バグジー~日本一の美容室

経営

北九州市に「バグジー」という店名の美容室がある。創業は1989年、現社長である久保氏が一人で創業している。

久保氏は地元中学校を創業後、子供のころからあこがれていた美容業界に入り、その後アメリカやヨーロッパの美容室で経験を積んだカリスマ美容師の一人として著名な方である。

帰国後、北九州市内に「BAGZY中間店」をオープンし順調なスタートをきったが、数年後、信頼していた複数の幹部やスタッフが続々と退社していったのである。

退社の理由は、「あなたの独りよがりの経営や、上意下達的物言い、さらには業績志向の経営にはついていけないから…」だった。

当時、お店も絶頂期であり、自身もカリスマ美容師として名を馳せており、この時ほどのショックはなかったと久保社長は語る。

しかしながら、冷静に考えれば辞めた従業員の言う通りであり、深く反省する。

久保社長は当時の心境を「美容室は従業員の技術が商品です。その従業員がいなくなるということは、店頭から商品がなくなってしまうと同じです。だから、CSを高めることに専念する前に、まずはESを高めることにした。ESが向上すれば、自ずとCSが高まると確信しました」と語る。

こうして当社は、これまでのワンマン経営・業績志向経営・閉鎖的経営を改め、全員参加経営・従業員満足度重視経営・超ガラス張り経営に経営スタイルを変えていったのである。

そして、そのことを内外に明示するため新たに「敬愛」を経営理念に制定している。

この結果、当社の業績はもとより、従業員の定着率、リピーター率は年々高まり、今や業界ではあこがれの存在になるまでに成長発展している。

ちなみに現在ではFC店含め8店舗、売上高は約5億円、従業員数は105名、より驚かされるのは、従業員の定着率である。

事実、例えば入社後10年後の従業員の離職率を見ると業界の平均は約90%に対し、実質0%である。

こうした実態が評価され、近年、当店への研修視察や、久保社長への講演要請が全国各地から相次いでいるという。

こうした現実を直視すると、どんな業種でも経営の考え方・進め方次第でどうにでもなるということが証明される。

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筆者紹介

坂本光司

アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長  坂本 光司(さかもとこうじ)
1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。

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