やるべきことを忘れた経営者

坂本光司の快進撃企業レポート 経営

企業経営の最高の使命と責任は、五方良しの経営の実践、とりわけ社員とその家族の命と生活を守ることである。

リストラをされて、幸せを実感できる社員や家族など、誰もいないし、路頭に迷って幸せを実感する社員や家族もどこにもいないからである。

それゆえ、企業経営において決してやってはいけない最たることが人へのリストラなのである。筆者は、人へのリストラは「企業経営という名を借りた殺人行為である…」とまで言うことにしている。

より腹立たしいのは、リストラを行う経営者は平然と居座るという身の処し方である。こうした企業を調べてみると、役員報酬は5000万以上どころか数億円以上という企業も少なからずある。

リストラをせざるを得ない大きな問題を、社員が起こすことなどありえない。その大半は、経営者の決断の失敗で発生するのである。

つまり、経営者が「やってはいけないことをやってしまう」とか「やるべきことをやらない」ことこそが、根本原因・最大原因なのである。

その失敗を何ら罪もない社員に擦り付けるような経営が、社員はもとより社会に認められるはずがないのである。

リストラの最大目的が、総人件費の抑制であることを考えれば、万が一それが必要ならば、社員の頭数を減らすという発想ではなく、全体で、その分の人件費を減らすという発想が必要なのである。

もっとはっきり言えば、まずは社長をはじめとした役員の報酬を大幅に下げ、それでも困難ならば、次は部課長をはじめとした幹部社員の給料を下げることが正しいのである。

例えば、年収5000万円の役員の報酬を、その年は500万円にすれば、9名の社員の雇用が守られるのである。こうした対処は、企業の原点は家族であることを考えれば当たり前のことである。

これまた、筆者が良く言う例えであるが、5人家族で3人分の食べ物しかない状態が1ヶ月も余儀なくされた場合の対処の仕方である。

その家族の両親が、自分たちのお腹を最初に満たすことなどするはずがないのである。それどころか、「もう食べたから…」とウソを言い続けて死んでいくはずである。

筆者が良く言う「社員であった頃のことを忘れてしまった人が社長や役員になると、ろくな社長・役員にならない…」とか「中小企業であった頃のことを忘れた企業が大企業になると、ろくな大企業にならない…」という意味が、このことである。

全ての経営者とは言わないが、大企業・中小企業を問わず、多くの経営者には、これまで少なからず企業経営に関し、おごり高ぶりがあったと言っても過言ではない。

つまり、まるで「企業があって社会がある」とか「企業があって社員がいる」とか「企業があって顧客がある」とか「経済があって人の命や生活がある」といった意識での経営である。

どう考えても、そうした見方・考え方は、間違っている。筆者は良く「異常が長く続くと、異常があたかも正常に見える」とか「異常と比較すると正常があたかも異常に見える」と話すが、まさに企業経営でも同じようなことが言える。

つまり、どう考えても、原理原則は「社会があって企業がある」「社員があって企業がある」「顧客があって企業がある」のである。

 

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筆者紹介

坂本光司

アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長  坂本 光司(さかもとこうじ)
1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。

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