NPO法人RE機構~障がい者の就労を支援する

坂本光司の快進撃企業レポート 経営

東京の東武スカイツリーラインの曳舟駅を下車し、そこから、徒歩2分程の場所に「墨田区京島イーストコア曳舟一番館」という高層マンションがあります。

その1階は、事務所用フロアで、その1室に、NPO法人RE機構の事務所及び常設商品展示場があります。

RE機構の主たる事業は、働きたいという意思はあれど、様々な理由で、働く場や働き方が少ない障がいのある人々を支援する事業です。

具体的に言えば、ワイン等に使われているコルク栓を収集し、それを利活用したアイデア商品を企画開発し、その製造を、全国各地の望む障がい者施設に発注し、製造していただき、RE機構が外販するといったビジネスです。

これをビジネスの流れでいえば、RE機構が、全国のホテルやレストランなどから、

  1. コルクを回収
  2. RE機構でコルクを利活用したアイデア商品の企画・開発
  3. 仕様書は、コルクを希望する全国の障がい者施設に持ち込み洗浄や選別・加工(あるいは、コルク工場でコルクのかたまりやコルクシート等にリサイクルしたものを障がい者施設に持ち込み、加工)
  4. 施設等で製造したコルク商品をRE機構に納入
  5. RE機構がそれを全国各地に販売

といった流れです。

ちなみに、社名はリデュース・リユース・リサイクルの3つのREに由来しています。RE機構が現在、製造販売している商品は、大きく2つの種類があります。

1つは、回収したコルク栓を洗浄し、そのコルクを、ほぼそのまま利活用し、組み合わせしたり、加工し、新たなアイデア商品をつくるといった「リユース商品」です。

そして、もう1つは、回収したコルクを機械等で粉砕し、再生し、そのコルク材を利活用した新たな商品をつくるといった「リサイクル商品」です。

これまでRE機構で開発し、製造・販売しているリユース商品でいえば「スマホスタンド」「フォトフレーム」「文房具入れケース」「植木鉢カバー」そして「コルクのハンコ」等です。

リサイクル商品でいえば、「カレンダー」「街路樹のPOP」「コルクの舗装」「鍋敷き各種」そして「画鋲」等です。

ちなみに、私が特に気に入っている商品は「画鋲」です。仕事柄、私の書斎は、会議通知や講演依頼書、私のコメントが掲載された新聞や雑誌の記事などを壁一面に画鋲で張り付けています。

その紙等に身体が触れたり、風等で、画鋲が外れてしまうことが良くあります。それを知らず、裸足で画鋲を踏んでしまい、何回も痛い思いをしていました。

RE機構の画鋲は、それを解決してくれました。一般の画鋲の丸い部分を粉砕したコルク栓で固めてあるため、画鋲の針が必ず下を向いてくれるのです。

同法人の設立は、今から22年前の2004年ですが、その10年ほど前から、現理事長の清野眞理恵さんたちが中心となり、ボランティア的に事業を立ち上げていました。

代表の清野さんは、30代前半までは、キャリアウーマンの先頭を走るような存在で、女性だけの広告会社を立ち上げたり、女性向けの製品開発を手掛けたりと、活躍をされていました。

しかしながら、出産のストレス等から多発性硬化症という難病を発症し、入退院の繰り返しを余儀なくされ、以前のように働くことが困難になってしまったのです。

清野さんは、自身の難病がきっかけで、働きたくても働く場所や働く条件が合わない障がい者をはじめ弱い立場の人を、支援する仕事をすることを、これからの人生の目的・目標にしたのでした。

創業当初は、別の事業を行っていましたが、現在のコルク事業に転換をしました。

清野さんたちが、数ある原料の中から、コルクに注目したのは、5つの理由がありました。

第1は、当時、ペットボトルのリサイクル率は85%以上、紙のリサイクル率は65%となっていましたが、コルクのリサイクル率は、1%にもはるか満たない未開拓・未利用原料だったこと。

第2は、コルクは、軽くて弾力性があり、断熱性、防音性が優れ、事実、スペースシャトルなどの断熱材としても採用され、安全性が高い原料であること。

第3は、コルク原料のコルク樫樹皮は、9年毎に再生し、約200年の樹齢の中で、繰り返し採取が可能であり、枯渇しない理想的な原料であり、リユースやリサイクルといった地球環境の保全、CO²の削減、地球資源の再生への貢献になると考えたこと。

第4は、コルクなら、障がい者にとっても馴染みのあるものであり、これを利活用した商品作りなら、障がい者も興味を持って仕事に取り組んでくれるのではないかと考えたこと。

そして、第5の理由は、このことが最も重要でしたが、老舗の国産コルクメーカー永瀬工業が、清野さんたちの趣旨に賛同し、正に、エンジェルの役割を果たしてくれたことです。

とはいえ、今日までの道のりは決して順風満帆ではありませんでした。

コルク栓の回収や運搬でいえば、当時は、使い捨てが一般的であり、「欲しければ、ホテルやレストランまで取りに来てほしい」という企業が大半でした。

このため、清野さんたちは、有名ホテルやレストランに大きな布袋をもって行き、回収した大きな布袋を担いで、電車で事務所に持ち帰るという日々でした。

このため何度か、心無い人々から、嫌な目で見られたり、「臭いから、あっちへ行け」とも言われたそうです。

時代は変わり、また清野さんたちの活動も、次第に社会の評価を得ていきました。今では都内を中心として帝国ホテルやハイアットリージェンシーホテル等の著名なホテルやレストランも全面的に支援してくれています。

また、物流においても、RE機構の趣旨に賛同してくれ、ワインの常温保管・常温輸送を行っている物流会社「リファーシステムジャパン」が、配送した後の帰りの便でコルクを回収し運搬することを全面的に支援してくれているのです。

さらに、近年では、西武信用金庫等がイベントや販売先の紹介等を通じ販売支援をしているほか、墨田区はもとより、荒川区・葛飾区なども支援の手を差し伸べています。

一人の女性の命がけの取り組みが、多くの企業や人々の心を動かし、障がい者の働く喜び・働く幸せが実現しているのです。

 

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筆者紹介

坂本光司

アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長 坂本 光司(さかもとこうじ)
1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。

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