はじめに
令和7年12月26日に、令和8年度税制改正大綱が閣議決定されました。
物価上昇に連動して基礎控除等を引き上げる仕組みの創設や、大胆な設備投資の促進に向けた税制措置の創設などが盛り込まれており、現政権の考えを反映した改正内容が多くありました。
その中で、今後の相続税対策を考える上でひときわインパクトの大きなものとして、「賃貸不動産の相続税評価の適正化」という内容が盛り込まれていました。
令和9年以降の相続や贈与から、一定の貸付用不動産の財産評価方法が見直される、というものです。
現時点(2026年1月29日)では法案成立前であるため、具体的な計算方法がどうなるか等の詳細は明らかになっていませんが、今回は取り急ぎ、税制改正大綱で記載されていた内容をもとにお伝えしたいと思います。
※参考:財務省「令和8年度税制改正の大綱が閣議決定されました」
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/20251226taikou.pdf
評価が見直されることになった背景
「アパートを建てて相続税の節税を図る」という対策は、オーソドックスな相続対策の一つとして、以前から一般的に行われてきたものでした。
しかし近年では、高層マンションや不動産小口化商品を活用した相続対策が多く用いられるようになり、実際の取引価格と相続税評価額とのかい離が看過できないほど大きくなってきていました。
国税庁はこうした状況を問題視していたため、令和6年にはマンション一室の評価額を、より実勢価格に近いものとする財産評価ルールの改正が行われました。
しかし、マンション一棟を取得する場合などにはこの改正が影響することはなかったため、依然として取引価格と相続税評価額とのかい離は
大きなままとなっていました。
そのため、いよいよ抜本的な評価方法の見直しがされることになったのです。
改正の内容・時期等
改正の内容
どのような評価方法に見直されるのか、という点ですが、大きく二つに分けて整理できます。
一つは、「相続等の5年前に購入した貸付用不動産」であり、もう一つがいわゆる「不動産小口化商品」と言われるものです。
相続等の5年前に購入した貸付用不動産の評価見直し
被相続人等が課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得又は新築をした一定の貸付用不動産については、課税時期における「通常の取引価額に相当する金額」によって評価することとなります。
ただし、課税上の弊害がない限り、地価の変動等を考慮したうえで、取得価額の80%で評価することができるとされています。
そのため、実務上では「取得価格×地価変動率×80%」で評価することが一般的になるのではないかと考えられます。
現在の通達評価では、土地は主に路線価で評価し、建物は固定資産税評価額をベースに相続税評価額を算定していますが、この方法では実際の取引価格の80%よりも更に低く評価されることが多くありました。
しかし、この見直しにより、相続等から5年以内に購入した賃貸不動産の評価減は20%が上限となるため、相続前に駆け込みで賃貸不動産を購入したとしても、従来ほどの対策効果が期待できなくなると見込まれます。
不動産小口化商品の評価見直し
オフィスビルなどの高額な不動産を小口化し、1口数百万円程度から購入することができるようにした商品を「不動産小口化商品」といいます。
この不動産小口化商品についても、原則として「通常の取引価額に相当する金額」により評価することになります。
ただし、こちらは「5年以内」という期間は設けられていないため、不動産現物を購入するスキームよりも、より厳しい規制が入ることになっています。
改正の時期
いずれも、令和9年1月1日以後の相続・贈与等により取得をする財産の評価に適用されることになります。
ただし、「相続等の5年前に購入した貸付用不動産の評価改正」については、この改正を通達に定める日までに、被相続人等がその所有する土地(同日の5年前から所有しているものに限る。)に、新築した家屋(同日において建築中のものを含む。)には適用しないこととされています。
例えば、古くから所有する土地のうえに、今現在、賃貸アパートを建築中ということであれば、この経過措置により改正の対象外になります。
最後に

この評価方法の見直しは、不動産を利用した相続対策に大きな影響を与えることになります。
しかし、対策の効果そのものが全く無くなってしまうわけではありませんし、取得から5年を経過していれば、従来通りの評価をすることもできます。
相続対策を目的とした安易な不動産購入には注意が必要ですが、今回の改正も踏まえて十分に検討したうえであれば、今後も不動産を活用した相続対策は、依然として有効であると考えられます。
アタックス税理士法人では、相続対策に関するご相談を承っております。ご相談等がございましたら、こちらからお気軽にお問い合わせください。
筆者紹介

- アタックス税理士法人 代表社員 税理士 有賀 雄一
- 名古屋市立大学卒業後、金融機関、個人会計事務所勤務を経て、2013年アタックス税理士法人入社。主に中小企業から中堅企業の税務顧問を担当し、組織再編支援や相続対策、事業承継対策支援まで幅広く対応する総合的な税務コンサルタント。誠実な対応を心がけ、どんなことでも相談できる関係づくりを心掛けている。
