会社標本調査の概要
令和7年4月24日に国税庁から「会社標本調査」の結果が公表されました。
この調査は、日本国内の法人企業の実態を明らかにすることを目的とした調査で、毎年国税庁が実施しています。
今回の調査では、令和5年4月から令和6年3月までに決算を迎える法人企業を対象としており、全体の企業数や黒字法人の割合、主要費目増減などが業種別・資本金別で公表されています。
今回は、この調査結果をもとに日本経済の状況を捉えるとともに、税務調査の動向にも触れながら、最新状況をお届けします。
日本企業の業績状況
年度 | 黒字 | 赤字 | 総数 |
---|---|---|---|
令和5年 | 115万社 | 183万社 | 295万社 |
平成21年 | 71万社 | 190万社 | 261万社 |
令和5年度は全体の39%が黒字法人となっており、過去最大の黒字法人比率となりました。
ちなみに過去最悪の赤字法人数となってしまった年度が、リーマンショックの翌年度である平成21年度であり、黒字法人比率は27%となっています。
過去最悪の申告状況であった平成21年度以降、毎年黒字法人比率が増加し、令和5年度は法人数・黒字法人数ともに過去最大となる結果が公表されました。
営業収入を見てみますと、コロナ禍の令和2年度に一旦減少してしまったものの、リーマンショック以降は連続の増益となっており、昨年度が過去最高の業績となっています。
税務調査の現況
コロナ禍が明けて税務調査の実施件数も増加傾向にあります。
前述のように過去最大の黒字化も影響し、税務調査における所得漏れの指摘も増加傾向にあります。
税務調査による令和5年の所得漏れ指摘額は9,741億円となり、前年の指摘額7,801億円と比較すると前年比124%となっています。
コロナ禍では税務調査の実施が困難であったため、最近になって未調査の年度も含めた実地調査が行われるようになっており、その影響から調査期間が長くなっているように感じます。
税務調査への準備
税務調査時の調査官との会話においても、コロナ禍前の水準まで調査件数を戻すよう求められていることが伺えます。
近年は、コンプライアンスの遵守が企業活動の前提になっていると言っても過言ではありません。
そのため、多額の所得漏れや不正計算を指摘されること自体が、企業の信用を著しく損なう結果に繋がります。
税務調査時に慌てることのないように、月次決算において、これまで以上に精度の高い監査の実施が求められていると言えます。
税務顧問を担当している税理士と日頃から連携を密にし、税務調査時に困ることが無いよう、万全の準備を進めてまいりましょう。
筆者紹介
- アタックス税理士法人 代表社員 税理士 村松 宏昭
- 公認会計士・税理士事務所勤務を経て、アタックスに参画。中小企業から上場会社まで幅広い顧客を担当。お客様中心主義の税務サービスを信条とし、難解な税務をわかりやすく平易な言葉で指導することで高い評価を得ている。経営者に対する財務面からの熱血指導でも定評がある。