役員退職金をどう受け取るか!~事業承継を絡めた対策解説

事業承継に有効な自社株対策 事業承継

退職金を支払うことによって会社の法人税が圧縮され、また、受け取る側も所得税が優遇されることは周知のとおりです。

今回は、事業承継に絡み、通常は多額となる先代社長への役員退職金が及ぼす効果について財産という視点から考えてみたいと思います。

1.自社株への影響

まず、自社が大会社の場合、役員退職金を支払うことによって、先代社長が保有する自社株の株価を引き下げることが期待できます。

これは、大会社に適用される類似業種比準価額が、会社の利益が下がることで、その評価額も低くなる仕組みになっているためです。

なお、退職金支給に伴い会社が保険の払い戻しを受けるような場合には、その払い戻しにより計上される利益は、この株価引き下げ効果を薄めることになりますので、あらかじめその額を考慮しておく必要があります。

また、退職金支払いによって株価が引き下がった場合は、後継者へ自社株を移転させることも併せて検討し実行することが重要です。

2.先代社長の財産への影響

一般に、相続対策には、「相続税圧縮」「納税資金対策」「遺産分割対策」の3つがありますが、社長に退職金を支払った場合、1つ目の「相続税圧縮」効果は期待できません。

先代社長が退職金を受け取り、引き下がった株価を使って後継者へ低コストで自社株を移転しますと、社長は自社株分の財産を減らすことはできますが、退職金として受け取った現金が社長の財産となり、効果が減殺されるからです。

しかし、残りの「納税資金対策」と「遺産分割対策」には効果が期待できます。

「納税資金対策」としては、原則、現金一括納付である相続税の納付資金が確保できますし、「遺産分割対策」としては、“財産の分け方”に関する争いを回避する上で、自社株などの事業用資産とは異なり、退職金支給で先代社長が受け取る現金は分けやすい財産と考えられるからです。

ところで、本来、現金で受け取る退職金を、例えば会社が所有している事業用不動産などで受け取ることも、有効な手段となり得ます。

退職金受け取り後は、役員報酬は無し、もしくは激減することになりますが、不動産を「退職金の現物支給」として受け取れば、退職後も、賃料を会社から受け取ることで定期的な収入を確保する、という「キャッシュフロー対策」の1つとなります。

また、この不動産に含み損がありますと退職金の他にその含み損も実現し、さらに法人税が圧縮されることになります。

更に、社長に“万が一”のことがあった場合、この不動産を奥様が相続し賃料を受け取ることによって奥様の生活資金を確保する、ということも可能になります。

このように、退職金を使った対策は、様々な目的を達成する方法として使い勝手が良いものです。

ただし、退職金の金額やその支給時期が適正でないと、そもそも税務上は退職金ではないということになり思わぬ税金が発生することになりますので、事業承継を見据えた計画的かつ慎重な検討が必要です。

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