「親子で大喧嘩してしまい、親父の会社を継ぐ事が難しいかもしれません…」
アタックス社長塾では日々、後継者の方々をご支援する中で、このようなお話を伺う機会があります。
2024年度の帝国データバンク調査によると、事業承継の内訳は同族承継が32.2%、非血縁関係(役員や社員など)による承継が36.4%となっています。
このことから、同族内での事業承継よりもむしろ社内の役員や社員にバトンを渡すケースの方が多くなっていることがわかります。
これはなぜだと思いますか?
※出典:帝国データバンク 全国「後継者不在率」動向調査(2024年)
https://www.tdb.co.jp/report/economic/succession2024/
親子間で価値観がぶつかる現実
私がこれまで多くの同族経営者と接してきた中で印象的だったのは、親子間における価値観のズレでした。
例えば、
あるいは、
また、トップダウン型 vs ボトムアップ型の経営スタイルの違いも、衝突の一因です。
実際にあったケースでは、子が現場スタッフと一緒に改善プロジェクトを立ち上げたところ、親から「現場の意見に左右されてどうする」と叱責され、プロジェクトも思うように進まず、子そして社員もモチベーションを失った…という事例もあります。
親としては「まだまだ子に教えなければならないことがある」と思っている一方で、子は「もう任せてほしい」「自分のやり方で挑戦したい」と考えています。
こうした価値観のズレが解消されないまま、承継の話が進むと、後継者の立場からすると「親から口出しばかりされてやる気をなくした」、現経営者の立場では「子に経営はまだ無理だ」など、互いに不信感を抱くようになってしまうのです。
事業も家庭も壊さないためにできること
事業承継における親子対立を防ぐには、「思いの言語化」が何よりも大切です。
「現社長は、何を大切にして事業を育ててきたのか」
「後継者は、何を受け継ぎ、どんな未来を描いているのか」
これらの違いをしっかりと言葉にし、お互いに理解し合うことが、衝突を避ける第一歩となります。
とはいえ、親子だからこそ、面と向かって素直に思いを伝えるのが難しいこともあります。
そうした場合は、第三者に入ってもらい、冷静に話し合える場を設けることが有効であり、感情的な衝突を避け、建設的な対話へと繋げることができます。
加えて、以下のような工夫も有効です。
中期的な役割分担の設計
事業承継は、「明日から社長交代」ではなく、数年かけて段階的に進めることが重要です。
例えば、営業部門からはじめて、財務、人事と徐々に責任範囲を広げていくことで、後継者は多様な経験を積み、現経営者との間で認識やビジョンを共有し、納得感を高めることができます。
また、社員も後継者の能力や手腕を理解する機会が増え、信頼関係を構築できるため、スムーズな承継を実現できます。
親族間でのミーティングの実施
経営会議とは別に、親族・家族だけで集まり、事業や相続について定期的に対話する機会を設けることも有効です。
ここでは「正解を出す」のではなく、「互いの価値観の違いを知る」ことが目的です。
事業承継は単なる「引き継ぎ」ではなく、自社に対する想いと信頼を繋ぐリレーなのです。
あなたは思いを言葉にできていますか?
「事業を守りたい」その気持ちは、親も子も同じですが、 伝えていなければ、伝わっていないのと同じです。
大切なのは、「どんな想いで、誰に、どう継がせたいのか」
あなたは、それを言葉にできていますか?
アタックスグループでは、「強くて愛される会社」の理念を体系的に学びつつ、自社の思いを言語化し「価値創造計画」を策定することを支援する経営者育成プログラム「アタックス社長塾」を開講しています。
一人でも多くの「強くて愛される会社」を志す経営者を増やしていくことが、我々アタックスグループの使命であると考えています。
ご関心のある方は、ホームページをご高覧ください。
筆者紹介
- 株式会社アタックス 社長塾推進室
- 五十嵐 順子