味の作曲家 -日本食研株式会社

経営

西浦道明のメルマガ 2020年1月

2014年から、当メルマガでは自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介しています。

連載65回目の今回は、愛媛県今治市で、ブレンド調味料・加工調理食品などの販売を行なう日本食研株式会社(以下、N社)の池クジラぶりを見ていきます。

N社は1971年、大沢一彦氏(現代表取締役会長、以下、O氏)が、大学卒業後、8年間食肉の加工技術を学び、31歳のとき創業しました。

「味の作曲家」をキャッチフレーズに、ブレンド調味料の研究開発・生産・販売に取り組みました。

ブレンド調味料の出荷量で日本一、業務用に限れば日本の最大手となり、家庭用と合わせたこの分野の市場シェアは40%です。

また、ブレンド調味料以外、「ハムソーセージ」など加工調理食品を合わせた商品点数は約9,000品目に上ります。

売上は創業以来右肩上がりに上昇を続け、2016年に1,000億円を突破しています。

では、N社がここまで成長できた一番の要因は何でしょうか。

N社の売上の内訳をみると、業務用92%、家庭用8%となっています。

つまり、N社が相手にしてきたのは、食品加工工場、焼肉店・牛丼店・カツ丼店・居酒屋チェーンなどの各種飲食店、スーパー、コンビニといった、味に妥協を許さない食のプロたちです。

O氏は、当時まだ誰もやっていなかった、調理法・売り方・原価計算までソリューション提案しながら調味料や調理器具を業務用に販売するという、独自のビジネスモデル、すなわち、隙間を一転突破して来たのが良かったと言います。

この実現のために、商品企画・製造・販売から物流に至るまですべてを自前で行う「製販一貫体制」を敷いたのです。

得意先の業態に応じ求められる知識や提案内容が異なるため、規模拡大に伴い、N社ではその対応として社内組織を専任化させて来ました。

具体的には、・個人経営の得意先を担当する「エリア営業」。・多店舗展開しているスーパーを担当する「特販営業」。・多店舗展開している外食店や宿泊施設、産業給食(病院、老人ホーム)などを担当する「外食特販営業」。・食肉加工場や水産加工場など食品製造業の得意先を担当する「メーカー営業」です。

一方、N社をここまで成長させた原動力は何だったのでしょうか。

月並みですが、やはり、社員力でした。

N社では、「社員が主役になる経営」が重視され、社員に自律的に働いてもらうため、様々な工夫を積み重ねて来ました。

「社内SNS」は、社員の意見交換や情報共有に活用されています。

「社内結婚奨励制度」の結果、社員の4人に1人が社内で結ばれ、家族的社風の原点となりました。

「社員株式保有・会社買戻し制度」は社員に当事者意識を芽生えさせています。

さらに「調味料ブレンダー資格制度」は、研究開発スタッフ一人ひとりがブレンド技術を向上させ、ヒット商品の開発に寄与することを目的に創設されました。

資格は1級から5級までですが、現時点で1級合格者はゼロ、2級は1人、3級は9人というから、相当厳しい試験となっています。

N社は、創業以来、ブレンド調味料の研究開発・生産・販売に取り組み、「味の作曲家」として他社には真似のできない、お客様からの細かな相談・問題に応え続けることで高い評価を得てきました。

N社はブレンド調味料のパイオニア企業という市場(池)のクジラとなっています。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 
西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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