米国の関税政策がおよぼす企業への影響|想定されるリスクを解説 | アタックス税理士法人 国際部

米国の関税政策がおよぼす企業への影響|想定されるリスクを解説

2025年6月27日

米国トランプ大統領が、日本に対して24%の関税を課すと発表しました。これは両国の貿易不均衡を是正する策として行われたものです。

本記事では、トランプ関税が日本企業にどのような影響を与えるのか、中小企業の経営者向けに解説します。本記事をご覧になれば、関税の影響と想定されるリスク、対処方法などが把握できます。

今後起こり得る経済的打撃に備え、できる限りの対策を取りましょう。

米国が発動した関税の影響|日本には24%の税率が加算

米国は日本にとって重要な貿易相手国です。24%の関税がかかると日本経済は大きな影響を受けます。トランプ大統領は24%の関税を発表後、日本に対する24%の関税適用を90日間停止するとも発表しました。

なお、2025年6月時点での関税はベースラインの10%が適用されています。

今後の見通しについて「帝国データバンクシミュレーション」によると、日本に24%の関税が適用されれば、従来予測に対して次のような下押しが見込まれるとのことです。

  • 実質GDP:▼0.5%
  • 輸出の伸び率:▼1.7%
  • 倒産件数:339件増

参照:帝国データバンク「トランプ関税が日本経済に与える影響

これらはあくまでも予測に過ぎませんが、日本企業は今後に対する万が一の備えが必要です。

関税の影響を受けると考えられる業種

関税の影響を受けると考えられる業種を、以下3つの事業形態に分けて紹介します。

  1. 日本国内の輸出企業
  2. 米国に進出している日系企業
  3. 越境EC事業者

関税の影響を受ける企業は、日本国内の輸出企業に留まりません。米国に拠点を置く日系企業や、日本から海外に向けて事業展開する越境EC事業者まで、幅広い範囲の企業・事業者に影響がおよびます。

日本国内の輸出企業

経済産業省のデータによると、輸出によりトランプ関税の影響を受ける可能性が高い業種は以下の3種です。

・自動車・自動車部品

・建設機械

・鉄鋼・アルミニウム等

特に「自動車・自動車部品」は25%の関税が課されたうえに、米国への輸出全体の34%を占める主要産業のため、関税の影響が最も大きいと予想されます。具体的な影響として考えられるのが、販売台数の減少や生産ラインの縮小などです。中小企業の場合、従業員の解雇や倒産の恐れもあります。

「建設機械」の関税は現状でベースラインである10%ですが、自動車関連に次ぐ輸出規模であることも踏まえると、例え10%でも受ける影響は大きいといえます。そのうえ、関税24%の適用が決まれば受ける影響はさらに大規模になるでしょう。

「鉄鋼・アルミニウム」は、追加関税を25%から50%に引き上げると発表されています。米国向けの輸出割合はやや低いものの、米国への輸出を主要産業としてきた企業は、今後の経営方針について岐路に立たされるでしょう。

参照:経済産業省「(資料2)米国の関税措置に対する国内対応について

米国に進出している日系企業

在米日系企業も、関税の影響は大きいと予想されます。なぜなら、原材料の輸入価格上昇によるコストが増え、収益の悪化につながる恐れがあるためです。

特に、日系の和食店など生鮮食品を扱う店舗は、日本からの輸入コストを価格に上乗せせざるを得ません。生鮮食品は長期保存ができず、定期的な仕入れが必要になるためです。

米国で調達できる原材料は米国で調達し、関税の影響を極力小さくすることが重要です。

越境EC事業者

少額貨物には「デミニミス免除」と呼ばれる関税免除ルールが適用されます。そのため、日本のEC事業者が米国の購入者に商品を送る場合、輸入申告額が800ドル以下であれば基本的に関税はかかりません。

ただし、デミニミス免除は廃止が検討されているため、万が一に備えて対応を考えておく方がよいでしょう。

800ドルより高額な商品を扱うEC事業者は、関税による影響を受けます。関税は基本的に購入者が支払うため、購入者が越境ECサイトを避けて安価な国内サイトに流れてしまうなどが考えられます。

関税による影響|企業の業績予想は下方修正のリスクも

米国の関税政策により、日本は今後、大きな影響を受ける恐れがあります。流れ次第では、企業の業績予想も下方修正を強いられるかもしれません。

これから起こり得るリスクに備え、経営方針の見直しや新規輸出先の開拓、現地生産への切り替えなど、できる対策を行っていきましょう。

編集者アタックス税理士法人 国際部 編集チーム

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