中小企業の成長に必要な「聞ける相手」情報格差で損をしないために!

中小企業の成長に必要な「聞ける相手」情報格差で損をしないために! 経営

2025年度の中小企業白書では、中小企業が重視する経営課題の上位4つとして、以下の項目が挙げられています。

①人材確保(中堅規模:22.3%、小規模:23%)
②省力化・生産性向上(中堅規模:20.9%、小規模:12.7%)
③受注・販売の拡大(中堅規模:14.3%、小規模:15.3%)
④事業承継(中堅規模:14.1%、小規模:15.7%)

参照:中小企業庁「2025年版中小企業白書」
P. Ⅰ-46 第1-1-21図 最も重視する経営課題(企業規模別)

いずれも一筋縄ではいかない難しいテーマばかりですが、こうした課題の解決が進まない背景には、「情報格差」の存在が大きく影響していると考えられます。

そこで今回は、これらの経営課題に対する打ち手の一つであるM&Aを例に挙げて解説したいと思います。

M&Aから見える情報格差の実態

中小企業白書でも、企業成長に向けた重要な取り組みとしてM&A(買い)が挙げられていますが、売上規模別にM&Aを実施したことがある企業の割合を見てみると

【10億未満の会社】:6.1%
【10億円以上50億円未満の会社】:20.1%
【50億円以上100億円未満の会社】:30.4%
【100億以上の会社】:44.9%

となっており、売上規模が小さい企業ほど、M&Aへの取り組みは相対的に限定的であることが分かります。

参照:中小企業庁「2025年版中小企業白書」
Ⅱ-180 第2-2-56図 M&Aの実施回数(スケール別)

M&A市場が活況で、売り手優位の状況が続く中、買い手側が「ぜひ買いたい」と思える会社に出会うことは、決して容易ではありません。

売りたい会社と買いたい会社をつなぐビジネスとして、M&A仲介会社という業種がありますが、業績を見ると経常利益率が30%を超えるM&A仲介会社も存在します。

もちろん、企業同士をつなぐだけでなく、交渉やアドバイザリー業務も行っており、情報がいかに価値を持っているかを象徴する一例と言えます。

中小企業は、大企業に比べ資本力に大きな差があることに加え、売り手市場の中で、買いたい企業の情報にリーチさえ出来ないという情報格差が存在していることも要因の一つです。

このような情報格差は、人材採用に関わる人材エージェント業界や、省力化・生産性向上を支援するDXコンサルティング業界においても、縮まるどころかむしろ拡大しているように感じています。

資本力が無いからといって、重要な情報にリーチすることを諦め、自社が取り組み易いことだけに注力していては、経営改善は成しえません。

情報格差を埋めるカギは「聞ける相手」

経営を取り巻く情報の幅や深さが拡大する中で、自力での情報取得にはどうしても限界があります。

この情報格差を埋めるうえで、最も重要なのは「聞ける相手」の存在です。

先ほどのM&Aを例に挙げると、買いたい会社に出会うという本質的な情報以外にも、LOI(基本合意書)、SPA(株式譲渡契約)、PMI(買収後の統合プロセス)、COC(資本拘束条項)、DD(デューデリジェンス)、EV(企業価値)といった聞きなれない横文字の専門用語が多くあります。

これらは、経験の無い人にとって、一定のハードルとなっています。

そのなかで、取り組みの全体像や形式的な情報、さらには具体的なサービス提供者について理解を深めるうえで、生成AI(ChatGPT等)や顧問税理士、金融機関は有用な「聞ける相手」となります。

もちろん、生成AIが完全な情報を返してくれる保証があるわけではないですが、概観や大枠の進め方を理解するうえでは、有用な手段となります。

顧問税理士や金融機関は、担当者自身が情報を持っていないとしても、専門部署や提携先につないでもらうことで、一定の情報を得ることができます。

また、領域が絞られている場合は、大学(産学連携)や公的機関(商工会議所)も、有力な情報源の一つとして挙げられます。そのうえで、本格的な取り組みを進める際には、やはり「餅は餅屋」です。

具体的な生の情報を持つサービス提供者にたどり着いた後は、関係構築を築きながら、本質的な情報格差を埋めていくことが重要です。

まとめ

まとめ

過去には、税理士は税務申告、金融機関は融資が中心的な役割と価値を担っていましたが、時代が進むにつれて、情報提供の役割がますます重要になっています。

今一度、身近な「聞ける相手」に対して、自社の抱える課題や、やりたい事について話を聞いてみる機会を持ってみてはいかがでしょうか。

経営課題の解決に向けた最初の一歩は、適切な情報へのアクセスと、そのための対話から始まります。

【無料】経営に役立つ資料はこちら

経営計画推進を読む

筆者紹介

株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 代表取締役社長 中小企業診断士 平井 啓介
会計を中心とした業務系システムを扱う大手システムベンダーを経て、アタックスに参画。システムエンジニア時代は、会計システムを中心に、中堅中小企業~上場企業まで業種を問わず、約60社の業務改革を支援。経営課題から逆算したシステム企画、徹底した業務プロセスの掌握・分析を得意とし、システム企画~導入・運用支援までの総合的なプロジェクトマネジメントを推進。アタックス参画後は、システムエンジニア時代に得たファシリテーションスキル、多業種に渡る業務知識を応用し、経営計画策定サポート、業務プロセス改革サポート(BPR)、PMIサポート(M&A後の経営統合支援)、M&Aサポートに従事。近年は、中堅中小企業流のデータサイエンス(経営可視化)によるDX支援にも注力している。特に「計画策定」「各種制度構築」後の現場に入り込んだ「実行推進支援」に強みを持つ。

タイトルとURLをコピーしました