海外取引所では国内に比べ、取引できる仮想通貨(※1)の銘柄が多いメリットがあります。その豊富な選択肢の中から、ビットコイン(※2)以外にも複数のアルトコイン(※3)を購入している方もいるのではないでしょうか。
海外では仮想通貨のETF(投資信託)承認に動く国も目立ち、仮想通貨の将来性は高いとみられています。一方、仮想通貨にはリスクも存在し、思いがけない損失が生じる恐れがあるため注意が必要です。
本記事では、個人投資家に向けて「海外取引所を利用した仮想通貨の将来性と納税懈怠(けたい)のリスク」を解説します。海外取引所利用における注意点を理解し、円滑な取引に役立ててください。
【用語についての注釈】
(※1) 仮想通貨: インターネット上で取引されるデジタル通貨の総称。
(※2) ビットコイン: 最初に登場した代表的な仮想通貨の一種。
(※3) アルトコイン: ビットコイン以外の仮想通貨の総称。
仮想通貨の現況|国際経済の影響による高騰と下落
仮想通貨は、世界経済の影響を受けやすい商品です。仮想通貨の現況を、最も有名なビットコイン(BTC)の例で説明します。
2024年12月、BTCの価格が上昇し10万ドルを初めて突破しました。背景には「米国における仮想通貨現物ETF承認」「暗号資産導入に前向きなトランプ元大統領の再選」「半減期の反動買い」などがあります。
しかし、2025年2月には「仮想通貨ハッキング事件」「米国一部州でBTC準備資産の法案が廃案」「トランプ大統領による海外への高関税発表」などの要因で、一時8万ドルまで下落します。もっとも、その後は「米国による仮想通貨を備蓄投資とする大統領令承認」などの影響で回復に転じ、2025年5月時点で再び10万ドルを超える高値を記録しています。
このように、BTCの値動きには世界経済の影響を受けやすい仮想通貨の特徴がよく表れています。
仮想通貨ETFとは?各国の取り組みと将来性
仮想通貨ETFとは、仮想通貨の投資信託のことです。ETFが承認された国では、仮想通貨を取り扱う証券取引所にて取引できます。つまり、仮想通貨ETFが承認されれば、これまで投機商品とされてきた仮想通貨が投資価値のある証券とみなされ、仮想通貨の信頼性向上や流通量増加につながるのです。
仮想通貨ETFの承認は、カナダをはじめブラジル・香港・米国・オーストラリアなどいくつかの国や州で進んでいます。日本ではまだ仮想通貨ETFの承認は行われていないものの、米国で承認されたことを受けて先行きが期待されています。仮想通貨ETFの承認が広がれば、仮想通貨の将来性がさらに高まると考えるでしょう。
納税懈怠による追徴課税リスク|課税対象に要注意
仮想通貨は、将来性の高い商品です。しかし、その値動きの激しさから納税を怠ると思わぬ事態に陥る場合があるため、注意が必要です。
例えば、BTCの高騰により日本円で100万円の利益が出たため、確定した利益を全額イーサリアム(ETH)に買い替えたとします。このとき注意しなければならないのは「BTCで出た利益100万円はその年の課税対象になる」ということです。なぜなら、仮想通貨の買い替えはコイン同士を交換したと捉えるのではなく、BTCで出た利益を確定させてETHを購入したと捉えるためです。
投資家のなかには、仮想通貨は現金に交換しない限り確定申告の必要はないと誤解しており、申告漏れが発生する方もみられます。上記の例でいえば、高騰したBTCの売却益に課税される納税分をETH購入に費やしてしまったことで、追徴課税に対応できない可能性があります。場合によっては、ETHの大暴落が重なるなど現金化しても支払いきれない状況も起こり得るでしょう。
仮想通貨の海外取引所利用はリスクヘッジが重要
海外取引所では、多くの仮想通貨取引が可能なために流動性が高く、値動きの影響も大きくなりがちです。リスクを下げつつリターンを求めるには、ヘッジをかける必要があります。
仮想通貨のリスクヘッジでよく取られる手法が、分散投資です。複数の仮想通貨に投資することにより、暴落の影響を軽減できます。ただし、分散投資は処理が複雑になる場合が多いため、申告漏れや計算ミスなどが起きないように注意しなければなりません。
納税について不安がある場合は、海外の税務に強い専門家に相談しましょう。確定申告の注意点は、以下のコラムも参考にしてください。
仮想通貨 海外取引所の確定申告|失敗しないための準備と注意点
海外取引所を介した仮想通貨投資|リスク管理を忘れずに!
仮想通貨は世界中から大きく注目されており、将来性の高さが期待されます。一方、世界経済の値動きによる影響を受けやすい商品でもあります。
世界経済は、時に思いがけない流れをみせます。海外取引所を介した仮想通貨取引は特に値動きの影響を受けやすいため、分散投資でリスク管理を行い、万が一に備えましょう。
編集者:アタックス税理士法人 国際部 編集チーム