業が進出しているため、外国企業での勤務経験のある人材が多い点も特徴です。
海外M&A成功の鍵は買収後の統合作業にある
海外企業を買収したら成功ではなく、統合プロセスを経てどのように収益を上げていくかが海外M&Aの肝です。
買収後の統合プロセスであるPMIは、単純に2つの組織を統合するだけではありません。企業や国の文化の融合や法規制・会計・税務への対応力が問われます。自社の当たり前を強要せず、買収先企業で働く「人」を尊重して成果を出していく必要があります。
すべての作業を経営者だけで行うことは難しいため、現地のビジネスに精通している専門家の存在が不可欠といえるでしょう。
海外M&Aの成功は専門家との連携が不可欠
ASEAN諸国へ進出する企業は多いものの、ビジネスや法律・税務の知識に精通している経営者は少数です。買収先企業と適切な統合作業を行うには、幅広い知識を兼ね備えた専門家の力が必須といっても過言ではありません。
海外進出の検討段階から国際税務の専門家に相談し、買収後の統合作業までを見据えた動きをしなければ成功が遠のいてしまいます。
海外M&Aの成功に導いてくれる税理士法人をビジネスパートナーとして迎え入れ、会社の成長に拍車をかけましょう。
編集者:アタックス税理士法人 国際部 編集チーム

