求められる高齢者雇用(定年無し経営)

経営

厚生労働省の「就業条件総合調査」をみると、わが国企業の社員の定年年齢は60歳が大半で、66歳以上という企業は、わずか2%程度しかありません。

高齢者雇用安定法では、65歳までの雇用は義務であり、2021年4月の改正で、70歳までの就業機会の提供が努力義務化されました。

しかしながら、大半の企業は、未だ、60歳で、いったん退職させ、その後65歳まで、嘱託社員として再雇用するというやり方です。

そして65歳を過ぎると、本人の意思もさることながら、企業にとって必要か否かで、再々雇用が決まるのが一般的です。

そして給料はというと、ほぼフルに働いているのも関わらず、60歳の時と比較し、7割から5割、中には3割以下にダウンしてしまう人もいます。

そして、一方では「労働力不足…」とか、「だからこそ外国人雇用だ…」というのです。

こうした定年制度の考え方・進め方や、高齢社員に対する基本的姿勢は、間違っていると思います。

というのは、60歳とか65歳、あるいは70歳を過ぎて、知力や技術力・気力・体力が、一気に落ちていく人などほとんどいませんし、それどころか、人によっては、60歳を過ぎて、一段と進化する人も多くいるのです。

また、多くの高齢社員は、若かりし頃から、今日に至るまで、長期にわたり、企業の成長発展に、身を粉にし、働いてきてくれたばかりか、今日の企業の中核社員を育ててくれた最大の功労者なのです。だからこそ、企業や今日の中核的社員は、恩送りをしなければならないのです。

加えて言えば、時代は高齢社会であり、高齢社会の消費・購買の主役は、高齢者であり、だからこそ、その担い手は、高齢社員こそがふさわしいからです。

ともあれ、本人が雇用を望まなければともかくですが、望んでいるにもかかわらず、65歳~70歳で、「お払い箱」にするような経営は、「人を大切にする・人を幸せにする」という企業使命からみても、間違っているのです。

こんなまるで「姥捨て山」のような、また、「都合がいい時だけ…」といった、企業ありきの経営をしていたら、今、社内にいる誠実な若手社員や中堅社員は「この企業は、高齢社員に冷たい企業、高齢になるまで勤めるべきではない企業…」と判断し、その離職が増加するとともに、そのモチベーションを大きく下げると思います。

逆に、高齢社員を大切にすれば、若い社員は「この企業は、高齢者になっても大切にしてくれる企業…」と評価し、そのモチベーションは高まると思います。

私が、定年無し経営を推奨しているわけは、そもそも企業経営の使命と責任が、「社員とその家族の永遠の幸せの追求・実現」ということもありますが、より明確なことは、8000社以上の企業の現地研究をした結果、好・不況にブレない真に「いい企業」の大半は、実質定年無し経営だったからです。

その1社が、静岡県磐田市のコーケン工業という、社員数約300名の部品メーカーです。

同社の社員の年齢は最年少が、今年4月に入社した18歳の高卒新入社員、最年長は92歳の男性社員で、三世代どころか四世代の社員が、一丸となって元気で働く企業として著名です。しかも全社員が無期雇用・定年無しなのです。詳細は、同社のホームページを見ればよくわかります。

 
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筆者紹介

坂本光司

アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長  坂本 光司(さかもとこうじ)
1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。

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