「稼ぐ力」をどう高めるか!「勝てる市場」の見つけ方

「稼ぐ力」をどう高めるか!~「勝てる市場」の見つけ方 経営

中小企業に「稼ぐ力」が求められる理由

2026年度の中小企業白書では、以下のように提言されています。

短期的な損益を追うのではなく、
長期的な視点で事業・組織構造を再構築していく
「戦略」を持った経営に転換し、「稼ぐ力」を高め、
「強い中小企業」へと成長することが重要

※出典:経済産業省「2026年版 中小企業白書・小規模企業白書の概要」
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2026/PDF/2026gaiyou.pdf

なぜ今、中小企業に「稼ぐ力」が求められているのでしょうか。その背景には、賃上げと労働人口の減少という、大きな2つの課題があります。

日本経済の成長には、持続的な賃上げが欠かせません。

一方で、日本の雇用の7割を担う中小企業では、労働分配率が80%程度に達しており、賃上げに充てられる余力には限りがあります。

その結果、大企業との賃上げ水準にも格差が生じています。

さらに、今後は労働人口の減少も見込まれており、中小企業を取り巻く経営環境は、ますます厳しくなることが予想されます。

だからこそ中小企業には、「利益を確保する」だけではなく、「稼ぐ力そのものを高める」ことが求められています。

「稼ぐ力」を強化して賃上げ原資を確保し、持続的な賃上げを実現していくことが重要なのです。

池クジラ戦略で中小企業の「勝てる市場」を見つける

それでは、中小企業の「稼ぐ力」を強化するためには、どうすればよいのでしょうか?

その答えの一つが、「池クジラ戦略」です。

「池クジラ戦略」とは、ニッチトップ戦略の一つで、自社が勝てる「池(マーケット・セグメント)」を設計・創出し、その池の中でマーケット・リーダー(クジラ)になることを目指す戦略です。

自社がこだわるマーケットで、顧客に選ばれる高い提供価値を実現できれば、WTP(Willingness To Pay=お客様が喜んで対価を支払う状態)を高めることができ、長期的な安定利益につながります。

とはいえ、自社が勝てる「池」がどこにあるのか、その池でマーケット・リーダーになるにはどうすればよいのか。

検討すべきことは多く、決して簡単ではありません。

そこで今回は、池クジラ戦略を検討するための現状分析の方法として、「戦略マップ」をご紹介します。

戦略マップで自社の強み・弱みを見える化する

「戦略マップ」とは、自社の売上・利益をセグメントに分け、強いところと弱いところの要因を分析し、次の一手につなげるための管理会計のツールです。

作り方はシンプルです。自社の売上を、縦軸・横軸の二軸で分類します。縦軸は商品・サービスが持つ機能、横軸は得意先が属する市場です。

最初は単なる「商品×顧客」の表に見えますが、ここで一工夫します。

「自社の商品・サービスが、どんな価値を、どの市場に届けているのか」

という視点で見直してみましょう。

例えば、当社の「税務顧問」も、単なる税務手続きの代行ではなく、「専門知識で顧客の判断を支えるサービス」と捉え直すと、税務顧問以外の業務も同じ枠でくくれることに気づきます。

見直す手順は、

売上規模や地域、スポットか継続かといった切り口で、属性別に分類していきます。

実はこの「分類の仕方」こそが、会社の戦略そのものです。

何に価値を感じ、誰を顧客とみなすかは、「誰に、何を、どう提供するか」という事業ドメインに直結しているからです。

こうして、単なる「商品・顧客」の表が、提供価値と市場で構成された「戦略マップ」へと生まれ変わります。

では、できあがった戦略マップから、何が見えてくるのでしょうか。例えば、次のようなことが見えてきます。

  • 提供価値と提供顧客にギャップがないか(過剰品質や機会ロスがないか)
  • 提供価値にヌケモレがないか(もっと他のサービスが提供できないか)
  • 提供顧客にヌケモレがないか(もっと他の顧客にサービスを提供できないか)

さらに、この売上のマトリックスに、粗利益や営業利益、得意先件数、顧客数・単価、インストアシェアなどの情報を重ねてみます。

すると、それぞれのセグメントが、

「成長しているのか、衰退しているのか」=成長性
「強いのか、弱いのか」=収益性

という二つの視点から把握できるようになります。

そして、そこから「どこに経営資源を集中するのか」「どこを伸ばすのか」「何を見直すのか」といった次の一手を検討できるようになるのです。

戦略マップから「稼ぐ力」を高める経営戦略へ

戦略マップから「稼ぐ力」を高める経営戦略へ

実際にご支援した、ある建設資材の卸売業A社の事例をご紹介します。

A社は、主力と位置づけていた「大口ゼネコン向け」の売上規模が大きいことから、そこに経営資源を集中してきました。

しかし、戦略マップを作成し、粗利益率まで含めて分析したところ、実際に高収益を生んでいたのは、取引額こそ小さいものの、「地場の工務店向けにきめ細かな納期対応をする」というセグメントであることが判明したのです。

A社では、この結果を踏まえて、地場の工務店向けの体制強化に経営資源を重点的に配置し、対応スピードをさらに磨き込みました。

その結果、翌期には全社の営業利益率を大きく改善することができました。

「自社のSWOT(強み・弱み・機会・脅威)がよくわからない」というお悩みを伺うことも少なくありません。

しかし、戦略マップを活用すれば、売上や利益などの実績データをもとに、自社のSWOTを客観的に把握することができます。

そのうえで、自社がこだわるべき市場と、そこで求められる価値を見極め、自社のギャップを埋めるための具体的な戦略を描いていきます。

「稼ぐ力」を高める第一歩は、自社の強み・弱みを正しく知ることです。

まずは戦略マップで自社のSWOTを明確にし、池クジラ戦略、そして中期経営計画へとつなげていきましょう。

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筆者紹介

池ヶ谷穣次

株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング
代表取締役会長 中小企業診断士 MBA 池ヶ谷 穣次
アタックス入社後、中堅・ベンチャー企業の業績管理制度構築や業務改善、経営シミュレーション等の幅広い分野で貢献。 システムエンジニア時代に得たシステム思考を応用し、経営者・経理責任者の参謀役として活躍中。

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