パン屋・ケーキ屋の繁盛支援業 -株式会社愛工舎製作所

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西浦道明のメルマガ 2019年5月

2014年から、当メルマガでは自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。

連載57回目の今回は、埼玉県戸田市で、製パン・製菓機械の製造・販売、開業相談等を行う、株式会社愛工舎製作所(以下、A社)の池クジラぶりを見ていきたい。

A社は、1938年に、現代表取締役会長の牛窪啓詞氏(以下、U氏)の父親が創業したのが始まりで、1940年には日本初の氷削機(かき氷製造機)を製造販売したことで知られている。

U氏は長男ということもあり、家業を継ぐことを意識して、卒業後はすぐにA社に入社している。

そして1974年、創業者である父親が病に倒れたため、急遽、29歳の若さで社長に就任した。

1950年代初頭、食品製造用機械の分野に目を向け、成長が見込まれた洋食に欠かせないパンやケーキ製造用のミキサーの開発・製造に着手したが、創業当初の氷削機製造における鋳造から塗装仕上げ及び販売までの経験が大いに役に立った。

U氏が、社長就任後に取り組んだことが3つある。

1つは、顧客ニーズに合わせた製品開発。

ミキシング技術をコアコンピタンスに、ミキサーをあくまで中心にしてきたが、お客様がどんなニーズを持っているのかを丁寧にヒアリングし、対応できる製品開発を進めた。

製菓・製パンの工程に必要な周辺機器開発にも力を入れ、オーブンやピザ窯、酵母発酵機、生地を丸めたりする専用機なども揃えていった。

これらは、U氏が海外メーカーとの渉外などを務め、一流メーカーとの販売代理店契約を結び、グローバルなビジネス展開を進めてきた賜物でもある。

そして2つ目が、納品後のアフターメンテナンスや修理へのきめ細かな対応。

同業他社の多くでは、アフターフォロー・メンテナンスの意識が低い。

しかし、パン屋さん・ケーキ屋さんは、土日でも当然営業しているため、製品に不都合があったとき、すぐに対応してくれることを望んでいる。

そこでA社は、ローテーションによって土日でも社員が待機しており、お客様からの問い合わせに、直接現場に出向いたり、電話による説明をしている。

これも大きな差別化となっている。

3つ目は、本社ショールーム。

本社内の「Creative Aicoh Plaza」は、食文化に携わる人たちの交流の場づくり、また新技術創発の場づくりの多目的ホールであり、食品製造・製菓製パン製造技術や経営に関するセミナーの開催、実技講習会、研究報告会が行われている。

付属のテストルームでは、導入検討中のお客様が、実際にパンや菓子をミキサーやオーブンなどを使って試作したり、社員と相談しながら、新たなレシピを研究開発する場になっている。

さらにここには、これからパン屋・ケーキ屋を新規開業・独立開業しようとする人たちもやってくる。

A社の社員が開業の相談に乗り、店舗レイアウトも含め、お客様がどうすれば成功できるか、徹底的に考え抜く。

このショールームは、社員教育にも大きく役立っているのだ。

A社は、自社製品の開発・改良。

海外メーカーとの提携等によるトータル提案。

購入後の手厚いメンテナンス・アフターフォロー。

新規開業・独立開業希望者のへの開業支援を行うことで、国内トップのミキサーメーカーへと成長し、多くのお客様から高い評価を得ることに成功した。

A社は、製品販売から開業支援・繁盛支援までトータルサポートする「パン屋さん・ケーキ屋さん繁盛支援業」という市場(池)を築き、その巨大なクジラとなっている。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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