中堅中小規模のDX化建設業 -陰山建設株式会社

経営

西浦道明のメルマガ 2023年10月

2014年から、当メルマガでは自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。

連載110回目の今回は、福島県郡山市で、建築、土木に付帯関連する一切の総合建設請負工事業などを行う陰山建設株式会社(以下、K社)の池クジラぶりを見ていきたい。

K社は、1954年4月、陰山昭二氏が創業した。

以来、学校などの公共工事から、医療・福祉施設、商業施設、マンション、住宅などの設計・施工を行ない、入札参加資格者の有資格について建設工事の業種ごとに「資格総合点数」「客観点数」「新客観点数」を掲載する有資格者名簿の建築工事部門の令和5年・6年度の福島県県中地区ランキングでは最上位の評価を得ている。

2007年代表取締役に就任した陰山正弘氏(以下、K氏)は、業界に先駆け、2010年からDX化に積極的に取り組んだ。

建設業界のIT化対応への遅れを感じていたためだ。

ICT施工の導入は、まず、土工事において3次元データを活用したICT建機による情報化施工を始めた。

ドローン測量、3次元データ作成、ICT建機による情報化施工を実施し、自動化を進めた。

これによりK社の労働生産性は確かに高まった。

その際、ドローン飛行の目的はデータ活用だったが、お客様は、初めて見る建物の空撮映像に驚きの声を上げ、もっと空撮した写真を見たいという声が寄せられた。

K氏は、建設工事をリアルタイムでお客様に見てもらえること自体に価値があることに気づいた。

さらに、ドローン飛行が、写真撮影をする若手社員のやりがいの向上にも繋がることが分かった。

2018年4月、自社パイロットによる建設現場のドローン飛行が100%行える体制を構築することに成功した。

現在52名の社員がいるが、そのうち33名がドローンパイロットの操縦免許を取得している。

当初、外注化していたドローンパイロットの仕事は、今や内製化に成功し、DX化のスキルやノウハウを、K社は、自社に蓄積できる体制を整えた。

また、2018年、K社は建設プロセスを可視化できるアプリを自社開発した。

アプリの中身は、元請向けWEBアプリ、協力会社向けWEBアプリ、個人向けスマホアプリである。

これにより、建設業に関わる様々なプレーヤー、すなわち、お客様、元請、設計事務所、そして協力会社が、建設のプロセスを、現地に出向くことなく、同時に確認できるようになった。

お蔭さまで、K社には、まったく新しい一般建築のビジネスモデルができあがった。

さらに、建設業界には深刻な労働力不足の問題もある。

2025年には、団塊の世代が75歳以上になり、技能労働者の4割が離職し、約130万人が不足すると予測されていて、その問題を解決するには労働生産性向上しかない。

K社のビジネスモデルはこの問題をもクリアできる。

DX化により、若手の早期成長が可能となり、建設業にはなかなか若者が就職したがらない中、新規学卒者の採用に成功している。

それにプラス、女性の就職希望者も増加しているのだ。

K社は、DX化により、自動化・可視化・リアルタイム化を実現し、お客様、元請、設計事務所、そして協力会社それぞれが、現地に出向く回数を減らしても、建設プロセスを同時に確認・共有できる、新しい一般建築のビジネスモデルを開発した。

このビジネスモデルでは、従来と比べ、顧客満足度も社員満足度も共に向上し、
労働生産性も高まっている。

K社は、中堅中小規模のDX化建設業(池)のクジラとなった。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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