変化及び変化から発生する問題は、大きく2つあります。1つは、一時的変化・一時的問題であり、もう1つは、構造的変化・構造的問題です。
一時的変化・一時的問題とは、景気や政策、さらには、為替レートや競争環境などの変化により、一時的・一過性的に自社を取り巻く経営環境が変化することであり、その変化から発生する問題のことをいいます。
もう1つの構造的変化・構造的問題とは、自社がよって立つ基盤・前提そのものが根本的に変わってしまうような変化であり、その変化から発生する問題のことをいいます。
例えば、自動車でいえば、ガソリン車からEⅤ車にシフトしていけば、ガソリンタンクもマフラーも不要になってしまうような変化やそのことから発生する問題がそれです。
いうまでもなく、一時的変化・一時的問題と、構造的変化・構造的問題とは、それへの対処の仕方が全く違います。
それは、一時的変化・一時的問題は、時間が経過すれば程度の差こそあれ、再び元に戻る変化・問題ですが、構造的変化・構造的問題は、その変化こそが新しい現実であり、その変化・問題は、いつまでたっても元には戻らないからです。
もっとはっきり言えば、その変化・問題が、一時的・一過性的ならば、その変化に本気・本格的な対策を講じる必要性はありません。
しかしながら、その変化・問題が、構造的な変化がもたらした結果現象・問題であったならば、一日も早く決断をし、それに合うような経営改革を行い、新たな時代が求める経営体に、自社そのものを変化・変革させるべきなのです。
近年の「人財不足問題」も、一時的ではなく、構造的な変化がもたらしている構造的な問題と理解認識すべきと思います。問題を先送れば先送りするほど、深刻化してしまうと思います。
人財不足問題が、構造的という根拠の1つは、少子高齢化の問題です。周知のように、近年の少子化の影響をもろに受け、わが国の生産年齢人口は、年々大幅に減少をしています。
これからの時代は、労働力、とりわけ人財の安定的確保が、ますます困難になっていくものと思います。これまで5人採用していた企業が1人しか採用できなかったとか、全く採れなくなってしまったという企業が、毎年、続出すると思われます。
事実、近年の中小企業の倒産や廃業の多くは、人財の入職不足や流出の増加、さらには、既存の社員の高齢化に伴う自然減等、人財不足問題というのが実態です。
かつての倒産や廃業の多くは、販売不振や売上高の減少といった仕事不足でしたが、今や、需要・仕事はあるにもかかわらず、それを担う人財がいないという原因が、圧倒的多数になってきています。
こうなると、ますます企業は、現状維持であろうが拡大志向であろうが、これまで以上の労働力の確保が必要となるのです。
こうした労働供給力の慢性的低下と必要労働力の慢性的増加という相反する問題は、単に必要労働力の確保が困難というだけではなく、より重要な新たな様々な問題を発生させます。
その1つは、人財の流動化、つまり、転職の増加です。
それもそのはず、人財不足倒産・人財不足廃業という哀れな幕切れを避けたいため、国内外企業が入り乱れ、大企業・中小企業が入り乱れ、年々減少していく人財の奪い合い競争が激化するからです。
事実、「労働力調査」(厚生労働省)を見ると、2021年の転職者数は290万人であったものが、2022年は308万人、2023年は328万人、そして、2024年は331万人と、近年、増加傾向が顕著なのです。
しかしながら、より心配なことはこれからです。同調査で「転職等の希望者数」も調査していますが、これを見ると、統計を取り始めた2013年が806万人であったものが、その後、増加傾向著しく、2024年統計では、1000万人となっているからです。
2024年の就業者数は6781万人であるので、転職した人は、わが国全就業者の4.9%ですが、転職希望者の比率は、その3倍の14.7%なのです。
これは転職希望者が実際に転職するまでのタイムラグと転職したいと思っていても、より良い企業に転職できるか否かの不安もあるからです。
これまで長らく、企業の盛衰の決定権者は、顧客であり、「顧客に嫌われた企業に未来はない」と、いわれてきましたが、これからの時代は、人財社員が企業の盛衰を決定するのです。
まさに、「社員やその家族に嫌われた企業に未来はない」といっても過言ではないと思います。
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筆者紹介

- アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長 坂本 光司(さかもとこうじ) - 1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。
