「売上高100億円」と聞いて、どのような印象を持たれますか?
「目指すには遠い」
「売上が小さくても良い会社はたくさんある」
もちろん売上規模が小さくとも、リーダーシップ溢れる社長のもと、ニッチトップで、強くて愛される、素晴らしい会社は多くあります。
しかし、昨年から国を挙げてこの数字に注目が集まっています。
国が動き出した「中堅企業への成長支援」
政府は、中小企業支援から中堅企業(あるいは中堅企業を目指す中小企業)への支援に重きを置く方針に転換しました。
2025年2月、経済産業省は「中堅企業成長ビジョン」を策定。そして、この流れの中で生まれた象徴的な施策が「100億宣言」です。
「100億宣言」とは何か?
売上高10億円以上100億円未満の中小企業が、売上高100億円の達成を目標として対外的に宣言する制度です。
2025年5月に申請受付が始まり、執筆時点で2,686社が宣言を公表しています。
宣言企業には、「中小企業成長加速化補助金」(最大5億円)や、経営強化税制の拡充措置の活用、といった支援が用意されています。
参考:中小企業庁「100億宣言」
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/100oku/index.html
なぜ「100億円」なのか
筆者が考える100億円を目指す意義は、「高い目標を目指すことで起きるブレイクスルー」と「企業としての生き残り」だと捉えています。
後者は例えば人財の採用力の差、生産能力による価格競争力の差、といったものへの対応がイメージしやすいのではないでしょうか。
売上10億・30億・50億で直面する「壁」とは?
売上100億を目指そうとなった時に、売上10億・30億・50億のそれぞれには、大きな壁があると実感しています。
筆者がこれまで携わってきた経営支援を踏まえて、売上規模ごとに直面しやすい課題(壁)と、その解決事例をリストアップしたところ全部で70項目に及びました。
本稿では、これらの中から、実際の事例をもとに、いくつかの項目をご紹介します。
売上10億→30億への壁【例:工事業】
メイン事業の成長鈍化からの脱皮
●問題点
社長のトップセールスだけでは、売上の限界が訪れていた。
●解決事例
営業の組織化と型づくりを進め、個々の営業力は社長に及ばないながらも、社長以外でも安定して受注できる体制を構築した。
具体的には、既存顧客の深耕を担う営業チームの編成や、隣接領域(例:メンテナンス・改修工事等)への横展開を推進。
これにより、社長への依存度を下げる形で複数の受注ルートを確立した。
何でどれだけ儲かっているかの視える化
●問題点
売上を重視するあまり、営業利益率は赤字と黒字を繰り返していた。
●解決事例
実行予算管理を導入し、案件別の利益が視える化され、期末の利益見込みも管理できるようになった。
その結果、値決めや工程管理が改善され、営業利益率が3ヶ年平均で5%台になるとともに、どこまで攻めた見積りを出せるかが明確になったことで、売上も上昇した。
売上30億→50億への壁【例:製造業】
バリューチェーンの川上・川下への拡大
●問題点
下請け的な受注生産が中心で、利益率が低く価格決定権も弱い状態が続いていた。
技術力はあるにもかかわらず、顧客から見ると「代替可能な加工先」の一つに留まっていた。
●解決事例
川上では、設計・開発段階から顧客と共同で関わる提案型営業へ転換した。
その結果、取引先にとって「外せない存在」となり、価格交渉力が向上し、売上と利益率の両方が改善した。
部門キーマンの育成
●問題点
発生した問題には各部門が対応できていたものの、会社や部門をより良くするための提案は、部門長からは出てこず、常に社長発信で経営改善を進める状態が続いていた。
●解決事例
次世代キーマンを中心に選抜した中期経営計画策定プロジェクトを立ち上げた。
プロジェクトでは、部門を超えた会社全体の分析を行い、会社の強み、弱み、機会、脅威を深く理解したうえで、改善施策を立案する体験を通じて、次世代キーマンの視野が広がり、視座が向上した。
売上50億→100億への壁【例:小売業】
M&Aによる非連続な成長
●問題点
既存事業の成長だけでは、年商100億円達成までに時間がかかりすぎる状況だった。
一方で、M&Aの経験が社内になく、「どんな会社を買えばよいか」「買った後にどうするか」という判断軸も存在していなかった。
●解決事例
まず自社の成長戦略から逆算して、「どの領域・エリア・機能を補完するためのM&Aか」という買収基準を明確にした。
さらに、自社のヒトとカネのリソースを整理し、「買って終わり」ではなく、買収のシナジーを実現するまで一気通貫で計画を立てた。
その結果、既存事業との相乗効果が生まれ、売上の非連続な成長を実現した。
会社の存在意義、使命、ありたい姿の明確化と浸透
●問題点
事業や拠点が増える中で、「何のためにこの会社は存在するのか」が曖昧になり、社員の判断基準がバラバラになっていた。
さらに、採用時に「うちの会社はこういう会社です」と語れる軸がなく、組織の求心力が弱まっていた。
●解決事例
経営者自身が原体験や志を言語化し、ミッション・ビジョン・バリューとして策定した。
ただし「額縁に飾って終わり」にしないため、定常的に、目で、耳で、口で、高い頻度で接点を作り、日常の意思決定に紐づく「生きた指針」として浸透させた。
100億企業を目指す経営者の皆さまへ
前述のとおり、100億企業を目指すことは、「高い目標を目指すことで起きるブレイクスルー」や「企業としての生き残り」という意味で非常に意義深いことだと考えます。
もちろん、乗り越えるべき経営課題は多岐にわたります。しかし、会社によっては「ここさえなんとかなれば」というポイントが確実に存在します。
ただ、自社の成長へのポイントがどこにあるか分からないという方も多いでしょう。
そういった方は、こちらから「100億企業成長チェックリスト」を活用し、自社の成長へのポイントを掴んでみてください。
アタックスグループでは、経営、財務・税務、組織、営業、DXの各分野の専門家が、ワンストップでお客様の課題に寄り添い改善の実行まで伴走しています。
まずは、こちらからお気軽にご相談ください。
筆者紹介

- アタックスグループ パートナー
株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 代表取締役社長 中小企業診断士 平井 啓介 - 会計を中心とした業務系システムを扱う大手システムベンダーを経て、アタックスに参画。システムエンジニア時代は、会計システムを中心に、中堅中小企業~上場企業まで業種を問わず、約60社の業務改革を支援。経営課題から逆算したシステム企画、徹底した業務プロセスの掌握・分析を得意とし、システム企画~導入・運用支援までの総合的なプロジェクトマネジメントを推進。アタックス参画後は、システムエンジニア時代に得たファシリテーションスキル、多業種に渡る業務知識を応用し、経営計画策定サポート、業務プロセス改革サポート(BPR)、PMIサポート(M&A後の経営統合支援)、M&Aサポートに従事。近年は、中堅中小企業流のデータサイエンス(経営可視化)によるDX支援にも注力している。特に「計画策定」「各種制度構築」後の現場に入り込んだ「実行推進支援」に強みを持つ。
