オタフクホールディングスの経営

経営

広島市の郊外に、ご存じの方も多いと思うが、「オタフクホールディングス」という社名の会社があります。

主製品は、ソースや酢、たれ、ケチャップ等の各種調味料の研究・生産を行っている会社です。とりわけ著名な商品は、お好み焼きや焼きそば用のウスターソースで、この分野ではトップブランドと言っても過言ではありません。

同社の創業は1922年。ですから、今年でちょうど100年企業になります。創業当初は、家業としての「佐々木商店」として、酒や醤油の卸小売業としてのスタートでした。

その後の時代変化を敏感に感じ取るとともに、他社との差別化、さらには顧客の声を直視し、現在の業態にゆっくりですが、着実に変えていったのです。

苦労と努力が実り、この100年間、大きな波乱もなく、今日までゆっくり着実に成長発展し、現在では、社員数は約450名(グループ全体では650名)、売上高は約250億円という、業界では有数の企業となっています。

そればかりか、海外でも評価高く、要請を受け、現在ではアメリカ、中国、そしてマレーシアにも進出しています。

先日、同社の本社を訪問し、佐々木社長に本社や工場を見学させていただくとともに、佐「企業経営の考え方・進め方」等について、ゆっくりお話を聞く機会がありました。その話を聞きながら、同社は、会社が強くそれを望んだのではなく、成長発展すべくして成長発展した会社であると強く思いました。

そのすべてをここで紹介する紙面的余裕はありませんので、2点ほど要約的にその成長発展の要因を紹介します。

第1点は、この100年間、外部環境にぶれることなく「正しい経営理念」に基づいた理念経営を実践し続けてきたことにあると思います。ちなみに、同社の経営理念は「相手の喜びが、自分の喜び。商品を通じて感動を生み、更なる満足を提供します」です。そして創業の思いとして「みんなが笑顔で幸せに」があります。

まさに「自利経営」ではなく「利他経営」「一方良し経営」だはなく「五寶良し経営」なのです。筆者は、これまで8000社を超える多くの企業を訪問し、その盛衰の要因を調査研究し続けてきましたが、いい会社は例外なく「奉仕を先に利を後に」なのです。

「売上高重視経営」や「顧客づくり経営」といった会社にとって、何が重要かではなく、相手にとってどうなのか、相手にとって何が重要か…、といったぶれない「真実の経営」「ファンづくり経営」こそが、同社の今日の成長発展をもたらしていると確信しました。

第2点は、この100年間「大家族的経営」をブレず実践してきたことにあると思います。もっとはっきりいえば、効果・効率や生産性を重んじる「管理型経営」ではなく「働きがい」や「やりがい」を重んじる、まるで社員皆が家族のような「温かい経営」です。別の言い方をすれば、「CS」を高めるための「ES最重視経営」です。

佐々木社長は、この100年間、ぶれず最重視してきたことは「制度ではなく風土」とりわけ「お互い様風土経営」「ワイガヤ重視経営」といってくれました。

会社経営は本来、スポーツに例えれば「個人戦」ではなく「団体戦」「チーム戦」であり、「個人戦」ではありません。社員やその家族を一人も残さない大家族的経営のぶれない実践こそが、社員の心をしかと捉え、今日の同社の成長発展の要因と思いました。

同社の地域貢献や社会貢献活動や新商品活動に関しても、学ぶことが多く取り上げたかったのですが、このことについては、別の機会に述べたいと思います。

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筆者紹介

坂本光司

アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長  坂本 光司(さかもとこうじ)
1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。

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