オリジナル会葬礼状をつくる -株式会社マコセエージェンシー

経営

西浦道明のメルマガ 2017年12月

2014年から当メルマガでは、自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。

連載40回目の今回は、鹿児島県鹿児島市でオリジナル会葬礼状の作成を中心に広告代理店業を営む、株式会社マコセエージェンシー(以下、M社)の池クジラぶりを見ていきたい。

M社は、1988年、現社長の五十嵐芳明氏(以下、I氏)が創立した。

現在、鹿児島本社のほか、東京、大阪、熊本にも事務所を構え、社員数も143名に成長。

日本人の年間死亡者数130万人の内10%を超える13.5万件を請け負っており、オリジナル会葬礼状分野では日本一の広告代理店になっている。

葬儀社の遺族アンケートで「いいお別れができた」と回答が寄せられると、クチコミでも広がり、47都道府県約1,500社が採用し、葬儀各社からの問い合わせが後を絶たない。

オリジナル会葬礼状の数は減少したことがなく、毎年増加の一途という成長産業に育っている。

I氏が会葬礼状に着目したのは、葬儀に参列した人々が、お決まりの文言に過ぎないためろくに読みもせず、最寄り駅のごみ箱に捨てていく光景を見たことがきっかけだった。

I氏は、「遺族から故人への『ありがとう』という思いに溢れ、読む人を涙させる礼状制作が必要ではないか」と考えた。

そんな中、自分の母親を引き合いに出して会葬礼状を作ってみた。

そうしたところ、社内の人財・設備だけで作成できると確認できたため、思い切って事業化することを決意した。

そこで、その会葬礼状を、葬儀各社に持ち込んだ。

ところが、お金や時間の面から、なかなか賛同が得られなかった。

ようやく、業界のベンチマーク的存在である、仙台本社の「清月記」の菅原社長に気に入ってもらえ、ここから徐々にではあったが、事業が順調に軌道に乗った。

オリジナル会葬礼状は、葬儀社から依頼を受け遺族への電話取材から始まる。

遺族の悲しみに寄り添い、共に涙を流しながら平均15分程度で聞き取りし、600字程度の原稿にして遺族の了解を得、デザインを決めた上で葬儀各社に校正用データを送る。

ここまでで1時間である。

感動を呼ぶ文章はマニュアル化できるものではない。
文章力の優劣でもない。
身内の死に直面した悲しみの経験を持つ感性の豊かさが重要になる。

幸いなことに、M社では、祖父・祖母の死と向き合った経験を持つ、正に、この職業を天職とする、多くの人財に入社していただけた。

こうした人財に恵まれたのは、M社の本社がある鹿児島には、元々「困った人に寄り添う」という県民性があったことも幸いしたようだ。

M社の「他にないコア能力」は、細心の注意を払って完成した会葬礼状という、宝物のような数々の「作品」を生み出すライターの力なのだ。

例えば、次のような文章である。
―「手を握ってくれないか」。亡くなる前日、二人っきりになった時、夫はそう言いました…

こうした文章は社内で共有することにし、年に4回開催される社内コンペで「アワード」として1位~3位までが選ばれ、表彰されている。

M社は、これまで世の中になかった、故人の生前の人柄や故人と家族のかけがえのない思い出、故人への思いといった『心を伝える』『想いを伝える』、その方だけのオリジナル会葬礼状の制作という池(市場)を築き、その巨大な池クジラとなっている。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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