なぜ生成AIを信じすぎると「時代遅れ」のチームになっていくのか?2026年は「三現主義」がキーワード

なぜ生成AIを信じすぎると「時代遅れ」のチームになっていくのか?2026年は「三現主義」がキーワード 経営

「生成AIを使えば、新入社員はいらなくなる」

最近、こんな声を耳にすることが増えました。

議事録の作成、営業メールの下書き、提案資料の叩き台…。確かに生成AIは便利ですが、この発想には大きな落とし穴があります。

知識や経験がない人ほど、AIの出力を正しく評価できないからです。

そこで今回は、生成AIを信じすぎることの危険性と、これからのチームに必要な視点を解説します。

AI活用に力を入れているのに成果が出ないと悩むマネジャーは、ぜひ最後まで読んでいただきたいです。

なぜ知識と経験のない人ほどAIを「すごい」と感じるのか

生成AIの出力を見て「すごい」と感じる人と、「まだまだだな」と感じる人がいますが、この違いはどこから来るのでしょうか。

答えはシンプルで、そのテーマに関する知識と経験の差です。

たとえば、パワーポイントの資料作成を考えてみましょう。

私は20年以上、セミナー資料や提案資料を作り続け、どんなフォントを使うべきか、フォントの大きさや色、図形の配置や余白を入れるべき場所など、どうすればわかりやすい資料になるのかという感覚が身についています。

だから生成AIにどれほど指示を繰り返しても、最終的には自分で作った方が早いと感じます。

そのセンスを教え込ませるのには、大変な労力がかかるからです。

いっぽう、資料作成の経験が浅い人はどうでしょうか。AIが生成したスライドを見て、こう思います。

「すごい。もう人間の仕事はなくなる」

なぜそう感じるのでしょうか。

それは、評価するための基準を持っていないため、単に「なんだか凄そうだ」といった印象で評価してしまうのです。

営業メールも同じです。AIにプロモーションメールを大量生成させ、自動配信している企業があります。

きちんと営業メールを書いてきた人なら、その品質の低さはすぐにわかります。

しかし経験のない人は「なんてうまい文章だ」と感心してしまうのです。

これはフェイクニュースを信じてしまう構造とまったく同じであり、前提となる知識がないから、真偽を判断できないのです。

AIで議事録を生成させていいのか?

議事録についても触れておきたいと思います。

生成AIで議事録を作る企業が増えています。音声を認識させ、自動で文字起こしをするため、一見、効率的に見えますが、しかし、これは非常に難しい仕事なのです。

たとえば、取締役会や役員会の議事録を考えてみてください。

社外取締役とのやり取りの文脈、社長の方針、役員それぞれの価値観など、これらを理解していなければ、正しい議事録を作ることはできません。

誰が何を意図して発言したのか。今の経営方針はどこに向かっているのか。

こうした前提を理解して、初めて議事録は完成します。

単なる文字起こしで、完璧な議事録ができることはありません。

AIに任せてしまうと、実際に参加した経営者などに、その議事録を検証し、修正してもらう過程で、余計に時間がかかることがあります(AIに作成させ、そのまま提出することなどあり得ません)。

AIは「トップアップ」の技術である

ここで重要な視点を紹介します。

AIは「ボトムアップ」の技術ではない。「トップアップ」の技術である。

どういうことでしょうか。

知識や経験のある人(トップ層)を、さらにエンパワーメントする技術なのです。

知識や経験豊かなベテランがAIを使えば、生産性は飛躍的に上がり、出力の良し悪しを判断できるからです。

いっぽう、知識や経験のない人がAIを使うとどうなるでしょうか。

  1. 出力の品質を正しく評価できない
  2. 間違った情報をそのまま使ってしまう
  3. 自分で考える力が育たない

つまり、AIを使えば使うほど、成長の機会を失っていく。

これが「ボトムにいる人ほどAIに置き換えられやすい」と言われる理由です。

なぜ「三現主義」がこれから重要になるのか

では、これからの時代に何が求められるのでしょうか。

私は「三現主義」だと考えています。現場・現物・現実を大事にする姿勢です。

生成AIが普及すればするほど、パソコンの前でできる仕事は限定されていきます。

資料作成、論点整理、仮説出しなど、これらはAIが得意な領域です。

人間に求められるのは、その先の判断です。そして正しい判断をするためには、現場を見て、現物に触れ、現実を肌で感じる必要があるのです。

たとえば、工場に設置するLED照明を販売している営業がいたとしましょう。

その営業の苦労話を我々のような外部のコンサルタントが会議で聞いていても、正直なところ実感が湧きません。

「なぜそんなに大変なのか」「なぜ提案が通らないのか」は、話を聞いているだけではわからないものです。

だから私たちコンサルタントは、その営業と一緒に実際にお客様の工場へ出かけてみます。

現場に入り、どの場所に、どの種類のLED照明が必要なのかを一緒に考えてみると、その営業がなぜ苦労しているのかが少しずつわかってくるのです。

天井の高さ、作業動線、機械の配置、明るさのムラ、安全面への配慮など。

考慮すべき要素が次々と目に入り、「なるほど、これは簡単に提案できないな」と腑に落ちる瞬間があります。

一所懸命に提案しても、お客様がなかなか耳を傾けてくれない理由も、現場に立って初めて理解することができ、これは、資料やデータだけを見ていては決して得られない感覚です。

AIに頼ると「時代遅れ」になる理由とは?

ここで改めて、なぜ生成AIに頼りすぎると時代遅れになるのかを整理します。

理由は、生成AIの仕組みそのものにあります。

生成AIの中核である大規模言語モデルは、過去に学習した膨大なデータをもとに出力を生成します。

つまり、過去に多く存在した考え方に強く引っ張られる構造になっている、というわけです。

その結果、出力は無難で平均的なものになりやすく、だからこそ「中央値」のアイデアしか出てこないのです。

その結果、前提を壊すようなイノベーティブな発想、既存の枠組みを超えるアイデアは生まれづらく、これが生成AIの構造的な限界なのです。

いつの時代も、革新的なアイデアを生み出してきたのは人間です。

多様な視点を持つ人間が集まり、心理的安全性のもとで自由に意見をぶつけ合う。そのプロセスからしか、ブレイクスルーは生まれません。

「もっともらしい」答えを高速で出す生成AIに頼り続けていると、チームの思考は「中央値」に収束していくでしょう。

無難な発想しか出てこなくなり、これが「時代遅れ」になっていくメカニズムなのです。

2026年に向けて

2026年に向けて

「生成AIを導入すれば最先端だ。」

そう思い込んでいる経営者、上司は意外に多いですが、しかし実態は逆です。

AIはトップアップの技術であり、知識や経験のあるベテランの力を増幅(エンパワーメント)させる道具なのです。

いっぽうで、経験の浅い人がAIに頼りすぎると、自分で考える力が育たなくなります。

三現主義を忘れず、現場で知識と経験を積むこと。AIに使われるのではなく、AIを使いこなせる人材を育てること。

それが、時代遅れにならないチームをつくる条件なのです。

2026年も、ますますAIは進化していくでしょう。しかしそんな最先端の技術に惑わされない姿勢が、私たちには求められています。

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筆者紹介

横山信弘

株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ 代表取締役会長 横山信弘
企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。15年間で3000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラム、昨今はYouTubeチャンネル『予材管理大学』を通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。

「日経ビジネス」「東洋経済」「PRESIDENT」など、各種ビジネス誌への寄稿、多数のメディアでの取材経験がある。メルマガ「草創花伝」は3.8万人超の企業経営者、管理者が購読する。著書は『絶対達成マインドのつくり方』『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズの他、『「空気」で人を動かす』等多数。著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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