変わる社会・若者の企業観

坂本光司の快進撃企業レポート 経営

近年、社会における企業観に少しずつではありますが、新たな流れが生まれています。具体的には、「いい会社」とは何かを判断する物差しが変わりつつあるのです。

これまでの会社の規模が大きいとか、上場しているとか、業績が高いとか、給料や休みが多いとかではなくて、その会社の社会的な価値への関心が高まってきています。

スイス・ジュネーブに本拠を置く非営利財団、世界経済フォーラムが、毎年1月にスイス東部の保養地ダボスで開催するダボス会議でも、これまで以上に、会社の存在価値、社会価値が重視されてきています。

少し前の話にはなりますが、2019年8月には、米国の経営者団体ビジネス・ラウンドテーブルで、行きすぎた株主資本主義から、顧客、従業員、サプライヤー、地域社会、株主といったステークホルダーへのコミットメントを高めていく宣言も行われました。

最近は、それでも傾向が変わってきてはいますが、数年前までは、講演などで、私が人を大切にする経営について話をしても、私の話を理解してくれる人は少数派でした。

しかし、近年は、参加者の姿勢にも変化が見えます。これは実務を担う企業も同様です。

人を大切にする経営を志向する企業からは、どのように経営を進めたらよいのか、具体的には、どの観点に着目したほうがよいのかといった質問を受けることが増えました。

また、そういった質問は、日本企業に限ったことでなく、海外の企業からも寄せられています。

人を大切にする経営は、なにも日本に限定された話ではありません。幸せになりたいという想いは、世界共通です。

私のところには、国内企業はもとより、中国、タイ、ベトナムなどの海外企業からも、人を大切にする経営についての相談が多数寄せられます。

社会の企業観の変化と同じく、若者の企業観も変化してきているように思います。情報がオープンになり、誰もがたくさんの情報を得ることができるようになりました。

ある程度、豊かさを享受できるようになる中で、精神的な幸せや充足度を大切にする方向に変わってきているように思います。

また、これまで学生が入社したい企業を選ぶ理由は、主にブランドや規模、給与などといった表面的な部分に着目したものでした。

しかし、企業の過度な規模や業績を追求する姿は、学生のみならず、その家族の企業観に対して、大きな変化を与えています。つまり、かつてのような企業のハード面に対する関心が薄れてきているのです。

いい会社とは、人を大切にする会社です。人を経営や企業の業績、効果・効率を高めるための道具と見るのではなく、目的と見ることが重要です。人を幸せにするためには、正しい経営が必要です。

人の幸せをとことん考え抜き、個人が幸せを感じる働き方を工夫することが求められています。働く人が幸せを感じる働き方や生き方を実現していくときに、企業にはまだまだできることがあると思っています。

 

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筆者紹介

坂本光司

アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長 坂本 光司(さかもとこうじ)
1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。

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