株式会社東条設計~義理人情・先義後利を大切にする九州一の建築設計会社

坂本光司の快進撃企業レポート 経営

筆者は、これまで、全国各地の様々な業種・業態の会社8500社以上を訪問調査してきましたが、真にいい会社は「電話1本」でも、凡そ見当がつくと言うのが偽らざる実感です。

今や、メールやライン等が、コミュニケーションの常識的なツールになっていますが、筆者は、初めて訪問調査に行く会社へのアポイントメントは、必ず、訪問調査先の固定電話にかけることにしています。

それは、誰が最初に電話をとるかわかりませんが、固定電話に出られた方を通じて、その会社の一面、つまり、全社員が高い当事者意識をもって、前向きに仕事に取り組んでいるか否かが、垣間見れるからです。

一方、講演会の会場等で、「機会があれば、是非一度当社を訪問してください…」と、嘆願され、その後に固定電話に掛けたにもかかわらず、電話に出た社員の対応は、ひどくぞんざいであったことも少なからずあります。

訪問するつもりで、電話をしたにもかかわらず、気持ちが萎えてしまい、訪問するのをやめてしまったというケースも少なからずあります。

一方、電話対応がきっかけとなり、電話で済まそうと思った要件を訪問に変更したとか、大きな商談が成約したとかといった話は、山ほど聞きます。

今回、紹介する鹿児島市に本社のある株式会社東条設計の電話対応もそうです。その事がきっかけで、もうかれこれ10年以上、親しくお付き合いしている企業です。

東条設計の現会長である東條正博さんとの最初の出会いは、筆者が鹿児島県のある金融機関主催の講演会に招かれ、お話をさせていただいた時です。

東條会長は、その会の役員であったこともあり、講演の始まる前、講師控室で、筆者の接待役を務めてくれていました。

経営の考え方・進め方ばかりか、一人の人間としての生き方・働き方等において、共感、共鳴することが多く、「一度、ゆっくり会社に訪問してくれませんか…」と、東條会長から言われました。

筆者は2ヶ月後に、再び別用で、鹿児島市に行く予定があったので、「その折、是非訪問させてください…」と話しました。

それから、1ヶ月ほど経過し、再び、鹿児島市に出張する詳細日程が固まってきたので、東條会長の携帯電話やメールアドレスとはわかっていたのですが、あえて、東条設計の固定電話に電話をしたのです。

電話に出られた女性社員は、「東条設計の○○と申します…」と言ったので、筆者は、所属と名前を告げました。

すると、その女性は

「あの坂本先生ですか…、先月は、わざわざ鹿児島まで講演に来て下さり、弊社の東條とも親しくご歓談をして下さり、ありがとうございました。

講演会の翌朝、東條から、坂本先生の話をいっぱいお聞きしました。近く訪問して下さる話も伺っており、社員一同楽しみにしていました…。

今、東条は、あいにく工事現場に出かけて不在ですが、直ぐに連絡が取れますので、折り返し電話をさせます…」

といったのです。

それから、5分もしないうち、東條会長さんから、私の携帯電話に電話がかかってきました。

訪問の日程を話した後、東條会長さんに筆者は話しました。「電話をとった女性のお名前は、余りの感動で忘れてしまいましたが、その対応はお見事でした。会社に帰ったら、ほめたたえてあげてください…」と。

こうした東条設計の経営姿勢は、全ての社員と支える家族に対してはもとより、全ての顧客や協力会社、さらには、地域社会や地域住民に対しても、変わらず貫かれているのです。

良く業種の限界等を口実にやらない・できないと言う会社が多々ありますが、東条設計は、対個人サービス会社ではなく、れっきとした建築設計会社であるということを忘れてはなりません。

東条設計は建築設計会社としては、後発型の会社ですが、東條会長やスタッフの苦労と努力が報われ、今や、鹿児島県内だけでなく九州7県でも最大の会社に成長発展しています。

その最大要因は「人づくりを最優先した経営」「風通しの良い経営」「義理人情・先義後利の経営」「徹底したクライアントファースト経営」「社員とその家族を何よりも大切にした経営」「顧客づくり経営ではなくファンづくり経営」そして「お天道様に顔向けのできる5方良しの経営」を、創業以来、全社一丸となって愚直一途に取り組んできた結果と思います。

電話に出てくれた女性は、「たまたま」ではなかったのです。このことは、後日、本社を訪問した時、社内に流れている空気感でわかりました。

東条設計には、こうした経営に賛同した、心優しい優秀なスタッフが、全国各地から集り・定着し育つ会社なのです。

東条設計の創業者は現会長の東條正博さんで、今から50年前の1975年、県内外の数か所のサラリーマン生活を終え、個人事務所としてスタートし、現在のスタッフは53名です。

驚かされるのはそのスタッフで、内訳は、一級建築士が23名、構造設計一級者が3名、設備設計一級建築士が2名、二級建築士が8名、他にインテリアコーディネーター等、建築設計関連の有資格者が数多く在籍しています。

これだけ専門性の高いスタッフが多数おり、建築設計にかかわる業務の大半を1社で、対応することのできる会社は、地方では稀有な存在と思います。

ですから、おのずと、建築設計・インテリア設計・構造計算・構造設計・現場監理・既存建物調査、リニューアル、耐震設計、耐震改修等、業務範囲は広く、まさにワンストップ会社なのです。

その結果、これまで関わった施設も医療施設、福祉施設、教育研究施設、商業施設・生産施設、流通施設、ホテル、レジャー施設、さらには居住施設等、あらゆる業種に及んでいるのです。

詳細を述べる紙面的余裕はなくなってしまいましたが、筆者には「東条設計」という会社は、東條さんたちが長年かけ手づくりで創り上げた最高の傑作品のように思えてなりません。

 

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筆者紹介

坂本光司

アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長 坂本 光司(さかもとこうじ)
1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。

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