ステーブルコインの展望|海外送金・円建て決済の可能性と課題 | アタックス税理士法人 国際部

ステーブルコインの展望|海外送金・円建て決済の可能性と課題

2025年9月26日

ステーブルコインが、次世代の新たなデジタル通貨として世界各国から注目されています。日本でも2025年8月に、資金移動業者の登録完了と発行の予定が明らかにされました。これにより、円建てステーブルコインの導入が、秋に向けて進み始めています。

そこで今回は、海外取引を行う中小企業の経営者に役立つ情報として、ステーブルコイン実用化の背景や今後の課題を解説します。

ステーブルコインがこれからのビジネスをどう変えていくのか注視し、トレンドの見極めに役立ててください。

ステーブルコインとは?実用化が進む背景

ステーブルコインとは、価格変動のリスクが少ない「電子決済手段」です。ステーブルコインは法定通貨や特定資産と連動するため、仮想通貨とは異なり、安定性と実用性に優れています。

ステーブルコインが注目される背景に、デジタル人民元の開発に取り組む中国とドルの価値を維持したい米国の思惑が絡んでいます。

デジタル人民元が市場に出回るとドルの価値を揺るがす恐れがあり、米国にとっては不都合です。そのため米国は今、信頼性・安定性が高いステーブルコインの法整備を進めています。

日本では2023年6月に改正資金決済法が施行されており、ステーブルコイン導入の下地はありました。そして、直近の2025年8月には改正資金決済法に基づくステーブルコイン発行事業者(資金移動業者)が登録されています 。早ければ2025年秋には、国内初の円建てステーブルコイン(JPYC)が誕生する見込みです。

ステーブルコインが海外送金にもたらすメリット

ステーブルコインの普及は、中小企業が長年抱えてきた「海外送金」に関する課題の解決策になり得ます。

ここでは、海外送金の課題とステーブルコインの将来性を示し、海外取引を行う中小企業が得られるメリットを紹介します。新たなデジタル通貨の今後に注目しましょう。

即時性の向上・手数料の削減

ステーブルコインは従来の送金手段と比較して、着金までの時間と中間手数料を短縮できる可能性があります。

その理由は、仮想通貨の取引記録を暗号化して安全に管理する「ブロックチェーン技術」にあります。これにより、銀行を間に挟まず直接取引が可能となるためです。

銀行を利用した海外送金の場合、送金から着金まで何日か必要です。そのうえ、着金までに経由した銀行の分だけ手数料も高くなります。

ステーブルコインを用いれば、わずか数分で相手に送金が可能です。しかも相手に直接送るため、中間手数料も抑えられます。

為替リスクの回避・法制度による安心感

円建てステーブルコインJPYCが承認されれば、為替変動リスクを気にせず送金できるようになります。これまでのステーブルコインはドルをはじめとする外貨に連動していたため、取引や送金の際は為替変動のリスクが存在しました。

しかし、今後は円と連動したステーブルコインが発行される見通しが示されています。将来的には円(1JPYC=1円)を基にした海外取引が日本国内で活発になる可能性も考えられます。ブロックチェーン上に保存された取引記録は一般の方でも確認でき、透明性の問題もありません。

また、日本国内のステーブルコインは日本の法制度下で発行されるため、信頼性も非常に高いといえるでしょう。

ユースケースの広がり

ステーブルコインのユースケースは、幅広い分野におよぶ可能性があります。

まず挙げられるのが、銀行や仲介を挟まない直接的な商取引です。海外からの支払いにステーブルコインが利用できれば、日本の輸出企業に有利な展開となるでしょう。

デジタル給与払いに活用すれば、自動支払いによる業務効率化が図れます。海外在住の日本人への給与払いにも便利です。

デジタル分野では、デジタルコンテンツ売買やメタバース内での経済活動にもステーブルコインの導入が期待されています。

ステーブルコインの注意点と展望

ステーブルコインには、注意点も存在します。第一に挙げられるのは、ステーブルコインの歴史が浅い点です。日本でも導入に向けて法整備を始めたばかりのため、今後の法改正で新たな規制やルール変更の可能性が考えられます。

しかし、裏を返せば先行者利益を得る絶好の機会とも言えます。法整備や市場の動向をいち早く掴むことで、競合他社より優位に立てるでしょう。

ステーブルコインが国際ビジネスの新たな常識となる時代に向けて、準備を始めてはいかがでしょう。

編集者アタックス税理士法人 国際部 編集チーム

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