投資は『まごころ』金融は『まごころの循環』 -鎌倉投信株式会社

経営

西浦道明のメルマガ 2021年1月

2014年から、当メルマガでは自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。

連載77回目の今回は、神奈川県鎌倉市で、投信委託業務や投資信託の販売などを行う、鎌倉投信株式会社(以下、K社)の池クジラぶりを見ていきたい。

現社長の鎌田恭幸氏(以下、K氏)には、2000年くらいから、「世の中の金融の動きは、短期利益志向が強くなり、金融が社会に役に立っているという実感が薄らいできていた」という失望があった。

また、「金融が健全に機能しないと、どんなに素晴らしい企業や活動も、社会の中でよりよく発展しない」という気づきもあった。そんなことから、K社は、2008年11月、K氏ら大手資産運用会社の仲間4人によって設立された。

2010年3月、3億円で運用をスタートしたが、2020年8月現在、450億円の資金が集まっている。

本業を通して社会に貢献し、社会から本当に必要とされる「いい会社」に長期投資するという理念に賛同する、2万人を超える個人投資家の少額の資金を積み上げたものだ。

運用益だけを求める巨額の投資家からの資金は集めていない。

投資信託の中には短期的に売買する中で利益を得ることを運用目的とするものもある。

そのような投資信託を保有した場合、得をする投資家がいる反面、損をする投資家もいるため、結果として市場全体では価値が生まれておらず、ゼロサムゲームになっているものもあり、好対照である。

K社が行う投信委託は投資家から集めたお金を運用する業務だが、その投資哲学は、他社とは明らかに異なる。

K氏は、投資は『まごころ』であり、金融は『まごころの循環』と主張し、一切ぶれない。

具体的には、「いい会社」に限定して投資し、その経営姿勢が 変わらない限り、継続保有するという。

したがって、満期を無期限にできる金融商品の「投資信託」を採用している。

また、「公募」により、「いい会社」に投資して社会貢献したいという質の高い資金を、不特定多数の個人投資家から、1万円という少額からでも参加できるようにしている。

また、「直販」にすることで、そうした投資家に、運用者の顔が見える仕組みを創っている。

こうした考え方で組成された投資信託が「結い2101(ゆいにいいちぜろいち)」である。

その名前の由来は、人々が助け合い、協力し合っていく大切な 日本の文化を受け継いでいこうという想いにある。

「2101」は次の世紀(22世紀)につながる価値を皆で創っていこうという意味だ。

100年続く投資信託を通じて、200年、300年発展する企業を応援するという想いが込められている。

K社は、世の中によくある顧客受けするテーマで資金を集めたり、短期の売買により投資家の利益を追ったりする、かつて常識とされた投資運用業の会社とは完全に一線を画した投資信託を組成してきた。

「きれいごと」「考えが甘い」と言われてきたが、今や、ESG投資などと、世の中の方からK社の考え方にすり寄ってきている。

コロナショックの大幅な調整期を挟んでも、2020年8月末で過去10年のリターンが年率7.8%、リスク(年率)9.2%、安定性の尺度として用いられるシャープレシオ(リターン÷リスク)が0.8と、当初の目標を実現するパフォーマンスを上げている。

K社は、短期的リターンを求める常識的な投資ではなくて、「いい会社」を長期的な視点から応援する、という特異な投資哲学において、ある意味注目される存在、投資信託市場(池)のクジラに育ったともいえよう。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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