伊那食品工業の「年輪経営」の本質に触れて

年輪経営の本質 経営

2ヶ月前、筆者は長野県伊那市にある伊那食品工業(以下I社)を訪問しました。

I社は1958年設立された業務用・家庭用寒天の製造販売を手掛けている会社です。
業務用寒天(一般食品・化粧品・医薬・培地用)では国内シェア80%を占めています。

また家庭用寒天はかんてんぱぱブランドで通信販売と北海道から九州に存在する事業所に併設された13のかんてんぱぱショップで販売し、問屋に頼ることなく多くのファンに直接販売しています。

今回I社を訪問した目的は、会員110名のロータリークラブ(RC)で会長をしていた際に、RCの理念である職業奉仕の一貫として、I社の塚越寛会長の経営を学ぶためでした。

塚越会長は1958年に21歳で社長代行として業務不振のI社に出向し、現在では年商175億円(2014年)・利益率も極めて高い会社に成長させています。

離職率ゼロ!その秘訣とは?

現在500名の社員がいますが、離職率ゼロです。
社員の幸せを第一に考えた経営を実践しており、社会貢献活動もきわめて積極的に行っています。「人を大切にする日本的経営」の模範となる会社です。

二時間の塚越会長の話と質疑応答は参加者(全員が中小企業経営者)にとって有意義なものでした。

塚越会長は

「人間の営み、経営は何の為に行っているのか、それは働く人々の幸せの為にある」
「働く人々が幸せになる為には会社は利益をあげなければならないが、利益は手段であって、利益を目的とした経営は間違いである」

という強い信念で語っていました。

塚越会長は利益は人間の体から出る「うんち」である。
健康な体であればきちんと「うんち」が出るように健全な経営をしていれば「利益」は自然と出ると言っています。

そして、自らの野心は

「社員を一人もリストラしない、人のよい商売をしても事業は存続できるという証明をすること」

であると語っていました。

そして実際にこの野心は現実のものとなっています。

年輪経営(ねんりんけいえい)とは?

塚越会長は自らの経営を「年輪経営」と表しています。

当日頂いた会社案内の一部を紹介します。

「私たちの目指す年輪経営が最近注目されるようになってきました。年輪は、たとえ雨が少ない年であっても、寒くても、暑くても、毎年必ず一つ増します。大きくなっても、同じように伸びようとする人間がつくる会社と違い、木は大きくなれば、無理な成長をすることなく、確実に年輪を、一つ一つ増やしていきます。」

急成長をリスクと考え、毎年着実に成長することが経営の王道であると社内外に表明しています。

また、I社は二宮尊徳の「遠きをはかるものは富み、近くをはかる者は貧す」という教えに学び「遠きをはかる」経営を戦略の柱としています。

二宮尊徳のこの言葉は常に長期的視点に立った経営をすることの重要性を気付かせてくれます。

紙面の都合で割愛しますが、塚越会長が実践する事業の永続的発展の基本となる2つの経営基本方針(直接販売と研究開発)は経営戦略論で語ると極めて理にかなっています。

当日、広いかんてんぱぱガーデンを案内してくれた女性社員が、落ちていた枯葉をさりげなく拾いゴミ箱へ入れる仕草、前向き駐車で後ろがきちんと揃っていた社員駐車場が印象に残りました。

また、塚越会長が板書して説明された「忘己利他」つまり「己れを忘れて他を利する心を持つ」という言葉と、「優秀な人」は「優しさに秀いでている人」という言葉は信じてよいということや、にこやかな表情でさりげなく発せられた「経営者には商人としてのセンスが必要」と言う言葉にも感じ入りました。

日本を代表する企業、トヨタの豊田章男社長が「年輪経営」を知り、トヨタの永続の為にグループ各社のトップに「年輪経営」を学ぶよう情報発信していることも読者にお伝えしたいと思います。

アタックスグループでは社員が主体的に経営に参画し「生きがい」と「働きがい」のある会社するための中期経営計画の作成プログラムを提案しています。
ご検討頂ければ幸いです。

年輪経営についてお悩みがある場合は、こちらからご相談いただけます。

筆者紹介

アタックスグループ 代表パートナー公認会計士・税理士 丸山 弘昭
数百社のクライアントについて「経営のドクター」として、経営・税務顧問、経営管理制度の構築・改善、経営戦略・経営計画策定、相続対策・事業承継、M&Aなどを中心としたコンサルティング業務に従事。幅広いネットワークと数多くの実績を生かし、経営者の参謀役、「社長の最良の相談相手」として活躍中。
丸山弘昭の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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